第3話 隣に咲く花のように

眩しい光を受け、眠りから覚める。

 代わり映えしない景色を見て、退屈と安心を感じるばかりだった。

 どれだけ寝ていたのだろうか。そんなことをふと思ったが、時間なんて考えるだけ無駄だろう。

 やはり、女は眠り続けていた。どれだけ眠るのかとあきれるが、俺が話しかけると起きてくれることが唯一の救いだった。

 目の端に色鮮やかなものが見えた。見慣れない強烈な色に、目の奥が痛みを覚えた。

 それは、一輪の花だった。赤色の花びらを持つ花は俺のことなど気にしないように日の方を向いている。

 寝ている間に咲いたのか、随分と美しい姿に見惚れるばかりだった。胸の奥で何かが音と共に動いた。女にも伝えたいと話しかける。

「おい、見ろよ! 花が咲いているぞ」

 瞼がゆっくりと持ち上がった。その目は一瞬、涙で潤うとすぐに目を閉じてしまった。

「綺麗ね……」

 女はそう言うと、また眠ってしまった。花に近づき横たわる。日が沈み、また昇る。何度も繰り返す間、見続けていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る