あなた(29)と私(16)、背中合わせ~大切な気持ちの伝え方~

黎明煌

第一章「大切な道の見つけ方」

第1話「プロローグ 追憶の君」

「人に優しく生きること」


 その言葉は祝福のようで、


「そうすれば、君はきっと大丈夫だよ」


 だけど、俺には呪いのようにも聞こえた。


「少し難しいかも?」


 そう、俺には難しい。


「私はここで終わりだけど……」


 白いベッドの上で諦めたように笑う少女。俺はそんな彼女の笑顔が嫌いだった。だけど、


「でも、君が『終わった』あとに、私にきっとお土産話をいっぱい聞かせてね?」


 いつもみたいに彼女は悪戯っぽく笑ってみせたのだ。


 残酷な話だと、今でも思う。


 大切な人に気を遣わせて、ただ震えて泣くだけの男に、まだ見ぬ誰かに優しくしろだと?


 ふざけるなよ。


 俺が……俺が一番優しくしたかったのは、君だけだったというのに。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る