彼女とBAR12p

 そんな卓の様子には御構い無しに、江子は話を続ける。

「ええ、顔が全く同じだったし、体つきもそっくりだったわ。双子としか思えないほどにそっくりの二人組の男達よ。着ている服まで、まるで同じだったのよ。それで、そうね、一人は、ナンパ男そのものって感じのタイプ。もう一人は、なんていうか、影が薄い感じ?」

「影が薄い……」

「ええ、そう。影が薄い感じの男なのよ。で、その影が薄い方はナンパな方の男の背後にずっと立ってるのよ。ずっとよ、ずっと! 彼、全然席に座らず、ずっと、一言も話さないのよ。ただ、ナンパな男の背後に立っているだけなのよ。これ、どう思う? ナンパな方は、しつこくってうざったいし、この二人が対照的過ぎて、私は、なんか気持ち悪いって思っちゃったのよ。それで、誘いを断ったんだけど、まさか、あんなマズそうな二人から、こんな素敵なプレゼントが貰えるなんて、ビックリだわ。まぁ、顔は良かったわよね、あの二人。こんなことしてもらえるなんて……一杯くらい付き合っても良かったかもしれないわ。いくらイライラしていたとはいえ、私、あの二人に対してお高い態度を取っていたかも……反省したわ」

「男の背後にずっと立ちっぱなしの、その男と双子らしい男……」

 卓は、完全に引いた様子だったが、江子は浮かれている。

「私も男を見る目が無かったわよね。びしょ濡れの女に良いチョイスの服を恩着せがましいことはせずに、プレゼントしてくれる紳士な男なんてそうそういないわよね。見る目が無いと言えば彼のことだってそうよ! 彼女の誕生日にデートをドタキャンして、連絡もよこさないなんて、最低のダメ男じゃん? 彼とデートするより、あの人達と飲んでいた方がよっぽど有意義だったかもね」

 江子は、うんうんと頷きながら、一人満足そうにワンピースを撫でる。

 欲しかった物を手に入れ、浮かれた気持ちでいて、自分の状況が完全に分かっていない姉に、卓はため息を吐きかけて言った。

「ねぇ、姉貴、生き霊って知っている?」

 予想外の言葉を掛けられた江子は、ポカンとした。

「え、あんた、いきなり何を言っているのよ? 生き霊って……」

 生き霊だなんて、突然そんなことを訊かれても答えに困るし、下らない質問だと思った江子だったが、良いから質問に答えてよ、と卓に勢いよく迫られ仕方なく、首を傾げて少し考えて、「生きている霊?」と適当に答えた。

 江子の答えに卓は、ううーん、と唸り、微妙に惜しいよ、と残念そうな顔をする。

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