幻想(New花金day)
まるくてつやつやのダンスホール。
青いステンドグラスは月の光を照らして、床は万華鏡のよう。
少し暗くてふしぎな部屋。
座り込んでいた私。
白いシルクドレスが、ぼんやり灯る。
あなたが暗闇から現れた。
微笑みながら、私に手を差し伸べる。
手を取ったふりをして、
私は自分の力で立ち上がる。
白いドレスが汚れていないか心配で、
その場でくるくる回ってみる。
思い出がキラキラするのはご愛嬌。
チンダル現象は森の中。
天使の梯子は雲の中。
ダイヤモンドダストは、冷たい朝だけ。
つかめないから、きれいなの。
スロー・テンポでワン・ツー、スリー・フォー。
同じ方向へ動くとしても、
進路は変えねばなりません。
私の頭上で握られた手は少し汗ばんでいて、
あなたが緊張しているのがわかる。
私は少し嬉しくて、
ほんの少しあなたの身体によせてみる。
かすかにする、レモンの匂い。
かかとの音が響きます。
カツ、コツ。カツ、コツ。
互いの足を踏まないようにしていただけなのに、
気づけば楽しくなっていく。
息をはずませ、視線を重ね、指を絡ませて、
どんどん早くなっていく。
ああこのままだと、赤い靴を履いたように、踊り死にするのかもしれないな。
万華鏡の床は、二つの影で消えたり、現れたり。
つやつやの大理石には、アンモナイトの夢が似合う。
まるい巻貝は、ひとつの点に集束するの。
あの時、別の道を選んだら。
あなたとこのまま、踊り続けた?
選ばず捨てたものは、蠱惑的。
「こんなはずじゃなかった」と後悔して、
暗闇の中で探して途方に暮れる。
けれどもこれは、夢の中。
とりとめのないことを考えながら、根拠のない空想にひたる。
ひたひた、ひたひた。
ここは雨に溺れた街のよう。
夢はいつかさめるもの。
それまではここで、あなたと踊り続けましょう。
ーーーーーー
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