第4話


放課後の出来事から二週間がたとうとしていた。


その間、毎日例の先輩が声をかけてきた。


最初は登下校の時だけだったが、一週間を過ぎたころから昼休みの時まで来るようになった。


そして、今日はそんな中の、金曜日の昼休みである。


「裕也、今日も麗華先輩とか?」

「夏樹、お前まで僕を見捨てるのか?」

「いや、普通に考えたら裕也が俺を見捨てているんだけどな」






あの先輩が僕の教室を最初に訪れた時、急に喋ったこともない女子から、僕のことを呼んでいると声をかけられたので、廊下に出てみると


「あ、裕也君。一緒にご飯食べよう!」


たくさんの観衆がいる中僕にそんな事をいってきた。


この人ほんとにモテるんだな。


特に男子からの視線が痛かった。女子からは興味の視線が向けられた。


「ごめんなさい」

「誰かと食べる約束してるの?」

「はい」


特にしていないが。


「私も裕也君の友達と会ってみたいです」


うわ、めんどくさ。っていうかなるほどそういうことか。


やっとわかった。俺を観衆の見世物にするという作戦か。


僕は無言で去ろうとするが、


「待ってくださいー!」

「待ちません」


その日はこれで終わったが、次の日からの先輩の行動がエスカレートしていった。


俺と夏樹が食べているとそこに先輩が来て


「一緒に食べよう!」


マジかよ........。


それから、何とか先輩と会わないようにしているがことごとく先輩は現れる。




そうして現在に至るわけだが、どうしようか。


今日も逃げるか?


いや、逃げても意味ないしもう教室で食べよう。


「夏樹、今日は一緒に食べよう」

「うん?ああいいけど。先輩から逃げなくてもいいのか?」

「意味がないのが分かったからな」

「ふーん。分かった」


机をくっつけ弁当を広げる。


少し廊下がうるさくなってきた。


すると


「一緒に食べよう!」


やはり先輩が来た。


「分かりました」

「う、うん」

「でも、夏樹も一緒で」

「あ、うん。全然大丈夫だよ」


そして食べ始めようとするが、


「先輩、前から言っているんですがくっつきすぎです。先輩は他を寄せ付けない雰囲気を持っていると聞きました。先輩のイメージが崩れますよ」


そうして机を右に移動させる


「大丈夫だよ。私は裕也君にしかしないし、他の人と話す理由がないし」


そうして先輩も右に移動させる。


「おい、裕也。俺この場に必要か?」

「とても必要だ」


お前がいなかったら、精神が崩壊する。


前も危なかった。喋っているだけで裏を読もうとしてしまう。


深く考えすぎて分からなくなってくる


だが、お前がいるだけで少し安心するのだ。


そうして、攻防を繰り広げながら昼休みは終わり、授業をして放課後になった。


僕は挨拶をしたら速攻で帰る。


二回だけだが先輩より早く学校をでて会うことがなかったことがあったからだ。


だが


「裕也君、早いね」


先に先輩が来ていた。


「さようなら」

「ま、待って。明日からゴールデンウィークだよね」


あ、そうだったのか。先輩のことで頭がいっぱいで頭からなかった。


「明日一緒に出掛けよう?駅に一時に待ってるから.....待ってるから」




........明日何しようかな。


無意識に足が速くなる。心のもやもやを払うように。







「待っているからね」



僕は走って家に帰った。









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