獣王刑事アバレオン

ムネミツ

第1話 アバレオン、吠える!

 「チュ~チュッチュ♪ 我らゾクアックが、この幼稚園を滅ぼしてやる~!」

 平和な金曜日の昼間、門を爆破して夕暮町ゆぐれちょうにある幼稚園の庭に黒ずくめの戦闘員達を引き連れた赤い蛸の怪物が侵入した。

 「血の海へ沈め~♪」

 怪物が邪悪な笑みと共に帯電した触手を園児達がいる教室へと伸ばす!

 「させるかよ!」

 園児達へ迫る魔の手を、叫びと共に空から舞い降り蹴りで払ったのはレーサーの様な黒のレザースーツを纏った褐色の肌の青年だった。

 「チュチュ~! 貴様は礼応心破れいおう・しんはっ!」

 蛸の怪物、オクトモンスターが空から現れた心破しんはに驚く。

 「おう! お前らの敵! 子供達の味方だ、獣着じゅうちゃくっ!」

 褐色肌の青年、心破が叫ぶと瞬時に彼の全身がオレンジ色の獅子を模した鎧に包まれた!

 礼応心破が獣着する、その変身タイムはコンマ一ミリ秒である!

 「邪悪に怒り! 暴れて守る! 獣王刑事じゅおうけいじアバレオン!」

 心破がアバレオンに変身し名乗りを上げる。

 「ゾクアックの外道ども! お前ら全員、ぶっちめるっ!」

 アバレオンが拳を突き出し、処刑を宣言した。

 「戦闘員ども、かかれ~っ!」

 オクトモンスターが号令を上げ、アバレオンに手下どもをけしかける!

 「させるかよ、アバレオンハウリング!」

 ライオンの頭部を模したアバレオンの胴鎧が口を開けて吠えると戦闘員達は燃え尽きた。

 瞬間的に超強力な振動波を浴びせ、相手の細胞を振動で沸騰させて倒す技。

 それがアバレオンハウリングだ。

 戦闘員達は倒れ伏したが、怪人であるオクトビーストはこの振動波に耐えた。

 「おのれ~! 俺が直接相手だ~!」

 オクトビーストがアバレオンの腕を触手で絡め取る、だがアバレオンは動じない。

 「好都合だ、被害が少なくできる!」

 アバレオンが絡められた腕でオクトビーストを引き寄せ、空いている腕の肘をその蛸頭に打ち下ろす!

 「俺の肘打ちは装甲無視だ!」

 絡め取られた腕が解放されるとオクトビーストを担ぎ上げる!

 「アバレオントルネーーーーードッ!」

 両腕のガントレットに付いたタービンを回転させ竜巻を起こしてオクトビーストを空高く放り投げたアバレオンも空へと飛びあがる。

 「こ、このままやられてたまるか~!」

 オクトビーストが、せめて一矢報いようと触手をヘリコプターのように回転させて自分を立て直した所に上がってくるアバレオン。

 「吸盤ミサイルを喰らえ~~っ!」

 オクトビーストが触手に付いた吸盤を射出する!

 吸盤ミサイルはアバレオンに直撃し爆炎で包む。

 「や、やったかっ?」

 自分が勝利したかと思うオクトビーストだが、爆炎が晴れるとスーツを少々焦がしたアバレオンがいた。

 「そのやる気だけは敬意を表するぜ、だがこれで終わらせる!」

 太陽を背に浴びたアバレオンの胴鎧がオレンジから赤に色が変わった。

 「充電完了! アバレオンファイヤー!」

 アバレオンの叫びと共に胴鎧から太陽の如き火球が放たれる!

 「そんな虚仮脅しには負けん!」

 オクトビーストは、判断を誤った。

 アバレオンファイヤーを小技だと侮ったオクトビーストは、火球の直撃を受けて爆発四散したのであった。

 「討伐完了、事件発生後からの被害はゼロッ♪」

 地上へ戻り変身を解いたアバレオン。

 「「ありがと~♪ あばれお~ん♪」」

 園児達の声援に手を振り、笑顔を見せてから立ち去る心破。

 幼稚園を出てからよろけてガードレールに手を突く。

 「痛てて、蹴りの時に足をやっちまったか? まあ、子供達の命が守れたなら安いか? 署に戻ったら労災申請とかしねえと」

 負傷の痛みと事件解決後の書類仕事の億劫さに、心破は苦い顔をしながら再び歩き出す。

 

 

 この世に邪悪がはびこる限り戦いは終わらない、獣着せよ心破!

 守れ、戦え、獣王刑事アバレオン!


 

 

 

 

 

 

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