8月

2019年8月4日 「世界から失われた光」


視界を埋め尽くす雪の中、氷上を行く。分厚い防寒着の隙間に冷気がするりと滑り込む。氷河期だかなんだか知らないが、もううんざりだ。教科書で見た「太陽」を求め空を見上げたが、そこには暑い雲があるだけだった。




2019年8月11日 「青空、白球、僕らの夏」


そこに快音だけが残った。魂を込めた一球はあっさりと打ち返された。金属バットが光を弾く。放物線を描く白球の、永遠のような一瞬に祈る。もう少しだけ続けさせてくれないか。大歓声がひとつの夏の終わりを告げた。




2019年8月18日 「花火のような」


スローモーションの世界で夜空に輝く花火を思い出していた。紺色の背景に光がパッと散り、遅れて音がやってくる。ほぼ同時に腹部に焼けるような痛み。撃たれた俺は崩れ落ちながら、そう、花火のようだと思ったのだ。




2019年8月26日 「盆、母参る」


盆のやけに暑い日のこと。昼過ぎに母が帰ってきた。「どこ行ってたの?」母はにっこり笑い「お礼参り」その返答に思わず噴きだした。墓と礼を間違えないでと言いかけて気付く。汗を拭う母の顔に返り血があることに。

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