SSSの前準備

「私は最強テイマーにしてくれって言ったんです。動物好きでしたし」

 地面に次々と術式を記入していく。

「それで一年間過ごしたとき、魔術革命時代がきて、テイマーの需要はなくなり、私はすぐに身を引きました。その後、この世界では聞いたことがないサマナーに転職しようとしたら、ちょっとした手違いにより、こんな姿になったんです」

「サモナーだからケモナーってこと? でもケモナーの定義が違うよね」

 ケモナーとは程度の違いはあるものの、獣人間が好きな方々の総称だ。俺はケモナーではなく、獣耳娘である。

「そこも手違いだったのでしょう」

 さすがに三五歳のおっさんから、美少女ロリッコ狐耳娘にされたことは黙っておく。一般的に引く内容だし。

「その結果——」

 俺は地面に一直線の術式を書き込んだ。

「——こうなったんですよ」

 術式の発動言語に手を添えて、「ロック解除、1から一二六工程まで順次解放」と呟く。呪文は自分自身がこれから起こる事を理解して始められる言葉なら何でもいい。

 不思議な事だが魔術が発展していない世界のくせに、《異世界転移者》は魔術に対して馴染みが早い。これも異世界転生者としてのおまけ何だろうか?

 すると一直線に魔術で描かれた術式は薄緑色の光を放ち、次に目にしたのは体長二メートルほどのカエルの大群だった。

「うげ、気持ち悪い」

 相沢さんは鳥肌を立てながらも、じっくりとそのカエルの背中を見つめている。

「さあ、カエルさんたちお仕事ですよ、立派なポイズントードになってくださいね!」

 するとカエルたちは一斉に毒沼に飛び込んだ。

 一匹は長い舌を伸ばし地面の草木を全て食い尽くし、一匹は大きい口で毒を飲み干しながら前進する。

「な、なにこれ、もう地獄絵図なんだけど」

「私のジョブはこんな体にされるほどの失敗転職だったせいか、《テイマー(当時の能力)》+《サモナー(初歩的)》なんです。別世界の人や物を召喚したりはできませんが、私が知っているこの世界の場所からなら、ある程度のものは呼び出せます」

 つまり俺は前もって見つけておいたポイズントード見習いをテイマーとして調教し、毒の沼に放つことでポイズントードへと進化させようとしている。

 彼らは悪喰いだ。水の中全てを飲み干すのも時間の問題だろう。

「うわあ、共食いしてるよ……」

「食い意地悪いやつら見つけておきましたからね、さて次に向かいましょう」

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