鉱石の行方

始動1

目を開けると真っ青な空、少しばかりの雲。


なぜ空と雲が見えているのか?


見えている?見上げている?

違う、落ちているのだ。天界から。


しかし、彼は不思議と冷静だった。

やはりそれは感情が抑制されているからだろう。

彼は落ちていながらも考える。


『ここはどこだ?』 


落ちていながらも遠くを見渡す。

前方、遠くの方に城が見え手前にはいくつか街らしきモノが見えた。

彼の最初の目的は鉱石であり、街ではない。

が、情報がない以上は街に向かうべきか。


もう一度、周りを見渡す。

後方には森林が、右方には山が、左方はあたり一面草原だ。

どこにいこうか悩んでいると、ついにその時間はやってくる。

ドォォォーンと激しい音を立てながら

彼は地面にぶつかった。


グニャグニャリと彼の体がうねる。

そしてしばらく経つと彼の体は元に戻る。


『本当に激突しても痛くないんだな』


改めて人間ではなくなったことを実感した。

彼はもう、モンスター種の1つ【アイアンハート】である。


少しばかり人間の名残り惜しさを感じつつも彼は歩き出す。


『さて街に向かうか』


街まで1本道である。舗装はされていないがなんらかで固められた草一つない地面。幅は大人5人が横歩きできるくらいはある。

道の周りは、草が生い茂っている。


歩きながらも彼は考える。


言葉は通じるのだろうか?

お金は稼げるのだろうか?

色々な単位な基準も通じるのだろうか?

自分自身はどのくらい強いのだろうか?

考えたらきりがないことを思いつつも考えられずにはいられなかった。


『事前情報少なすぎるだろ‥』


やれることをやるしかない。

不安は一つずつ潰していくか。


彼はおもむろに指先をナイフに変えた。

指先のナイフは飛ばせないのか?

飛ばそうと思い、手首を降ってみる。しかし飛ばない。

今度は指先を切り離すイメージをしながら手首を降ってみる。

すると、シュッと音を立てながらも前方に飛んでいった。

初めての遠距離攻撃である。


『おっ飛んだ飛んだ、まだまだわからんなこの体』


指先を見直して見ると飛んでいった分は無くなったままである。


今度は元に戻るイメージをして指先を戻した。指先は元通りである。彼は、指先全てをナイフに変え、前方に飛ばした。指先全ては無くなったままである。また元に戻してみた。


これは無限に使えるのか?


指先は元に戻った。今度は手を刃物に変えてみる。それを振りかぶって飛ばしてみる。手首から上は無くなったままである。元に戻してみる。すると彼の視線が普段より下に下がった。


どうやら、使いすぎると体が減ってしまう。使いすぎの注意が必要だ。


それでも彼は喜ばずにはいられなかった。

初めての遠距離攻撃の手段が手に入ったからだ。


そして自分の飛ばしたカラダを取りに戻った。


黒いローブの男が道で何かを

一生懸命探している様は中々に不気味だ。



彼はそのことに気づいてはいないのだが。

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