第12話 お嬢様は気が短い
やりたい事は全てやる。
それが
口で言うのは簡単だが、それを実践するのは簡単ではない。
普通の人間なら実践しようとすら思わないかもしれない。
なぜなら、実践するためにはそれ相応の金が必要となるからだ。
だが仮に金があったとしても、やる奴はいないだろう。
いや、やる奴はいるかもしれないが、その全てで『結果』まで出せる奴は
なぜなら世の中はそんなに甘くない。
金があれば結果も出せるなら、世の金持ちはみんな偉人になれるという事だから。
もっとも、金があるほうがその近道となる可能性はあるが。
要はその個人の才覚の有無とやる気の持続が問題なのだ。
「漫画で賞を獲ったというのも、アイドルの話も嘘ではないと思うが、その割には異世界ネタは低クオリティだったな」
「それは準備期間が少なかっただけです。もっと時間をかけて準備していれば、きっと
こっちとしては準備不充分でありがたかったが。
「じゃあ、今回は準備をする時間が少なかったのは何故?」
「それは………お嬢様から直接お伺いください」
何か深い理由でもあるのか?
「では、そろそろお昼ですし、屋敷に戻って昼食としましょう」
「ああ、
「あっさり口を割りやがった………」
屋敷の食堂に戻り、昼食を摂りながら話題を振ってみれば俺の振った話題はすぐに終了した。
「それで、少しはこの国の事がわかった?」
「ああ。お前の趣味だけを詰め込んだ、文字通り『
「
午前中に
個人スペースと言うには規模がでかすぎるが。
「お前のやりたい事のために全力を尽くす姿勢はわかったが、いくらなんでもやり過ぎじゃないか?ここまでの広大な土地は必要ないし、ましてや『国』なんてデカイ話にする事も無いだろう」
「ふー………」
「君が午前中に見たのは、あくまで私の『趣味の一部』であって、それが全てでは無いわ。もちろん君の言うように、私の趣味のほとんどは『国』なんてレベルじゃなくてもできるけど………」
予想外に真面目な顔で言うものだから、少々気圧される。
俺の印象では、「誰からも文句を言われない趣味の部屋」の拡大版みたいなものだと思っていたのだが。
「例えば………そうねぇ、
「それは………」
それは難しい。
これをネタにイジメをするなと言うのは簡単だが、それでイジメが無くなるはずもない。
「ちなみにね、イジメられるのは
「え?」
「もちろん直接的な被害者は
「そうかもしれないが、イジメがあると知りながら放置したとすれば、教師としての責任を追及されても仕方ないだろう」
「問題はそこじゃないわ。仮にその担任教師が行動をしていたとしても、世間は結果しか見ない。さて、一番の悪人は誰でしょう?」
担任教師がイジメに気付いていて、そのための対処もしようとしていた。
それでも止められないのがイジメというものだ。
果たして一番悪いのは………
「………イジメをしていた本人だ」
「そう。そして、そんなイジメっ子を育てた親よ」
「それは当然だろう」
「だけど、実際に処罰されるのは担任教師、または学校の校長だけ。イジメをしていた子とその親が処罰された、なんてニュースを見た事は?」
無い。
確かに教師に責任が無いとは言わないが、『責任』という言葉を出すならば、イジメをした張本人、その張本人が未成年の子供と言うならばその親にこそ重い責任がある。
「結局ね、今の日本人には『責任感』というものが無いの。我が子のした事に対して『自分の責任だ』と言えない親。そんな親の事を子供は尊敬できるかしら?」
なんとなく、だんだん
確かに今の日本人には『責任感』の薄い奴が多いのかもしれない。
自分の責任にならない為に、なんとかして責任逃れをする方法を探す、いや、責任を押し付けられる何かを探している奴ばかりだ。
じゃあ、今から責任感の強い国民を増やす方法は何があるだろうか?
「仮にこれから責任感の強い人を増やすような政策があったとして、そんな国に生まれ変わるのは何年先?
それを………こいつはやろうとしているのか?
今しか無い、『今』助けを求めている人のために。
「お前………」
「私は短気なの。気長に『いつか良い国になったらいいね』じゃ満足できないの。だから、やれる事は『今』やりたいのよ」
ふざけているだけかと思っていたワガママお嬢様がこんな事まで考えていたのか。
俺は自分の考えの浅さを思い知らされたような感覚だった。
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