村人たち-1


「ほら、着いたよ。ここが僕たちの村なんだ」


 長い長い管を降り、ようやくたどり着いた先にそれはあった。ティアが今いる場所はとても殺風景であり、隅の方にぽつんと家のようなものが建っているだけだ。


「ここは村の中でも特に端っこだから、あんまり人も住んでないんだよ。でも、ここを降りて奥に行けばみんないるし、畑だってあるんだよ」


 クレイはさも自慢するかのようにウキウキと話す。

 そもそもなぜティアがクレイの村に入ることになってしまったのか。それは、数日前。あの大聖堂でのカメルのせいである。



 あの時、カメルがレイスフェルの所在を知っていると言った時、当然のようにクレイは飛びついた。あからさますぎて罠にも見えるとクレイを窘めたのだが、好奇心には勝てないといった面持ちだった。


「気になるんだったらティアちゃんもついて行ってあげればいいじゃん。さっき言った断る理由は取り払われてるよ?」

「……」


 そうは言えど、カメルの発言を信用するには些か信頼性が低く、『明確になった』とは言い難い。しかし、このまま放っておいてもクレイはきっと行くだろう。

 そして、そうなる事情を知ってしまった以上、最初にクレイについていくとした理由である『明らかに好奇心で死にそうな人間に出会ってるのに、それを放置して野垂れ死にされると私の気分が悪い』にもやや引っかかる。


「……はぁ」


 結局のところ、自分は相当なお人よしなのだろうなとティアは自覚させられることになった。

 そして、そうと決まるとクレイはティアの分の食料なども用意すると言い出し、ティアは断るもクレイは引かず。最終的に『ティアの分はティアが持つ』という点で落ち着いてしまった。

 結果、ティアもクレイの村に降り立つという事態にまでなってしまったというわけだ。



(……クレイは気にしていないみたいだけど、一般の人間が灰喰らいをあまりよくは思わない気はするのだけど)


 とはいえここまで来ては何か言うのも面倒な上、大概クレイに押し切られる未来が見える。なら、そこに無駄な労力を割くのはあまりにも億劫だ。

 故に、ティアは村の中心であろう場所へ向かうクレイの後を無言でついていくことにした。



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