『イン・ザ・トールグラス』

 今回紹介するのは、スティーブン・キングとジョー・ヒルが原作を書き、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の『イン・ザ・トールグラス』です!


 正直に言うとスティーブン・キングはちょっとしばらくいいかな……と思ってたんですけど(この前『シャイニング』もみたし)、娘と夫がみていたら続きが気になってしまい、やはりみてしまいました(笑)。


 知らなかったんですけど、監督は『CUBE』の監督だそうで。わたし、『CUBE』とか『SAW』みたいないわゆるソリッドホラーは好きじゃなくてみてないのです。「いやいや、面白いから」と思う方がいらっしゃったらぜひ勧めてください。

 ……もしかすると、ただ追い詰められていく映画って好きじゃないのかもしれない。そんなことないかな? どのホラー映画も追い詰められていきますもんね!


 というわけで本作のバックグラウンドはそんな感じになっております。

 バックグラウンドって大事なんですよ。「面白い!」と思ってみた映画があって、また別の時に「面白い!」と思った映画って不思議と監督や俳優が同じなんですよね。なので覚えておきます。次の映画を選ぶ時の指針になるから。これを読んでいる方なら大体同じだと思いますが。


 さて。

 タイトル通り、背の高い草むらの中の話。


 背の高い草むらは、わたしの年代だとケヴィン・コスナーの『フィールド・オブ・ドリームス』を彷彿とさせます。みました? わたしは劇場でみました。(いま、ケヴィン・コスナーって打とうとしたら先にケヴィン・ベーコンが出てきてすごくびっくり!!)当時、すごい話題になりましたね。エンディングがとてもキレイなので、まだだったらどうぞ。


 他にもここでも紹介した『サイン』。トウモロコシ畑にミステリーサークル。

 アメリカという国のひとつの象徴が、このトウモロコシ畑にあると思います。

 何ヘクタールもある、日本ではちょっと考えられない広さの畑。


 ですが、本作では本当にただの草。雑草のようです。ススキに似ているけどもっと葉が長くて、しなやか。風が吹くとさわさわいう感じ。

 わたしはみながら、この草を生やすのは大変だったんだろうなとスタッフに思いを寄せてしまいました。なにしろ一面、同じ草なので。


 主人公たち(一体誰が主人公なんだ?)は車でどこかへ向かう途中の草むらから「助けて!」という子供の声を聞くわけです……。

 子供の声ですから、知らないふりはできない。車を手近なところにあった古い教会の前に置いて、身重のベッキーとカルの兄妹は草むらの中に子供を探しに入っていくのですが……。


 ここでね、やめればいいのに手分けして探すんですよ……。ふたりで二股に分かれて。すぐそばに子供がいると思ったんでしょうね。


 それで子供を探すうちにすっかり道に迷い、姿は見えないけど会話で、どうやら男の子の名前はトビンであること、犬を探していること、ロスとナタリーという両親がいて、ふたりもトビンを探しているらしいことがわかるのです。(この辺、ちょっと聞いてただけなので間違ってたらごめんなさい)。


 じゃあ、とりあえずみんなを探して合流しようと。


 お互いの声を頼りに探し合うんですが、みつかったらみつかったで、今度はどうしても草むらから出られない! 

 この辺、シャイニングと同じですよね。密閉空間に閉じ込められてどうにも逃げられない。


 トビンが言うには「死んだ者だけがその場所から動かない。動けないから」。トビンが追いかけた犬は死体になっていました。

 ベッキーに「あなたの死体をみた」というトビンの母ナタリー、知らない女からの警告の電話と絶叫、そして……ベッキーの子供の親であり、子供を見捨てようとした若者トラヴィス。トラヴィスはカルとベッキーが街を出てから2ヶ月が経っていると不思議なことを……。


 泥だらけで探しに来てくれたトラヴィスに次第に心を開くベッキー。

 命懸けで来てくれたらうれしいし、子供を守ろうとしてくれるならもう一度信じてもいいかなと思いますよね。好きな男ってそういうものだと思う。そんなに簡単に忘れられない。


 とにかく草むらの中では平気で場所が飛ぶし、時間はループするし、トビンはなんだか気持ち悪いし(笑)、とは言えトビンが一番よくそこを知ってるのですが。


 うーん。どこまで書くべきか?

 ここからほんのちょっとネタバレ。


 ✄--------------✄


 実は草むらの真ん中には、黒くて大きな石があるんです。

 と言うと、映画ファンなら思い出す『2001年宇宙の旅』のモノリス。ちょうどあんな感じ。

 トビンの父親ロス(不動産業を営んでいる、口癖は『前向きに』)はトビンを追って草むらに入ったのですが、その石に触れたんです。その石に触れると……。


 ここからが本当のストーリーかもしれません。


 ✄------キリトリ------✄


 先日みた『デビル』でもそうでしたが、この映画も『贖罪』がテーマです。

 不思議ですが日本映画にはあまり出てこないテーマですね。やっぱり宗教観の違いでしょうか。

 それぞれの人物の『贖罪』をテーマに絞ってみてみると、ストーリーに深みが出ると思います。――じゃないとスティーブン・キングならではの謎の中にハマってしまう(笑)。どうしてあの人の原作映画の最後って雑に扱われるんだ!?

 告解する(神父に罪を話す)と赦されるっていいシステムだよなぁ。と思うつきなみでした。


 ちなみに娘は怖かったそうです。

 わたしはまぁ~って感じかな?

 スティーブン・キング好きな方、『CUBE』好きな方、ぜひどうぞ。

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