ミリタリーショップ


東京の路地には、やはり動く人影が散見された。

さすがは地方とは人口密度が違うな。普通にどこにでもゾンビがいる。


東京も地方のように5%程度がゾンビ化してるとして、元の人口密度から計算すれば都心で1,000人/1㎢、平均で300人/㎢は存在することとなる。

いま僕が進んでいる場所は平均よりちょっと人口密度が高い地域なのだが、ちょっと盛って見積もっても100メートル四方4人程度となる。しかしながら、現実はそれよりちょっと数が多い様な気がする。

屋内にもいるだろうことを考えれば、想定以上だ。

やはり、都会になればなるほどゾンビの相対数が多いという噂は本当なのかもしれない。


……これは、見つかったら面倒臭いことになるな。

ゾンビは一体が人間やその他生きた動物を見つけると、どうやって認識しているのかは不明だが、近くにいるゾンビどもも呼び寄せる特徴があるのだ。下手したら囲まれてしまうかもしれない。

僕は、慎重に壁沿いを進む。


ただ、前述した様に通常状態のゾンビの視力、聴力等は普通の人間と変わらない。夜型になったせいか多少は夜目がきくようだが誤差と考えてもいいだろう。油断せずに慎重に行けばなんとかなるはずだ。

面白いことに、見つかったとしてもゾンビのマネをしていれば助かるという噂もある。ただこれについては個人的には信用していない。熊と出会ったら死んだふりしろ的な信ぴょう性のない類であろう。



500mほど進んだところで、再び以前は気付かなかった店舗を発見した。

ミリタリーショップだ。


これはラッキーかもしれない。

自家製急造品ではなくまともなクロスボウの矢があるかもしれないし、他にも役に立つものがあるかもしれない。

ただ、ここで時間をかけるわけにはいかない。冬の夜は長いとは言え、あと5時間程で夜が明けてしまうからだ。それまでに我が家に到達、そして安全確保をしなければならない。現状でも意外とギリギリの時間と思えるからだ。


少し迷った末、15~30分程度ならよる価値はあるだろうと判断した。

そう判断した理由のひとつとして、入口のシャッターが下りていなかったことが大きい。この静寂の中、ガラガラとシャッターを開ける音はさぞ響くであろうし。

せっかく何か良い物資を手に入れたとしても外に出てみればゾンビの大群に囲まれてました、では何をやっているかわからないからな。


僕は店舗の入り口に近づく。

最悪はガラス窓をガムテープを貼ってから割って侵入しようと考えていたのだが、入口のドアノブを回してみたところ、アッサリと回りきった。カギはかかっていなかったのだ。

僕は心の中で「ラッキー」と呟やき、身をかがめてゆっくりとドアを開いた。

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