第2話 小猿と遊び猿飛びの術を得る

小猿を小屋に運ぶ、喜美代と美咲は土間に藁を敷き詰めた。

「ねえ、犬用の首輪あるかな?」

「えっとね、あっここにあったよ!」

 喜美代がヒモがついた犬用の、赤い首輪を何処からか見つけて来た。

「怪我してるから、逃げないように首に付けとこうかな?」

 文兵衛は小猿に首輪を付けた。

「♪まずは薬を付けて、それから布でグルグルとね♪」

美咲が言いながら包帯を巻いている、猿の手爪も切っていた。

「治るまで、ヒモを柱に括ろう」

 文兵衛は気がついた猿に、餌をやるが娘らは怖いのか警戒しあまり猿に近寄らない。

 あれから三日たった。小猿も元気になっていた。

「文平、外に母猿が来てるよ」

「そうか傷も治ったし、そろそろ外へ離してやろうか」 

子猿の首輪外し扉を開ける子猿は文兵衛の顔を見て、出ると一目散に母猿の元に駆けていった。

「小さい猿さん、元気になって本当に良かったね!」

 喜美代が手を振る美咲も負けじと振る。二頭の猿は仲間のいる神社の森へときえた。

今日も朝早くから、文兵衛の剣術稽古の声が聞こえる。それを見ている者がいた、気配を感じ文兵衛は後ろを振り返った。

「あっ、あなたは林長五郎様」

「そうだ精が出るのう、その木刀で儂を思いきり打って見よ!」

 言われるまま上段に構え、一間摺り足でにじり寄り。

「えいっ やあっ!」

「いててぇ、先生参りました」

「いつお主の先生に成りしか?」

「変わった術を、遣いますねぇ」

「儂が仙台から甲斐の山々に修行していた時、老師に会い無刀取り秘技を伝えられた、それがこの大東流合気術なのじゃ!」

「なんと言う人でしたか?」

「はっきり覚えていないが、確か武田国継と言っていたかな?」

文兵衛は不思議な話なので、真剣に聞いていた。

「甲斐の国は昔の武田ですか?」

「武田氏は源氏の流れ、義経(よしつね)とも

縁がある源義経は鞍馬八流と呼ばれる山伏兵法を、鞍馬寺で鬼一法眼から習って、新た

に義経(ぎけい)流の剣術または忍術や大東流柔術の開祖となった」

「では大東流は、義経流ですか」


「そうとも言えるが今は定かでは無い一説では新羅三郎義光を始祖としていて、かつ源義家以来継承されてきたと言われていますが義経もその継承者の一人かも知れないので正しくは義経流とは言えないかも知れない、今となっては伝説に近くあくまで伝説的な話しで後の人々推測に過ぎないのですが、古事記に載っている手乞いという武芸が合気陰陽道として宮中に伝えられそれが清和源氏に伝えられたのである。少し話しが長くなったがの」

源義経は子供達も知る、有名人なので古い話しですがとても興味深い話でもあった。川の流れもいろいろ有り、伝承も叉色々あってしかるべきで是はそうだと言い切れない。

此処で少し脱線、義経は兵法にも通じていました平氏をなんなく滅ぼした武将で武芸にも優れているゆえに頼朝に追われ死んだ事になっているが、あれほどの忍者でも有る者がやすやすと、殺されはすまいと思う事実は藪の中です。

矢張り逃げのび大陸に渡りジンギスカンになったと信じたい源氏の旗は白い、ジンギスカンの旗も白いのであるし同じモンゴロイド義経は馬にも乗れたので有る。

それにしてもその頃藤原氏の地元から、砂金がよく産出していたが藤原氏滅亡してどこから出ていたのか解らなくなった、砂金だから川からと思うがあれからピタッと産出が止まっている、今見つければ大金持ちに成れるがなぁ、皆様機会あれば見付けて下さいね。

どうもすみません、話を元に戻します。

「老師は儂に技だけ伝えて、知らぬ間にフッと居なくなったでのう!」

「其れでは矢張り神か仙人にでも、会ったのでしょうか?」

「そう今も不思議に思う、修験道の奥は深い、念力・合気・呪術的な修業へて超能力を得るのだ!」

「ええっ! 超能力ですか?」

「そうであるが儂は自然の探求者でもある、科学と言うべきか薬草学・爆発物学・武器学の研究などする事多くあり、超能力を極める事は難しいと言うべきかのう?」

「超能力ですか、それは私にも取得出来ますでしょうか?」

興味深い話しなので、文兵衛は師匠の近くに更に寄って聴いている。

「かつて修験者や忍者にも能力持つ者がいたと云われている、仮にその能力者を超能力者(術者)とすれば目に見えぬオ-ラを放っている、それに触れた人は触発されて能力を得る事があるので感じたら近ずけだなぁ?」

現在は術と言うと馬鹿にされて、道と云えば納得する風潮が有ります。逸れも云わずただ単に才能と云われて納得しているかも。

「ならば若くても突然能力に、目覚める事もあり得るのですかねぇ!」

「年齢や修業期間の長さではない、元々持っている能力に目覚める事で、年を経ても得ることが出来ぬ人も要る」「かつて修験者や忍者にも、能力持つ者がいたと云われている」

「具体的に、どのような能力でしょうか?」

「逸れは天眼通、天耳通などの神通力、忍者なれば千里眼だのう」

「へえ世の中には、そのような特殊な能力持つ人がいたのですか」

「求めよさらば与えられんだな今は不思議な事をみても、はなから小馬鹿にしている人が多く要るものだ、そんな人は能力得る事は既に自らが否定しているのである!」

まだ不思議な話を聞きたかったけれど、言うと早々に呪文を唱えながら護摩堂へ去って行った。

「文平ちゃん、何処にいるの」

 美咲が呼びに来た、周辺をキョロキョロして探している。

「あ喜美代さんはどうしたの?」

 突然、後ろから思い切り腰を押された。

「おっととと、いけねぇやっ」

ドテンと、よろけて腰を打つ。

「あら弱いのね、ふうんお主の腕はこの程度なのか!」

「ううん、喜美代さん急に押すからだよ!」

 自分でも情けなかった、文兵衛は照れ隠しに言った、不意を突かれると大の大人でも五歳の幼児に、こかされる事もあります。

「へへへ、連れもていこら」

 文兵衛足を引きずり、顔赤らめ下向いて歩くのであった。

 その夜は眠れなかった、剣術や大東流合気術の事が目にうかぶ。

 稽古しても一定線まで上達するがそれ以上は壁あり、努力してもそれをなかなか超えられないのだ。

 (おいら、才能無いのかなあ?)

 悶々としていたが、眠くなって知らず知らず寝ていた。

「いつの間にあっいけねえ、もうこんなに日が高い遅刻だ」

 周りを観て慌てて起きる、木刀を持ちいつもの場所に行く。

 (キキイ) 声する木の上を見る、近くで美咲が文兵衛に手で合図して呼んでいた。

「あっこの間の小猿だよ、じいっとこちらを観てるよ文平ちゃん!」

 手を差し伸べると、猿は寄って来た。

「お前、元気にしていたのか?」

 小猿が笑ったような気がする、嬉しいのかあちこち飛び跳ねる。

 それを見て文兵衛も真似し、前転や後転、横転、猿の様に跳ねる疲れたのか、知らぬ間に小猿は何処かいなくなっていた。

(けれど、この小猿相手の遊びにて猿飛の術を会得したのだ)

勿論それなりの工夫もしています、例えば手甲を裏返して使用して枝で傷つける恐れある、手の内側を保護した事などです。これでスムーズに猿飛び術が、出来るように成りました。

 入れ替わり小猿の代わりに、林長五郎がやって来た。

柔術は相手が居ないと、稽古にならないのだろう。

「こい文兵衛、儂が一つ稽古に揉んでやろうか」

「師匠よろしくお願いします、では行きますよヤアッ!」

ひと汗流すと、満足したのか。

「よし、本日はこれまでだ」

 護摩御堂へ帰っていく、文兵衛は、投げられてばかり不満足だ。

 (師匠は身体で覚えよと云う)

 が全く面白く無いのである。

皆さんは忍者映画を観て、内心嘘のように思われるか知れませんが、現在の体操選手を見て、現実だと実感されると思います。

当時の忍者も訓練を経て、体操選手のように動けても、何ら不思議な事でもないです、命がけの仕事だから驚くほどの力が、出たのかも知れませんよ……。

皆さんは忍者の事を書くと、嘘みたいと思われるかもしれませんね、事実は小説よりも奇なり、で忍者物は即ち子供向けではない。

あの有名な豊臣秀吉でさえ、忍者説がありました(よく信長に猿面カンジャ)と言われていました。

現在日本では忍者の事を書くと軽く見られますが、世界的には日本を知らない人でも、忍者と言うと知っていて、ニンジヤは今や世界共通語となりつつあります。

(最近、師匠みえないなぁどうしたのかな)

「何独り言をいってるのかね」

「あっ、林長五郎先生!」

文兵衛慌てて、頭下げる。

「儂もいろいろ忙しくてのう」

「文兵衛よ、字は読めるのか?」

「はい、読めるようなりました」

「これは私の書いた忍術本、読みなさい読めば返すように、必ず他人には見せるな! 親にもねっ」

「はい秘密にします、えっと変わり身の術に逆足の術か、で師匠は何流なんですか?」

「紀州流だ、それは秘密だよ二人だけの内緒になっ!?」

この頃まだ根来忍者とは言ってなかった、紀州流と名乗っていましたが、藤林一党が根来に移ってから、根来流となったのである。

笑いながら片方の目をつぶる。

「はい解りました、この事は必ず秘密にいたします」

「逸れに書かれていることは、大ざっぱなで本当の術は、自らで開発せよ、 知恵は常々究明する事で自分のものと成る!」

「はい、常に不思議に思った事はそのままにせず探求し、答えを自然界に求め発明する事にします」

「よろしい、求めよさらば与えられん此より自然を師匠とせよ、また年長者を敬い尊重すれば、その貴重な経験や教訓を貰えるのだ」

「御教訓有り難く思います!」

「では、しばらく留守にする」

 言うと何処かいなくなった。忍者とは自然の探究者であり、いまで云うと科学者でもあったのだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る