隔年の悪魔

豆腐

6月5日 5:30 推理小説部

 高校生活最後の6月、私にはある目的があった。悪魔を見つけ出すこと。その為だけに、部活をつくったのだから。


 私達が住むY県では、6月6日に隔年で殺人が行われる。2000年から2年に1人を殺害して、平然と生きている悪魔がいる。そう、今年の2020年で11回目になる。警察は10人の被害者を出しながら、犯人に辿りつくことは出来ていない。


 証拠を残さず、必ず隔年で6月6日に殺人を犯す犯人を「隔年の悪魔」と人々は名づけて、メディアで取り上げた。


 私は、ずっと興味があった。どうして殺人を行い、捕まらないのか。どうして隔年なのか、何故6月6日なのか。私が生まれる前から殺し続けている犯人に、不謹慎にも興味が湧いてしまったのだ。


 しかし、1人では何もできるわけもなく。そこで、高校1年の春に推理小説部と銘打って、推理小説が好きな人を集わせようと考えた。


 推理小説が好きな人で集まり、過去の解決済み事件を証拠から犯人を導き出す練習や、推理小説の序盤だけで犯人を当てる練習をして、独力で悪魔を捕まえてやろうと考えたのだが……集まるわけもなく。


 結局、幼馴染の昴と渉に頼んで入部してもらって、半ば強制的に手伝わせた。けれど、それも明日で終わり。


 明日か……私が殺されるかもしれないな。Y県にいる以上は、その可能性がないとはいえない。公園のブランコで揺られながら、薄明を迎えるのを待っていた。


「弥生……まだ5時半だぞ。何してるんだ?」

 背中から声をかけられ、振り向くと昴が立っていた。昴は、学校名の入った中学のサッカー部のジャージをきて、寝惚け眼を擦っている。フラフラとした足取りで、隣のブランコへ座る。


「昴か。なんだか明日が例の日だと思うと、眠れなくって……」

「そうだな……明日か。3人で集まって作戦会議して、6月6日を迎えるのも最後か」


 卒業すれば、3人で集まることは少なくなるに違いない。昴は寂しそうにそう言って、大きくブランコをこぎ始める。私達が3歳から遊んでいた公園で、ブランコの軋む音だけが、静かに響いていた。

 

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