第9話 祝?ダンジョン解放!

ダンジョンマスター60日目


いよいよこの日が来た。今日からはダンジョンが解放され、外からの侵入が可能になる。これからはダンジョンの拡張やモンスター召喚などの内政だけじゃなく、ダンジョンに侵入してくる冒険者とも戦わなくてはならない。今のダンジョンの戦力はこんな感じだ。


アン

クイーンターマイト×1

ソルジャーターマイト×76

ワーカーターマイト×85

フライターマイト×48

ターマイト×114


今のダンジョンの中核戦力は約70匹居るソルジャーターマイト達だ。一部の個体はランクD-に達している。数人程度の初心者パーティーなら倒せるはずだ。中級者クラスが来ても総攻撃を加えれば何とか倒せると俺は踏んでいる。ただ、それ以上の冒険者に来られると厳しい。今は強い奴が来ないことを祈るしかないな。


「さて、リン。今日からダンジョンが解放されるわけだが開放に伴って新しい機能が2つ解放された。今から設定して行こう。」


「ああ、1つ目は何だ?」


「まずはサブマスター機能だ。これを設定することによってダンジョンアプリの機能を限定的に行使可能になる。対象は従者と人の言葉を話せるモンスターだ。」


なるほど、選んだ人間やモンスターを副官に任命できるって事か。確かにダンジョンが大きくなると1人で運営するのは難しいからな。作業を分担できるのは助かる。サブマスターに任命するのはとりあえずアンと…クイーンターマイトはアンが居ないと会話ができないから今は保留だな。


ひとまず俺はアンをサブマスターに任命した。使える機能は戦闘機能とダンジョン構築機能だ。他の機能はDPを使うからな。アンが無駄遣いをするとは思えないが一応念のため使用できる機能は最低限のものにした。


「とりあえずアンをサブマスターに任命する。俺の補佐は頼んだぞ。」


「ああ、期待してくれたまえ。」


「それで、次の機能は何だ?」


「ネーム機能だ。モンスターに名前を付けられる。付けられるモンスターは一定以上の知能を持つモンスターに限られるがな。今だとクイーンターマイトが対象になる。」


「ネームをつけると何か効果があるのか?」


「まずランクが少し上がって戦闘能力が向上する。それと会話可能な条件が緩和されるな。」


戦闘力の向上は保険程度と考えて、会話ができる条件が緩和されるのは大きいな。この前ショップを眺めていたら翻訳の石って言うモンスターと会話できるアイテムを見つけたからな。

調べたけどクイーンターマイトと直接会話できる様になるにはBランクの石が必要らしい。でもその石15万DPもして今の俺じゃとても手に入るようなアイテムじゃない。もしも1ランク下のアイテムで会話ができるようになればDPの大きな節約になるな。


「ちなみに翻訳の石で会話をするとしてネームが付けば何ランクで会話が可能になる?」


「Cランクでも会話が可能になるはずだ。」


それは嬉しい。Cランクの石なら3万DPで入手できる。3万なら何とか工面できる額だ。直接会話が可能になるのは大きい。他の人を介すとどうしても微妙にニュアンスが変わってくるからな。


さて、何て名前を付けようか…クイーンだからな。変な名前は付けられない。まあもとより変な名前を付ける気はないんだけど。うーん…何か女王にふさわしい名前はないかな…


俺は何かいい名前は無いか、しばらく考えた。そして数分して思いついたのは女王といえば高貴な存在で優雅に暮らしているという事だ。俺は元居た世界の言葉で高貴と優雅を何と読むかを考えた。確か高貴は英語でノーブル、優雅はグレイスだ。よし、このクイーンターマイトの名前はノーブル・グレイスだ。


「このクイーンターマイトの名前はノーブル・グレイスにしようと思う。意味は俺の世界の言葉で高貴で優雅だ。」


「なるほど。いい名だと思う。一応彼女にも確認しよう。」


アンは彼女に確認を取った。すると彼女もとても良い名を授かったと喜んでいるそうだ。じゃあ名前はこれで決定だな。呼ぶときは…グレイスでいいだろう。


「名前が変更された筈だ。彼女の詳細を確認してみろ。」


どれどれ?グレイスの詳細は…?


ノーブル・グレイス(クイーンターマイト) Lv23 ランクD 

保有スキル 集団指揮(同種)+4

適応スキル 虫モンスター強化Lv2

      害虫強化    Lv1


名前もちゃんと変わっているなそれにランクが少し上がったな。ちなみ最初呼んだ時からレベルが上がった為スキルを習得させている。集団指揮(同種)は同じ種族、つまりターマイトの集団に効率的に指示を出せるようになるスキルだ。+4では400体、つまり現状ではこのダンジョンの全戦力を指揮できるわけだ。


「さて、これでダンジョン解放の準備が整ったな。たった今ダンジョンが解放された。」


特に変化はなかったがダンジョンが解放されたみたいだ。これからは入り口がこの世界の住人にも見えるようになる。そして上層には冒険者などが入ってくる可能性がある為、俺たちはこれからは迂闊に上に行くことはできない。当面は地底で引きこもり生活だ。


「よし、早速だがフライターマイトを偵察に出す。ダンジョンの上空から常時侵入者用を見張れる体制を作る。」


俺はフライターマイト達を偵察に出した。これからは数時間交代で24時間体制で監視を行う。もしも侵入者がダンジョンに近づけばグレイスを介して俺たちに伝わる。

これはアンを介してグレイスに聞いたことだがグレイスには他のターマイト達が何を言っているのかが、何となくだが分かるらしい。おまけにテレパシーのようなもので会話をしているので離れていたり姿が見えなくとも会話が可能とのことだ。なので彼女に通訳を頼むことにしたのだ。


「全員無事に飛び立ったようだな。視界も良好のようだ。」


「ああ、これで少なくとも昼の間はダンジョンに近づく相手を事前に察知できるはずだ。」


夜間は冒険者が灯している明かりを探すぐらいしか相手を見つける方法がないから明かりを灯さずに来られると相当近づいてこないと見つけられない弱点があるが…赤外線とかを見れるモンスターとか居ないかな?


次はダンジョン内の戦力配置だ。まずはダンジョンの入り口付近に歩哨としてターマイトを数体配置。第1階層には哨戒要員のターマイトを配置。そして敵を倒すためのソルジャーターマイトを20体配置。

第2階層にはソルジャーターマイトを40匹配置し、その半数は第3階層へと続く大部屋に集中的に配置している。基本的にはこの大部屋で決着をつけるつもりだ。

万が一ここを突破された場合は第3階層で迎撃することになるが第3階層の兵力は余った予備兵力だ。ここに攻め込まれた場合は死を覚悟する必要がある。


そして、まだ兵力が少ないためターマイト達には持ち場の近くに作られた部屋で休息をとってもらう。侵入者が入ってきた場合は休息をとっている個体も防衛に参加してもらうというブラック企業も真っ青な待遇だ。流石にこれはまずいから早急に改善しないとな。


本格的にダンジョンマスターらしくなってきた。最初に来る敵はどんな奴か…まあどんな相手でも全力を尽くすまでだ。

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