第13話 鈍感系主人公は初恋少女の顔を見ない。第一部


第13話 鈍感系主人公は初恋少女の顔を見ない。第一部


私が示したお店の階段を駆け上ったツバサは、じっと中を伺ってから外のドアを探った。そうして、何かをお店の壁に貼り付けた。すると、恨めしそうな顔をした私を見て何を勘違いしたのか、ニッコリと笑いかけてきた。


「なんの笑顔よ。」

「いや、あえて先に登って俺はパンツなんて覗く気は無いよってアピールだな。」

「あれ?知らないのかしら?」

「何がだよ。」

「女子はみんなスカートの下にはスパッツを履いているのよ。」

「え?ま、まさか。ということは?」

「あなたがこれまで見て興奮していた黒いのは、ただのスパッツよ。」


崩れ落ちようとするツバサに早く席に着くように促す。


分かった。だからアリスが家の中でスカートの中をツバサにわざと見えるように座ったりしていたり、朝はツバサが必死で階段の下で準備していたことを思い出す。それをこいつはずっとパンツなんだと勘違いしていたかと思うと少し哀れに思える。


だから、何か言ってやろうと思ったのに先に口を開いたのはツバサだった。


「ああ、そういやこれ渡しとくな。」

「何よ。これ?」


白い花柄の髪飾りが手渡される。明らかに安物っぽく無いそれを受け取って私は少し疑問に思う。


「あなたにお金は渡してないわよね?」

「ああ。」

「じゃあ、アリスにもらったの?」

「いや、違う。ハリスさんだ。」

「まあ、私はハリスさんのことよく知らないしそれはいいわ。それでこれは何なの?」

「なんか綺麗だなと思ったんだ。」

「で、それを何で私に?」


ツバサは耳をほじくって首を回す。汚い。何で男子はたまにそんなことを平気でするのかが理解できない。


「いや、きれいだったんだよな。」

「え?」


彼は同じ言葉を繰り返す。


「綺麗だったんだよ。」

「で、お前に付けたらもっと綺麗になると思ったんだ。」


私は当然の疑問を返す。


「いや、でもアリスとかでも。」

「アリスも可愛いんだけどな。俺は正直言って、お前の顔の方が好きだ。お前の方が可愛く見える。」


こいつはずるい。本当にずるい。いつもいつもこんなことばっかり言うのだ。本当に、この世界は後だしジャンケンみたいなものだと思う。どっかの漫画でもやっていたが、恋愛は惚れたほうが負けなのだ。だって、あとは惚れるしかないんだから。だから、もしこれが勝負だったら、私は負けている。でもそんなこともどうでも良いと思えるのだ。


顔が赤くなって言葉が出ない。脳が異常をきたしたみたいで体が動かない。そして、様子のおかしい私を見て、ツバサが慌て始める。馬鹿じゃないの?あんたのせいよ。


やっと動き始めた私の体は本心には従わない。


「ば、馬鹿じゃないの?き、きもいのよ!」


でもそいつは、そんなに悪くない顔に笑顔を浮かべて言うのだ。


「良かった。元気そうだな?」


こいつは馬鹿で、私も馬鹿だ。さっきも言った通り、恋愛は惚れてしまったら負けなのだ。あとはもっと惚れるしかないのだ。

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