22.緊急クエスト

{不適切な魔力を感知}


全てのプレイヤーへ通知と共に、ボードに[緊急クエスト]の文字が現れる。


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[緊急クエスト発生]

[始まりの町に出現した魔族の討伐]

目的 : 炎の魔族の討伐

形式 : レイドバトル

報酬 : 個々の貢献度により配布

場所 : [位置情報]←タップで確認

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「ん?何か、通知が来たな。…緊急クエスト?うーん、今は盾が楽しみだから、これは今度でいいや」

『ウガウガ (そうだな)』


ネットで軽く調べてみたところ、あの水晶で作った盾は、魔力を流している間は一時的に薄っすらと水色に光り更に硬質化する機能があるという。魔力消費量もあまり多くないようだし、早く使ってみたいものだ。


ドゴォォン ドゴォォン


うむ、とても良い響きだ。あの鍛冶屋さん、かなり張り切ってくれているらしい。



◇ ◇ ◇



『あぁ?まだ生きてんのか?』


あれから更に数発のヘルフレイムを撃ったヴァロルドだったが、未だにドワーフ爺は耐え切っていた。


『チッ。加護は侮れねえな』


しかしドワーフ爺は既に限界だった。


『次で倒す』

『いいや、そうはならぬよ。倒されるのは、貴様の方じゃ』

『ア?何だと?』

『貴様は、時間をかけすぎた…。倒すのは、わしではないがな』


すぐに、工房の外からは何人かの冒険者たちの声が聞こえてきた。


『位置情報はこの辺だ!』

『そこの焼け焦げた建物の中じゃないか!?』

『急げ!倒して報酬貰うぞ!』


『それで?雑魚がどうやって俺を倒すってんだ?雑魚はいくら集まっても雑魚だ』


壁が崩れ落ちた場所から、4人の冒険者たちが入ってくる。おそらく元々近くにいた冒険者たちだろう。


『あ!あいつが魔族じゃないか?』

『どう見てもあれだな!よし、総攻撃!』

『〈ウォーターシールド〉〈ウォーターフィールド〉』

『〈光の矢〉』

『〈持続回復エリア〉!』


3人の後衛支援の元、騎士の冒険者が剣を持って魔族の元へ突撃しようと走っていく。


『ヘルフレイム』


ヴァロルドが一言、冒険者たちに左手から炎を放つと、騎士を穿ち背後の3人まで、その一瞬で彼ら全員を包み込んだ。


『何だこの威力はぁ!』

『水の盾が一瞬で蒸発!?』

『うわぁぁぁ熱い!』


ヴァロルドがヘルフレイムを放ったその瞬間、背後から魔法〈ホッパー〉で飛び跳ねて瞬時に近づいたドワーフ爺が、首を狙って奇襲をかける。


((ヘルフレイムレベルの魔法を同時発動はできまい!冒険者たちに魔法を放ったこの隙で仕留める!!))


『ハッ!ヘルフレイム』


ヴァロルドは振り返ることすらなく、背後に迫っていたドワーフ爺に右手からもヘルフレイムを同時に放つ。


『なっ!!』


ドワーフ爺は諸に炎を受け、そのまま地面に落下して倒れた。


『言ったろう!俺の魔力量は例外だと!常識に当てはめてたら、火傷するぜ?』


意識があればきっとドワーフ爺はこう言ったことだろう。『わしもう全身火傷して真っ黒なんだけど』と。



ヴァロルドは浮遊にて工房から出ると、30メートルくらいまで上昇して辺りを見渡した。


『どんどん雑魚が集まってきてるな。だが、まるで人がゴミのようだ』


ヴァロルドは、その場で建物ほどの大きさの巨大な魔法陣を形成していく・・・。


即時発動のヘルフレイムでさえあの威力の魔族が作り出す大型魔法陣。これが発動すれば、とにかく大変なことになるだろう。



一方、冒険者たちも続々とこの場へ集まってきていた。


誰もかれもがレイドバトルの魔族を仕留めようと、または貢献度を稼いで豪華な報酬を得ようと、ヴァロルドに向けて四方八方から矢や魔法などの遠距離攻撃を繰り出していた。


ヴァロルドはそれらを片手で、いとも容易く弾いていく。プレイヤーたちは手数では圧倒的に上回ってはいるが、圧倒的火力の防御を突破してダメージを与えられるような威力の攻撃がなく、決定打に欠けている。


『にしてもこいつら、燃やしてもすぐに回復してきやがるな。ヘルフレイム!』


周囲の建物諸共また数人の冒険者たちが燃やされていった。しかし、やはり全員は倒れていない。何人かは無傷で攻撃を続けてきた。


それはプレイヤーの特権、彼らはログインボーナスや道具屋で回復ポーションを得ている。とても高価ではあるが、即死さえしなければ、貴重な戦闘では出し惜しみせず使ってくるだろう。


さらに時間が経過するほど、ログイン中の冒険者たちは次々と集まることができた。


『あいつが魔族か!』

『狙え!撃て!討伐しろ!』

『回復ジョブは瀕死の奴を優先して回復させるんだ!』


彼らの連携も馬鹿にならない。冒険者の中でも指示の上手い奴が、テキパキと指示を出していく。


『チッ、人数も増えて来やがる。たがそれも、この大型魔法陣が完成するまでだが…』


ヴァロルドは体に纏わせた炎を操り、次々に飛んでくる攻撃を燃やしつくしていく。



◇ーーーーー◇



「あー、この部屋暑いな!クーラーねえのかクーラーはよぉー」

『ウガ (この程度も耐えられないのか?このぽんぽこりんが)』


ゲームの中の町くらい、設定で温度を適温にしておいてほしいものだ。わざわざ暑くするなんて、運営は何を考えている。道具屋で涼しくなるアイテムでも買っておけば良かった。


「ていうか、俺の新しい盾は、まだかよぉー」

『ウガ (せっかちな奴だ。共にゆるりと待とうではないか)』


俺とビータイガーは、椅子に座って盾の完成をゆるりと待った。

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