第7話 リフォームをしよう。

ダンジョンマスター56日目


「地上への入り口が出来たぞ。」


アンの声が脳内に聞こえた。数日前から掘らせていた地上への入り口が開通したようだ。地上の入り口から第1階層に通じる通路は数百メートルの曲がりくねった通路を用意した。強力な貫通魔法などでモンスターが全滅するのを防ぐため、基本的にダンジョンの通路は直線を可能な限り少なくしている。


1日に入手出来るDPは2000Pt近くになった。ターマイトの数が増えてきたのでモンスターの維持費が少し増えてきたな。維持費はモンスターのランクによって増減するとアンが言っていたな。今は低ランクのモンスターがメインだからそこまでは維持費は高くないけど、高ランクのモンスターがメインになれば維持費もかなり高くつくだろうな。

そして俺はワープを使ってアンの所に行った。さすがに最下層から1番上までは道に迷わなくても2時間は掛かるのでDPを使うのは勿体無いがワープを使うことにした。往復4時間はさすがに時間の無駄だし。


「ここを上がれば地上に出られる。」


「まあさすがにダンジョンマスターが地上に出るのは無防備過ぎるからモンスターに偵察を頼むけどな。」


実はこの時の為に偵察をするためのモンスターを作っておいた。それはターマイトの進化先の1つ、フライターマイトだ。シロアリでいうところの羽アリだな。ちなみに元居た世界だとシロアリの羽アリが出た家は大抵柱などを食い荒らされていて末期的な状況になっているな。


「そうだな。それが懸命だろう。」


俺はフライターマイトに指示を出し、ダンジョンの外に放った。


「さて、地上はどうなっているが、楽しみだな。」


「ああ、外の環境次第でダンジョンの運営の難易度が変わってくるからな。」


そして俺はアンにこの前教えてもらった視界共有を使った。これはモンスターが見ている映像をダンジョンアプリの画面に表示するもので、どれぐらい鮮明に写るかはモンスターの視力に依存する。ちなみに他のターマイトで試したときはぼやけていて細かいところまでは分からなかった。


「今度はかなり鮮明に映っているな。」


やっぱり空を飛ぶモンスターは視力がいいのかな?他のターマイト達とはかなりの差がある。


「外は見渡す限りの草原だな。」


「ああ、もう少し高度を上げてみるか。」


俺はフライターマイトに高度を上げるように指示を出した。数百メートルまで高度を上げると遠くに道らしきものが見えた。人の姿までは確認できないが恐らくは誰かが居るだろう。


「道があるな。恐らくは街道だろう。」


「近づいてみるか?もしかしたら人が通っているかも知れない。」


「地上に降りるのは危険だな。上空から眺める程度にしよう。」


「わかった。じゃあ今からモンスターに指示を出す。」


俺はフライターマイトに道の上空に行くように指示を出した。数分して上空に到着したので俺達はモニターで道を確認した。


「結構な人が通っているみたいだな。」


「ああ、どうやらここはかなり大きな街道みたいだな。これは外で大暴れすると討伐隊が現れるだろうな。」


「外で暴れる予定は今のところないが…討伐隊は確かに厄介だな。」


「少なくとも今の兵力では簡単に制圧されるだろう。」


討伐隊か…今の兵力じゃ勝ち目は薄いだろうな…。兵士や腕に覚えのある人間が最低数百人単位でダンジョンに攻め込んでくる。最低でもソルジャーターマイト、もしくはそれ以上のモンスターを同数以上ぶつけないと勝つのは厳しいだろうな。


これでこっちの方向には街道があることがわかったな。気づかれたら面倒な事になるかもしれない。長居は無用だな。俺はこのフライターマイトに帰投指示を出した。

さて、他はどうなっているだろうか。俺は他のフライターマイトの視界を共有した。


こっちは…遠くに山が見えるな。かなり遠くだろうから様子は見には行けないか…


こっちの視界の先には森が見えるな。無理をすれば近づける距離だろうけど森は恐らくはモンスターの巣窟だろう。Fランクのモンスターを偵察に向かわせてもすぐに餌になって終わりだな。


最後の1匹は…おっ、遠くに村らしき物が見えるな。距離も偵察可能な距離だ。アンに打診してみるか。


「アン。村が見えたんで偵察に行こうと思うのだがどう思う?」


「基本的にお勧めはできないな。村や町の周囲には結界が張ってあって弱いモンスターでは結界を突破する事は出来ない。」


「結界の範囲はどれぐらいだ?」


「基本的に村や町の周辺だな。そこまで広範囲には張られていない。」


「なら距離を置いて偵察する。村まで3kmの距離まで近づこう。」


「3kmか…それなら結界の範囲外だろう。」


俺はこのフライターマイトに村の近くまで近づくように指示を出した。万全を期すため村から3km程度離れた場所から偵察する。


1時間後、村の近くの上空にたどり着いた。村はかなりの大きさだ。この距離からだと何処にどのような施設があるかまでは分からないがどれぐらいの大きさでどのような作りかが分かっただけでも大きい。どうやら建物を見る限り中世かルネサンス期ぐらいの世界のようだ。近代兵器は間違いなくないだろう。


「どうやらここがこのダンジョンから1番近い村のようだな。」


「ああ、ダンジョンに軍隊が攻め入る時はここを拠点にするかもな。ここを警戒しておけばある程度襲撃が予想できるはずだ。」


フライターマイトを量産できる余裕ができたらここに偵察を送っておくか。上手くいけばこっちに向かってくる討伐部隊を見つけられるかもしれない。少数精鋭で討伐部隊を送られたらさすがに見分けはつかないけど…でも最初の討伐体は恐らくここを領地にしている国の軍隊のはずだ。


「今日の偵察はこのぐらいにしておくか。空を飛んでいる他のモンスターに食べられるのも嫌だからな。」


今はまだモンスターの数も少ない。1匹失うだけでも損害は大きいからな。それに無理をさせて犠牲を出したらクイーンからの印象も悪くなるだろう。モンスターと良好な関係を築くのもダンジョン運営に置いて大事なことの一つのはずだ。


俺は偵察に出していた全フライターマイトに帰投命令を出した。1時間ほどして村の偵察に行っていた最後のフライターマイトが戻ってきた。全員無事に戻って何よりだ。


少しだが外の情報が手に入ったな。だが今のフライターマイトの数だと24時間偵察できるのは3か所程度が限界だろう。3交代で偵察と哨戒に当たらせるとするとダンジョン周辺の哨戒に3部隊、他の警戒に当たらせるのは6部隊だ。これで見張れるのは2か所がせいぜいだ。


だがフライターマイトは偵察以外に使うのは厳しい。戦闘力で見れば戦いの素人の俺でも勝てそうだしダンジョン採掘にも向いていない。量産すると戦力的にはマイナスになる。

俺は今後進化するであろうターマイトをどれに進化させるかに頭を悩ますのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る