第1蝶 異世界いもうととの出会い編

第1話寝落ちから覚めたらそこは…


基本は『ほのぼの』とお話が『スローペース』で進んでいきます。


主人公の澄香は剣も魔法も使えませんが、引きこもり時代のチート装備(衣装)の透明壁のスキルが使えます(ゲーム内アバターも)

西洋ファンタジーにSFゲームの武器を持ち込んだイメージです。

主人公の澄香は妹が大好きです。


※全体的にのんびりと進んで行きます。

※少女・幼女の成分が増えていきます。

※ちょっとだけ残酷な表現があります。


――――――――



 『いつも助けてくれて、ありがとう。澄香お姉ちゃん――――』




「待っててねっ! 清美っ! 今行くからっ!!」



 私は、敵を、撃ち抜き、切り裂き、爆殺し、撲殺、絞殺していく。


 妹の清美を囲む敵をあらゆる手段を使って消していく。

 私の攻撃で致命傷を受けた敵全てが、淡い光となって消滅していく。



「清美っ! お姉ちゃんが来たからもう安心だよっ! 出てきても大丈夫っ!」


「へっ?」


 私は【レストエリア】に隠れている清美に、そう声を掛ける。

 一応索敵するが、もう周りに敵はいない。


「ううっ~」 キョロキョロ


 そんな清美はひょこっと顔だけ出して様子を伺っている。


「あっ!!」


 そして、私を見つけて、トテテと小走りに駆け寄ってくる。


 タタタッ

 ガバッ!


「こ、怖かったよぉ~~! 澄香お姉ちゃんっ!!」

「うん。ごめんね。遅くなっちゃって」


 そう言って胸に抱き着いてくる。

 私は「よしよし」と言って、いつものように頭を撫でる。


「でも清美、いつも言ってるでしょう? レストエリアから出るときは狙われやすいんだから、まずは索敵をして、閃光手榴弾とかグレネードで――――――」


「いつも助けてくれて、ありがとう澄香お姉ちゃん!!」


 最後まで言い終わる前に、更にキュッと強く抱き着いてくる。


 そんな妹の清美に、私はまだ色々と言い足りなかったのだが、


「いいのよ、妹を守るのはお姉ちゃんの仕事でしょう? だから気にしないでいいよ」

「え―っ! だったらボクのお仕事は?」

「あ~、それはね――――」


 私はギュッと清美を抱きしめながら、



「妹は、お姉ちゃんに甘える事が仕事なのよ」



 妹の清美を無理やり誘って始めたSF世界の某VRMMOだったが、元々の性格なのか、はたまた単純に不器用なのか?

 なかなかスキルが上がらずに、清美はいつも私に助けられてしまう。


 いや、一番の理由は子供だったからだろう。

 姉の私よりも一回り以上、歳が離れているのだから。


 そんな私は、可愛い妹を守るために、このVRMMOの世界で――――



 がむしゃらに強くなって、ソロ最強プレイヤーまで登り詰めたのだから。




※※※




「ううん………………」


 懐かしい夢を見ていた。


 清美がこの世界からも、元の世界からも、

 いなくなってから、もう5年以上前の出来事だ。


 思い出すたび、夢で見るたびに、

 あの出来事は私の胸を強く締め付ける。


 けれど――――


 久し振りに見た、悲しい筈だった清美の夢は、

 何故か私の心を暖かく優しく包み込んでいた。



 ――――いつも助けてくれてありがとう。澄香お姉ちゃんっ!



 そんな清美の言っていた事に思い馳せながら、私の意識は現実に戻っていった。

 そして、いつもの様に、いつもの時間に、いつもの部屋で目を覚ます筈だった。


 筈だった。なのに…………


 なんで、こうなったの!?



「っ!?」


 私ははっと目を見開く。



「い、いやいや嘘でしょうっ!」


 なんで起きたら目の前に『顔』があるのっ!?



 そう、目を開けてみたら、目の前に顔っていうか、私の上に被さるように、決して触れない位置で人が乗っていたのだ。


 ちょうど私と重なって寝ているように――――


「し、しかも…………」


 浮いているっ!?


「こ、これって一体どういう状況っ!? た、確か私は……」


 いつものように、陽が昇り切るまでログインしてたはず。

 リアルよりも、一日の滞在時間が逆転してしまった、あのゲームに。


 大事な者と、大事な時間をたくさん過ごした。

 そして手に入れた以上に、失ったものもたくさんあった。


 悲嘆も虚無感も絶望も、相反する歓喜も愉悦も希望も

 全てを経験した、あのゲームにいたはず。



 なのに、ここって?


「………………ん」


 首を捻って周りを見てみる。

 明らかに部屋の風景ではない。


「これって、もしかして違う世界なの?」


 なんとなく肌に感じる、温度や風や風景がここは違うと感じる。

 なんの証拠も確証もない、けれど――――



「………………うん、でも」


 ただ、この世界は綺麗だなって思った。



 見たことのない木々や、鮮やかな花や蝶。

 嗅いだことのない穏やかな空気に、暖かく体を撫でる風。

 そして森の隙間から覗く真っ青な空。



 私は息を吸い込み、小さく深呼吸する。



「ふぅ………… ここきっと、違う世界なんだ……」


 誰に言うでもなく一人呟く。


 きっとそうだ。

 そうに違いない。


 それでも――――


 私はと思った。



 そんな私は、私の世界をきっと抜け出せるが欲しかったんだと思う。


 清美がいなくなって5年以上。


 ひたすらに強くなろうと、清美のいないこの部屋で、清美のいないゲームの世界で、清美を守る為に、ただただ強くなった…………。


 そこに清美はいないとわかっていても、私は、抜け出せずにいたんだ。


 でも今は…………


 ホッとしている私がここにいる。


 そう、これでいいんだ。


 、私自身で変えないといけないんだ。



「それじゃ、そろそろこの状況も変えないとね?」


 目の前の浮遊している謎の少年?少女?を見てそう呟いた。


 

 そしてこの邂逅こそが、この世界に於いての生きる糧となり意味となった。

 私が、私に戻れる、運命の出会いがこの世界にはあった。





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