October 5.2021

ロイター通信

 E型急性錯乱を、新たな公害病とする見方が浮上してきている。


 イースト市民の証言や人工衛星の情報などによると、同錯乱はイーストシティの至るところから同時多発的に発生し、精神疾患とも感染症とも呼びがたい異様な広がり方をしているという。しかし市外では、かつてイーストシティを訪れた人物が僅かに症状を示しているのみで、それら患者の渡航歴と照らし合わせたところ気掛かりな一致が見られたとしている。

 それは市の観光名所である電波塔、シャマインタワーの展望台建造前にイーストシティを訪れた人には錯乱の兆候がないというものだ。タワーは新型携帯端末ibotの使用を助ける目的で建設が開始され昨年第一展望台までが完成、市内のみを対象とした利用は可能となっており、試験的な運用がなされていた。


 マサチューセッツ工科大学MITの研究チームはこのことから偶然の一致かもしれないとした上で、電波塔と急性錯乱に関連があるのではないかと調べていた。結果、最新の電磁波測定器がおかしな信号をキャッチしたとしている。非公式ながらロシア科学アカデミーの研究所も同様の電磁波を捉えたとの情報もあり、NSAは調査に乗り出しているという。

 この成果を受けてMITの研究チームが唱えたのが、同錯乱を新種の公害病と捉える仮説だ。これまでの公害病は、工業施設などによる環境汚染が自然界にはなかった病を生み出し人体に害を及ぼすものを指していたが、通信技術が発達した現代では精神に作用する病が生まれたのではないかというのだ。


 まもなく精神医学界などからは疑問の声も出され、今後この議論はますます波紋を呼びそうなものとなっている。

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