最終話 ◇ もう一度、ドアを開いて ◇

 男は空色の鳥、女は花冠。


 空色の鳥が言う

「わたしは、ほんの悪戯心とはいえ姫様の手から花冠を奪って、あの門の中へと落としてしまいました」


 花冠も言う

「わたしが門の内側に落ちてしまった為に姫様は、あの扉に気づき開けてしまわれました」


「「不幸な偶然が招いた悲劇。

でも、それがきっかけで姫様は消え、お妃さまは亡くなり、王様は狂ってしまわれた」」


「王が全てを、ご自分さえも呪われ王国が滅びた時、その原因となったわたし達は祈りました、願いました」


「どうか、どうか……と」


「どうか姫様を探し出す為の力とすべをお与えください……と」


「その為なら100年1000年かかろうと、この姿をどのように変えてでも……と」


 白い部屋に色彩が戻ってくる。

 男の服は空の色に。

 女のドレスには色とりどりの花々が溢れる。

 わたしのネグリジェは薄らと薔薇色がかったドレスに。


 男と女は小さな姫に戻ったわたしの手を左右それぞれからとる。


 それから、わたしたちはドアを開けた。

 あの日の緑の庭園に戻るために。


 もう一度、あの日をやり直すために……。


 ▼

 ▼

 ▼


 ドアを開けると、その向こうには……。



 お父様……。

 お母様……。

 やっと、わたし達は再び逢うことができて


 ―― 全ての呪いはほどけた



 それから

 長い長い夢の終わりにやっと


 わたしは小さな姫に戻って微笑んだ。



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