第6話 準備

 紗江先輩は戻ってきたから数日が経った

「おはようございます」

「おはよう。早速準備を進めようか」

「はい」

先輩が自宅で作業を進めていてくれたおかげで

後は仕上げだけだった。

「先輩、飾りつけに使うサクランボを取ってきます」

「ああ、俺が行くからいいよ。休んでいて」

「いいですか?では、お願いします」

 このプロジェクトの民芸品の仕上げにはサクランボを髪飾りに使う。

幸いこの学校には使うためにサクランボの木が植えられているので手に入れるのは容易だ。

 「よう、武」

「哲也か」

「紗江先輩は助けられたみたいだな」

「うん、お前のおかげでね。俺は何も分かっていなかった」

「そう落ち込むなよ。先輩が戻ってきたんだからいいじゃないか」

「-そうだね」

「で、お前は何をしているんだ?」

「サクランボを取りに来たんだよ」

「民芸品に使うやつか。取ってこようか」

「いいよ、大丈夫」

「そっか。じゃあな」

「じゃあ」

こうして今日は久々に平和な学校生活を過ごした。

哲也の言う通り先輩も戻ってきたしこれからまた平和な日々が続くと思っていた。

夜、あの電話があるまでは

 「ただいま」

「おかえり武。今日はなんだか元気そうね」

「うん」

先輩のことを話す必要もないから食事と風呂を済ませて自分の寝室へ行った。

ベッドに入り寝ようとしたとき一本の電話が鳴った。紗江先輩の名前が表示されている

「先輩、どうしたんですかこんな時間に」

「俺だ。紗江は預かったぞ」

無道の声だった




 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る