第19話 喫煙所

五十川にとって、新島村みたいな40代後半の男から何の魅力を感じるというのだろうか。金💰もなけれゃ、ゴルフ⛳️もしない。恐らく何の興味も感じないのだろう。


おいおい自分は、何の幻想を抱いているのかと自嘲した。気持ち悪くなって来た。土台無理な話だ。富士山の頂上まで逆立ちしながら登るくらい不可能だ。新島村が、大谷翔平からホームランを打つ事くらいいやもっと不可能だ。でも、でもね、本当に、本当に五十川は可愛いかった。❤️


服を着替え終わり外に出ると、勝手口から外に出るための暗証番号を打ち込んだ。ドアのロックの表示が、赤から緑へと変わりドアをガチャリと開けた。


勝手口を出ると、外気はムッとして暑さがまだ残っていた。勝手口のすぐ横には衝立があり、衝立の隙間から、黒い布製のトートバッグを短い組んだ足の太ももの脇に置き、片膝🦵を抱きかかえるようにしてタバコ🚬を吸っている服部の姿が見えた。服部育江が帰宅前の一服をしていた。


「お疲れさん。先はいそちゃんと上手いことやってなあ」

そう言うと、服部は猥褻な顔をしてニヤリと笑った。その顔に思わずパンツ🩳を被せたくなった。

「上手いことって‥‥」

服部に変な噂を流されないか心配になって来た。女性のたるみは首に出るのか、服部の首周りには天然のネックレスのような輪っかが数本出来ていた。また面倒くさそうに後ろに束ねたポニーテールの髪質は例の如く天日に干された海藻のようにパサついている。


「あんた、そうやんか。いそちゃんと抱きついていたんか?」

またもや煙💨を吐きながら、猥褻な顔をして服部がそう訊ねてきた。

「ま、まさか!服部さんが、ドア🚪を開いた拍子に五十川さんの背中にぶつかって、そのまま背中を押されて吹き飛んだんですよ。でも最初は、五十川さんがドア🚪を開けた拍子に、僕の顔面と肩をドア🚪にぶつけて倒れたので謝罪を受けていたんです」

「あのドア、本当に危ないのよね。ドア🚪の後ろが見えないから」

「本当、危険過ぎますよね」

「でも本当は?」

服部が促した。


「ラ、ラッキーでした」

「そうやろう?いそちゃん、可愛いもんなあ❤️良かったに決まってるわ。抱き合えて」

「まあ、そうだけどね。い、い、いや違うから」

しどろもどろに答えながら、顔面が土砂崩れのように崩壊した。でもこんな言い方はハラスメントになるのではないだろうか。服部が、新島村の気持ちを見透かしてかニタニタと笑った。新島村は思わず警戒した。

『何だ?何の誘導だ!』

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