瀾(五)

「はい、これがプランC」

 私は止まっているエスカレーターを駆け下り、下に居た「鉄羅漢」にガトリング砲を手渡した。

「え……えっと……」

 流石に「鉄羅漢」は戸惑っている。

「私の手で『国防戦機』を撃破出来なかったら、『おっちゃん』が持ってる爆薬を使って下さい。それも失敗したら、これを使って下さい」

「お……おい……」

 まぁ、戸惑っている、と言っても強化服パワードスーツを着ているので表情は見えないので、あくまで「戸惑っている」と云う推測の根拠は声だけだが。

「何をする気だよ?」

「お前、今度は何をする気だ?」

 鬼子母神ハーリティー死神ヤマから同時に質問。

「丁度いい、借ります」

「えっ?」

 そう言って、私は「レンジャー隊」の通常型グリーンが持っていた自動小銃を奪う。

「来るぞ……佐伯が……」

 続いて、エスカレーターから降りて来た「おっちゃん」が、そう叫ぶ。

「化物に化物をブツケる気かよ……」

 死神ヤマが呆れたように言う。

「こっちの応援は?」

「東口の近くまで来てる……ギリギリで間に合うかどうかだな」

『国防戦機は……来たぞ……』

 後方支援チームから連絡。

「これしか手が無いか……。全員、一端、退避だ」

 私は止まっているエスカレーターを降りようとしている佐伯を銃撃。

 地下水を使って「氷の壁」や「水流の壁」を作る方法は……使えない。

 そんな真似をすれば、エスカレーターや階段が派手に壊れ、ヤツ自身がここまで来るのが困難になる。

 氷で道を作る事も可能だろうが……この傾斜の「氷の道」を通ろうものなら、余程の運動神経が無いと転倒しかねない。

 佐伯は身を伏せて銃弾を避ける……。

 と言っても、私の方も無理をしてきたせいで、体は重いし、目は時々霞む。

 「鎧」の制御AIが手のブレや体の震えを補正してくれてるお蔭で、何とか銃を撃てている状態だ。

 マズいな……と思ったその時……。

「兄貴……おっちゃん……何やってんの?」

 私は、弓矢と銃で佐伯を攻撃している猿神ハヌマンと「おっちゃん」にそう言った。

「お前の策が失敗した場合のプランBは……僕らだろ」

「やれやれ……そろそろ……佐伯に、こっちに来てもらう」

 私達は、攻撃を少しづつ止め……そして……駅前の通りの反対方向に走る。

 私は、「国防戦機」が来ている方向へ……。

 猿神ハヌマンと「おっちゃん」は……その反対側へ……。

 やがて佐伯も降りて来た。

「不自惜身命」

 私は、再び……「火事場の馬鹿力」を出す自己暗示のキーワードを唱える。

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