愛憎と信頼のファンタジー軍記物語。

相容れない者を、思想を、文化を、人はどの様に認めるのか。
或いは決して認めない為の理論を、どの様に構築するのか。
人は人である以上、何かに縋り、依って生きるしか無く、更に己が寄る辺の存続を脅かす存在は『悪』と断ずる程に傲慢、もし仮に、この世界に、神にも近しい存在がいたなら、人間に対してどんな想いを抱き、どの様に振舞うのか、そして人間はその神に対し、どんな想いを抱き、どう振舞うのか。
このお話は、そんな『もしも』を綴ったファンタジー……だと思う次第です。

ファンタジー軍記物と呼ぶべきジャンルでしょうか、骨太な軍人らしい考えに基づき行動する主人公・エリザと、大いなる力の秘密を握るもう一人の主人公・ソフィの、互いに理解し合いながらも、近づく事のままならない複雑な関係が、非常に愛おしく、もどかしく、興味深いものとなっております。

軍記物らしく、戦闘描写も非常に秀逸で、人間の力を遥かに上回る亜人類『啓霊』『理甲』を戦闘に用いる様は、戦車や兵器を駆使し、敵陣営を蹂躙する古の大戦を想起させ、戦災に巻き込まれた人々、兵士たちの悲惨もリアルに伝わってきます。

想いや感情、歴史、思想、そういった要素が複雑に絡み合い、物語を形作っており、この厳しい世界にどの様な結末が齎されるのか、非常に楽しみです。
読んで損の無い、逸品です。

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