極楽往生のためのラストクエスト、始まる……!

 任務からの帰り道、勇者さまは真っ二つにされて死んでしまいましたとさ、おしま……わない!! まさかの勇者死亡から始まる物語。この始まりだけでこれがいかに型破りな物語であるかがお分かりいただけるはず。
 ブラック労働に疲れ果て、死を受け入れようとしていた勇者エッドの蘇生を試みるパーティの一員で聖術師のメリエールは彼の想い人。しかしながら、エッドは彼女にその気持ちを伝えることができていません。うんうん、存在が近すぎると、そして大きすぎると、かえって告白はできなくなりますよね。今の関係が大切すぎて壊したくないその気持ち、わかる、わかるよエッド。それはさておきその「未練」のせいで、エッドはまさかの亡者、つまりアンデッドとなって復活してしまいます。亡者といえば地上を彷徨い歩くかつて人だった魔物。そして聖術師は亡者の魂を浄化して速やかに天界へ送る使命を帯びています。亡者と聖術師、相反する存在同士のこの恋の行方はいかに……!?となってしまうところですが、それだけではないのがこの小説の素晴らしいところです。
 亡者となったエッドの頼もしい友人であり天才闇術師のログレスを初めとした(敵味方問わず)魅力的なキャラクター達、このほのぼのが永遠に続いてほしいと思ってしまうスローライフパートと、対照的に手に汗握るバトル、過去から続く人と魔物の戦いの歴史。エッドとメリエール、それぞれの献身。これらが物語を彩り、次へ次へと読み進める原動力となっています。

 死んでなお明るく元気で前向きな勇者エッドと限りなく優しくて真面目だけど頑固なメリエールがたどり着いた結末はとは!?
 何層にも重ねられた物語が織りなす最高のエンタテイメントをぜひ、ご堪能ください。

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