『リトルウィリー・ビッグウィリー』 ~大英帝国産 世界初の試作戦車~

 第一次世界大戦は、人類史初の世界大戦だった。

 敵をより多く殺し、味方をより多く守るため、毒ガスや潜水艦、飛行機などの現代に繋がる数多くの兵器の原型が作られている。

 しかしその何れを持ってしても、両陣営の端から端まで掘られた塹壕を突破することは難しかった。


 塹壕とは要するに人が入れる穴のことで、地面を盾として戦うことができる優れものだ。スコップさえあれば簡単に作れるが、防御性能はピカイチである。

近づけば併設された鉄条網に足止めされ、その間に重機関銃の“突撃破砕射撃”の餌食となった。


 そんな「攻めこんだら負け」な状況を打開するにはどうしたら良いか?

 白羽の矢が立ったのが戦艦だ。

 戦艦のような装甲と大砲を備え、塹壕をものともせず、まるで陸を海のように進む兵器。

 陸上戦艦構想として海軍主導の開発が始まったのが、『戦車』である。

 

 その試作工程は当時の軍艦と似通っており、鋼板をリベットで接合して作られた。

 こうして海軍式の方法で生み出した陸上戦艦ランドシップ『リトルウィリー』『ビッグウィリー』の二車輌が最終的な試作戦車となる。

 両車とも無限軌道キャタピラーが採用されており、リトルウィリーは車体下部に、ビッグウィリーは車体の左右を大きく囲うように設置されていた。

 リトルウィリーは箱に無限軌道をつけただけのデザインだったのに対し、ビッグウィリーは平行四辺形に近い形状である。ビッグウィリーはその車体左右の無限軌道中央に大砲か機銃を備え、前方に射角が存在しなかったが、戦線突破能力に優れていた。

 イギリスは最終的に、リトルウィリーより無限軌道が塹壕を突破する性能に優れていたビッグウィリーの方が優れていると判断。

 『マークⅠメイル・フェメイル』として正式採用した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る