24・行方

◇ ◇ ◇



突然だが、オレは凪の父親だ。


「くそぅ!これだからオレはなぁ、凍狂に送り出すこと自体反対しとったんだ!」


オレはリビングの机をドンと叩く。それに対して、反対側に座っている妻が軽く反論した。


『そんなの結果論よ。東京はそんな怖いところでもないでしょう』

「いやいや、凍狂は怖いところだ。若者はみんなタピタピ言ってるらしいし、みーんな携帯見て俯いて歩いておるし、人の数も多すぎて潰されそうになるんだ」


それに!とオレは付け足して言う。


「先日だって、消えたじゃねえか、凍狂の一部。ミステリーサークルだっけか?あんなの日常茶飯事なんじゃねえか?石田さん家も消えたらしい」

『あれは珍しいことよ』


しばらく沈黙が続いた後、妻が口を開く。


『だからって、本当にそんなジャラジャラした装備買いまくって、本当に何か進展するの?』

「そうだ」


全身金ピカの豪華な防具に強力な武器を装備したオレはきっぱりと答えた。


『金ピカになるために、貴方、車まで売り払っちゃって…』

「あいつがああなった事は、この怪しいゲームが関係してるに決まっとる。オレは、真実を突き止めるんだ」


あいつを助けるためなら、ジューカキン者とやらにもなってやる。さらにhighレベルだと、ハイカキンシャとやらになるらしいが。


「それに、お金なんて命あってこそだろう!」

『だからって、熱くなって闇雲に、無駄遣いしていい理由にはならないけれど…、気持ちはわかるわ。私もこれが関係してると思うもの』


妻はテーブルに置いていたコーヒーを一口飲むと、再び尋ねる。


『それで、貴方、そんなジューカキン者とやらになって、どうするの?』

「…このゲームで頑張ると、かみのじひ?ってやつが貰えるらしい。それを使えば、何でも叶うらしい。金ピカソードで、怪物を倒して貰うんだ」

『あらやだ、そんな胡散臭いの。貴方そんなんだと詐欺に遭うわよ。少し冷静になるべきだわ。そんなのありえないじゃない』

「…確かに、そうなんだ。だが手掛かりには、なると思うんだ」


ピロリーン


妻の携帯が突然鳴った。メールの着信音だ。


『フフッ』


画面を見た妻は、不意に笑った。


「一体なんだ?こんなときに」


妻が、携帯の画面の…一通のメールをオレに見せる。


「ハハッ!何だ、これは!凍狂という名の地獄に行った時点で、あいつはとっくに勇者だってのに」

『貴方、東京に対する偏見はそろそろやめたらどう?東京は普通の町よ』


今あいつが、元気な訳がない。普通ならこんなこと信じられないだろう。


だが、添付されたこの画像にふざけた文章。間違いない、何処かにいる。それは、比較的救いのある答えだった。

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