14.Bランク魔物

「ところで、さっき一瞬で銃を出したのはどうやったんだ?」

『ああ、アイテムボックスか。大体レベル10くらいで、解放されるスキルである』


チビスケによると、アイテムボックスは沢山の物を収集可能で、容量はレベルや熟練度に左右され、アイテムの出し入れ速度は一般的な武器なら初めは大体5秒程、後は大きさに比例するという。


ミノタウルスの死体とかだと、チビスケでも10秒くらいかかるだとか。


初めは使えないので、初心者は道具屋でアイテムボックスの劣化版であるアイテムポーチを使うらしい。そういえば佐藤たちつけてたな。


直後、洞窟の奥の方から、ガァァァァ!という咆哮と、プレイヤーの悲鳴が聞こえてきた。


『凪、急ぐである』


俺たちは、悲鳴のした方へと急ぐ。狭い洞窟の通路から、少し開けた広めの空間が見えてきた。その空間に進もうとした俺を、チビスケが制止する。


『出るな。まずは観察だ』


チビスケの言う通り通路の岩陰から奥の空間を覗くと、奥には何人かの横たわっている冒険者たちがいた。


「…やられているのか?助けなくていいのか?」

『手遅れである。もうじき死亡する』


チビスケがらそう言うや否や、倒れていた冒険者たちは微かな白い光のエフェクトに包まれて、すぐに天井へと消えていった。何気に死亡エフェクトは初めて見た。


「可哀想に。あれであの人たちは、一週間もワールドゲームがプレイできないのか。感慨深いなぁ」

『自分の心配するのだ。さっきの遺体の引っかき傷から見るに、Bランク魔物であればおそらくは、ビータイガー…』

「ビータイガーだと?もしかして、蜂とタイガーのキメラみたいなモンスターだったりするのか?」


俺の素朴な疑問に、チビスケは前方を警戒しながら答える。


『違う。白い体に鋭い爪と牙を持っているだけの、ごく普通のマジックシールド!』


いきなりチビスケがそう叫んだかと思うと、俺は半身に衝撃を受けて洞窟の壁に吹き飛ばされていた。


全身が痛い中、ふと前を見ると、目の前10センチくらい先のところに、なんか牙を生やした大きな白い顔が、こちらを睨んで見ていた。


「あのぉ、ど、どちら様でしょうか」

『ウ、ガァァァァァァァ!』


そいつはそう叫び、直後、瞬時にバックステップで俺たちから10メートルくらい先へと下がった。


『いやぁ、本当に凪は頑丈であるな。ビータイガーの爪の一撃を受けても、元気そうだとは』

「どうせなら俺も守ってくれよ…」

『断る。凪の職業の盾術とやらの性能を、この目で見たかったのだ』


先ほど即座に半歩下がりマジックシールドを展開し、攻撃を逃れていたチビスケがそう答えた。


とりあえず怖いので、俺はその場でうずくまる。


『…チキンなのか!?何をうずくまっているであるか!敵を見るである!』

「いやいや、やっぱ怖いって」

『この程度で怖くてうずくまるなら、失望なのである!やはり貴様は、Eランク冒険者にふさわしいただの雑魚なのか!?』


俺はその場で座ったままニヤリと目を瞑り、そのまま両手でやれやれとジェスチャーをする。


「俺が雑魚に見えるのか?能ある鷹は爪を隠すって言うじゃねえか。もしもお前の目に俺が雑魚として映っているのなら、それこそ俺の思う壺ってことなんだ」


などと目を瞑ったまま喋っていると、チビスケがいきなり俺の頭にふかふかで大きな手をのせてきた。


「ん?何だチビスケ」


俺は目を開けて前を見る。


『ガァァァァァァァァァ!』

「・・・あ、こんばんは虎さんゴハッ!」


全然チビスケじゃなかった。ビータイガーはそのまま力強くその手を振り下ろし、俺を地面に叩きつけた。


『魔法弾!』


チビスケの周囲に5発の魔法の球が現れ浮遊する。その内の3つがビータイガーを狙って直線的に飛んでいくと、そいつは再び奥に離れていき回避した。


「・・・どうも」


地面にちょっとめり込んだまま、俺はチビスケにお礼する。


『全く、凪は怖がりなのか肝が座っているのかわからないである』

「とりあえず出してくんね」


チビスケが残りの2つの魔法弾を操作して、地面を爆発させ俺を助ける。


『…にしても、本当に頑丈であるな。その辺の冒険者なら、とっくに全身吹き飛んでいるところだ』

「いいや、ビータイガーの攻撃と、チビスケの魔法弾は、中々に効いたよ」


俺はステータスボードの残りHPを見せる。残り、約3割だ。


「ちなみに魔法弾で1割減った」

『もはや無敵なのかなーと思ってな。次から気をつける』

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