第11話お風呂

第11話  お風呂



 ハリスの指導は既に終わって、俺は屋敷の中に帰ってきていた。ちなみにハリスは自宅がある。屋敷の中にも一室持っていたとは思うが。ともかく、俺は従業員用の通路を通って、風呂に向かっていた。


 この広い屋敷は東京にある近衛家の別邸だ。麗華のお父様は麗華に家督を譲ったとはいえ、いまだに京都にある本邸には住んでいる。だから、別邸は麗華とかアリスとかの要望に沿って作られていて、大浴場が3つもあったりとかする。東の大浴場は星が綺麗に見える露店風呂があって、西には最新設備のついた大浴場がある。そうは言っても、屋敷の中には大体100人ぐらいの人が勤めているので、大抵東や西の浴場は常に誰かが入っていて一人でゆっくり入ることができない。


 ただ、南の大浴場だけは違う。これは麗華やアリスの自室に一番近いところにあって、アリスや麗華以外の人は入れない。だから、ここは大抵の場合空いている。そのため、俺はここをよく使っていて、本を読みながら入ったりとかしていた。


 だから、その日も特に何も気にせずに、その浴場へ行った。言い訳をするわけではないが、実際に鬼ごっこをしてる最中についた泥などが服の中に入り込んでいて早急に落とす必要があったし。そうして、風呂に入ってから10分ほどして、よく知っている声が聞こえてきて気づいた。アリスと麗華が風呂に入ってくる可能性を完全に忘れていたことを。


「ねえ、アリス。私、思ったんだけど女の子って毎日あんなことしてるの?」

「タピオカですか?流石に、毎日ってことはないでしょうけど、1週間に一回くらいはしてるんじゃないんですか?」

「ふうん。」


 麗華が湯船の中に入って、アリスもそれに倣って一緒に入る。しかし、俺はなんだかよくわからない石像を背中にして、隠れているだけなのでちょっとでも見られたらバレる。そんな緊迫した状況にも関わらず、アリス達は呑気に話を続けていた。


「男子たちはどう思っているのかしら。」

「タピオカですか?まあ、でも特には気にしてないと思いますよ。麗華様の狙っている人は。」

「そ、そ、そんな奴いないから。」

「て言うか、麗華様おっぱい更におっきくなってませんか?」

「そうかも。っていうかあいつはおっぱい大きい方が好きなのかな。」


 あまりのラノベ的展開に思わず、石像に身を隠すことも忘れて麗華たちの方を見る。麗華が胸をまさぐっているのはわかるのだが、位置的にはっきりと見えずらいため、もう一歩踏み込まないと見えない。


 俺は脳みそを振り絞って考えた。今、麗華やアリスの裸を見たいという願望を優先すべきかアリスたちの好感度が下がることを避けるべきか。アリスと麗華の女の子トークが俺の思考を妨げる。そして麗華の胸をアリスが触ったらしく、麗華が男子の欲情を催させる太ももを俺の視界に入れながら、いやらしい声を上げる。


「も、もう。何をするのよ。やめてよ。アリス。」

「いえ、こんなに着痩せするもんなんだと思いまして。なんでいつも隠してるんですか。」

「だって、あいつ大きすぎて気持ち悪いとか言いそうなんだもん。」

「確かに、言いそうですね。思い出したら腹がたってきました。」

「というか、あなた本当に綺麗な身体してるわね。体重は?」

「47とか48だと思いますが。」

「お、同じ物食べてるのに、それはおかしいでしょ。」


 俺は臨界点に達していた。このままだとアリスや麗華の前に彼女らの裸を見るために飛び出してしまい、臓器を抜かれて出荷されてしまうことになる。だから、俺は出来るだけ早くこの欲情を催す場所から抜け出す必要があった。俺は湯船から出て、脱衣所まで向かう最短ルートを頭の中で描いた。もし、多少音が聞こえたとしても、どうせアリスたちは気づかないだろう。行ける。そう思って、俺は走り出した。


 小さい頃に絶対に親に教わることがある。それは銭湯の中で走るなというものだ。銭湯の中は滑りやすいから。だから、それを破った俺は盛大に滑って銭湯の壁に激突した。何事かと様子を見にきたアリスと麗華が俺の姿を見つける。


 アリスの瞳の色は怒りで青色に変わり、麗華は灰色の目をして、こちらを見ている。そうして、俺は愛想笑いをしながら二人の前を通り過ぎようとしたのを二人に捕らえられた。


「おい、ちょっとこっち来いよ。」

「話をしようぜえ。」


 完全にキャラがぶっ壊れた美少女二人はそう言った。

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