第3話 名前でイジられたくは無い
「お前………今なんつった………?」
「だからぁ、
「何度も言うなぁ!!」
「理不尽!?」
温厚を自負する俺だったが、久々にキレた。
それをこいつ………!
「お前………俺の事を調査したんだよな?なら俺が『そのテのネタ』が大嫌いだという事は知らなかったのか?」
「私ね、『下ネタ』が大好きなの」
「俺の質問はどこ行った!?」
俺の質問は華麗にスルーして、
「それも私が『理想の国』を作りたい理由の一つよ。今のこの国はくだらない規制が多すぎる。人を傷つけるならともかく、人を傷つけない下ネタまで規制するのはどうかと思うわ」
「たった今、俺を傷つけてた奴のセリフかっ!!」
「そうかもしれないわね。でもそれは、『私の国』だから傷つけられたの?日本だったら違うと言うの?」
「それは………」
それは
それは日本だろうがこの『
実際のところ今までずっとそれで悩まされてきたのだ。
「アンタの国じゃ違うとでも言いたいのか?」
「そうだねぇ………お!サワちゃーん!ちょっと来てーーー!!」
「あ?サワちゃん?」
すると
彼女も
身長は
おそらく俺よりは年下だと思われる。
「はぁはぁ、
サワは息を切らせながら
茶色のショートヘアーが呼吸に合わせてリズミカルに揺れる。
初対面でまだお互いに自己紹介もしていないのにこんな事を思うのもどうかと思うが、
「サワちゃん。私はちょっと用事があるから、この人を案内してあげてくれるかな?」
「あ、はい。お任せください!」
「はあ?お前、なに勝手に………」
「じゃあカケル君、私は抜けるからサワちゃんにこの国を案内してもらってよ。夕食の時間には戻るから」
「おいっ!ちょっと待て!!」
そう言って
あの野郎、逃げやがったな………!
俺のそんな険しい表情に少し怯えた様子でサワという少女が俺に話し掛けてきた。
「あ、あの………」
「ん………あ、ああ、ごめん」
まだ自己紹介もしていない女の子に対して理不尽な恐怖感を与えては、俺も奴と同類になってしまう。
仕方ない、ここは一旦落ち着いて仕切り直すしかないだろう。
「悪かったね。俺の名前は
「セクハラです!」
「ええっ!?」
なんで!?
最近は名前を聞いてもセクハラになるのか!?
それとも俺の名前を聞いて勘違いされたとか!?
できるだけ誤解されないように、苗字と名前の間を少し開けてから言ったのに、それでもまだ配慮が足りなかったか?
警察官志望の青年がセクハラ容疑で逮捕とか、嫌すぎる!!
「あ………」
すると俺の様子を感じ取ったのか、少女はもう一度丁寧に言い直した。
「すみません、私の名前は
「は………?」
少女はその場にしゃがみこみ、落ちていた小さな石ころで地面に『瀬久原』と書いた。
「これで『セクハラ』と読みます!勘違いさせちゃいましたよね………?ごめんなさいっ!!」
「あ………あー!あー!なるほどね!?」
「それから、
それが彼女の名前だったのか。
漢字で見るとなるほどと思う。
言葉で聞くとドキッとさせられるが。
わかってしまえば何て事もない名前だが、
彼女もおそらく俺と同じ、日本には住みにくい名前仲間というやつだ。
もしかして
「あの………?」
俺は心の中に渦巻くモヤモヤを一時的に封じ込める事にした。
「ああ、悪い。じゃあセク………苗字だと色々アレだし、
「はいっ!」
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