第4話 異世界に来ました
「おお! 新たなる勇者様たちがやって来ましたぞ!!」
なんかテンプレっぽいセリフを吐きながら、豪華な服装のオッサンがそんなことを言った。
辺りを見渡すと、なんか神官っぽい人やシスター服の人が大勢いるほか、周囲にはメイド服の女性なんかもいる。
なんか、アレだ。
異世界モノの転移直後っぽいアレだ。
さっきのテンプレ台詞を吐いたオッサンが、俺たちの前に歩み出る。
「初めまして!! よくぞいらっしゃいました勇者様!! 私は この『ヒューマン英雄王国』の勇者支援大臣、ナンカ・エライネンと申します!!」
いや名前すげー雑だな。
この世界ではこんな感じなんだろうか。
「はあ、どうも。俺は瀞江桃吾ッス。こっちは弟の翠です」
「なるほど! 今回の勇者様はご兄妹……あれ? 弟? 妹さんではなく?」
「そうですよ。それが何か?」
「えっ、ああ、いえ! 何でもありません!! それよりも、今回の勇者様は御二人ですか! 頼りになりますなあ!!」
「あっ、俺は付き添いなんで。勇者は翠だけッス」
「……えッ!? 付き添い!? ああ、そ、そうですか……? わ、分かりました。では、ここで話すのもなんですし、まずは我が王との面会に来て頂いても?」
「いっすよ」
すげー想像通りだな。
生前に――いや今も生きてるが――オタクやってて良かった。
マジでサイコーに異世界って感じの雰囲気だ。
そのまま俺たちは流れるように謁見の間に通されることになった。
案内の間、大臣のナンカは「なんか今回のは思ってたのと違うな……」とボヤいていた。
ボヤくのは勝手だが、それ俺たちに聞こえていいのか?
まあ翠は歩きながら、
「
そういう他人に迷惑が掛かる遊びはやめなさい。
まあこの遊びを翠に教えたのは俺なんだが。
たのしいよね、洋画の真似。
そうしているうちに、俺達は謁見の間にやってきた。
俺たちの正面には、王冠を被った偉そうなオッサンが偉そうにふんぞり返っていた。
「よく来たな勇者よ!! 我こそはヒューマン英雄王国第14代国王!! ナマエ・カンガエルノ・メンドイ4世だ!!」
「いや この国の人名どうなってんの!?」
俺は流石に我慢できずに突っ込んだ。
「む? 我が名を聞くと、勇者は誰もがそういう反応になるな。一応、この国を興した際に初代国王が勇者に付けてもらった偉大な名を受け継いだのだが」
「ああ、まあそうだとは思いましたけど……」
名前を考えたの誰だよ。
適当すぎだろ。
「まあ、良い。勇者達よ!! ……え? 1人は付き添い? 付き添いって何? 分かんない? しょうがないなア。じゃ、それで」
おい、玉座の後ろの大臣との話 聞こえてっぞ。
「こほん! 勇者・瀞江翠! そして付き添いの兄・桃吾よ! そなたらには魔王を倒して欲しいのだ!」
すげえテンプレ通りだな。
「あとまあ、なんかこの世界と魔王の関係とかは、そなたらの知るRPGやらなんやらっぽい感じなので、細かい説明が効きたい場合は後で担当のものが説明する!!」
「いや雑だろ!! 大丈夫なんスか!? そんなんで!?」
「うむ、これまでの勇者が『ああ、だいたい分かったんで良いですわ』みたいな反応だったのでな」
「ねえ、お兄ちゃん。異世界ものって現代のオタクに馴染み過ぎですよね……」
「ま、まあ。俺らも何となくは分かるしな……」
「じゃあ、そんな感じで!! 解散!!」
「ウッソ!? もう終わり!?」
王様はそんな感じで去っていった。
マジで!? 謁見5分もせずに終わったぞ!?
バイトの面接以下じゃねーか!?
「はい、じゃあこれから書類の作成とか、詳細の説明とかするので、案内します」
大臣のナンカが俺たちの前に出てそんなことを言った。
すげー手慣れてるな。
この感じだと勇者ってまあまあ来てるんだろうな。
それから連れていかれたのは、応接間のような部屋だった。
といっても、流石は王様のお城だ。
応接間の家具も絵画も良いものが置いてある。
と思ったが、俺に審美眼はないので何とも言えない。
ソファはフワフワだし、置いてあるフルーツが美味いことは分かるが、逆に言うとそれくらいだな。
「こほん! それでは、軽くこの世界について説明します!」
移動式の黒板の前に立ったナンカがそう告げる。
大臣が直々に説明するのか。
すげーな、まあ勇者相手だしそういうことをするのかもな。
「えー、なんやかんやあって昔から魔王と戦ってます。人間とかエルフとかドワーフとかドラゴンとかがワ~っています。そんな感じです。あと魔法もあります。以上!!」
「いやだから雑なんだよ!! まあ言わんとするところは分かるけど!!」
「ほら、良いじゃないですか~。分かるんだから~。なんか想像通りの感じですよ」
「何ですかね? この世界の人って皆こんな勇者ヨ〇ヒコの仏みたいな感じなんですか?」
「ああ、でも皆さんの想像よりも文明水準は高いですよ。魔法があるので蛇口捻れば水もお湯も出ますし」
「ああ、便利じゃん」
見た目は中世ヨーロッパ、――いや近代くらいの見た目かな。中世はもっとクソだと思うが、城も綺麗だし、調度品の質も高い。まあ俺は世界史には明るくないし、そんなのはどっちでも良いんだが、見た目よりも文明水準は更に高いらしい。
……というか蛇口捻って水ってかなり高度な文明だよな? 地球だって発展途上国なら蛇口ひねって水なんてあり得ねえし。
まあ異世界ファンタジーに置ける中世ヨーロッパなんぞ、アメリカ人の想像する日本みたいなものである。
ジャパニーズニンジャ!! みたいな。
「うーん。でも、私は割とガチめの中世ヨーロッパ風の世界も興味ありましたけどね。楽しそうじゃないですか」
「いや、中世はヤバいから止めた方がいい。近代フランスで起きたフランス革命ですらエグイからね。貴族を凌辱して殺して身体をバラバラにするくらい平気でやるし。近代でこれだから中世なんか首チョンパして金奪ったりなんかザラだよ。もし俺たちがマジの中世にタイムスリップしたらいきなり殺されて身ぐるみ剥がれてもおかしくないし。あの時代の人からしたら珍しく、綺麗な服を着てるわけだし」
「えっ……中世ヨーロッパってそんなにヤバかったんですね」
「まあ大丈夫だよ、日本だって昔は錆びた槍で女性器から心臓まで串刺しにして処刑とかしてたから、中世なんかどこもこんなんだよ」
「昔の人類こっわ!!」
昔の人類なんて基本クソだよ。
と、俺達が話していると、ナンカ大臣が咳払いして、口を開いた。
「まあ、こんな話をしても仕方がないでしょう。それよりも……魔法、使ってみたくないですか?」
「「使ってみたい!!」」
俺と翠の言葉が重なった。
いやだってテンション上がるじゃん、魔法使えるなら。
「よーし! じゃあ早速 魔法の訓練と測定に行きましょう!!」
「「いえーい!!」」
そうやってテンションを上げながら、俺は この程度の説明のためなら わざわざ応接間こなくて良かったのでは……? と考えていた。
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