4、入ってますよ

 トイレに駆け込むまで、自覚症状は無かったが、後で思い返すと、背筋が凍る。



 寄生虫は、俺の毛細血管を引裂きながら脳まで辿り着き、自分の生命活動を維持出来る場所を探る為、糸のように細長い体をくねらせて、脂肪で出来た脳の表面を這いずり回っていた。



 脳を覆う髄液ずいえきと寄生虫の表皮を覆う、ヌラヌラした粘液が、溶け合い混ざっていことだろう。



 そんな状態が何日も、何週間も続いていた。

 俺は寄生虫と共に暮らし、奴らを肥やす為に飯を食い、血管へ送る栄養を絶やさずにいたのだ。


 その間、寄生虫は体から生える体毛で、むき出しの脳神経を撫でながら這いずり、時に体毛を神経に突き立てる。

 それは子供が指で芋虫を押して、虫の反応を確かめるように、無邪気なイタズラだったのかもしれない。



 そして、お気に入りのスポットを見つけると、寄生虫は細長い体を振り上げ、顔を脳の表面に打ち付ける。



 ドン、ドン、ドン。



 何度も、何度も柔らかな、脂肪の壁を打ち付ける



 ドン、ドン、ドン。



 神経に噛み付いたりもしただろう。



 何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……。



ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン――――――――――――――――――――――――――――――






               入ってますよ

                 終

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