転生した俺はポンコツ女神と迷宮の防衛?をすることになったようです。~転生のダンマス!~

トキノトキオ

俺氏、転生したってよ


 声がする……

 

 ――ヒカルよ

 

「引きこもりの長い人生を送ってきました」


 ――睦月むつきヒカルよ

 

「ええ、そうです。ニートのような人生を送ってきました」


 ――目覚めなさい。睦月ヒカルよ

 

「だからって……こりゃあ、あんまりじゃないですかね? 神様」


 ――目覚めなさいってば!

 

「ダ―――――――ッ目覚めてるんだよ! すっかりさっぱり完全に目覚めてんの! で、困惑してんの! 分かる? 分かんないでしょ? 死んだと思ったらこんな殺伐とした廃坑みたいなところに投げ出されたニートの気持ちなんてさ!」


 睦月ヒカルはある日死んだ。引きこもりがちだった自宅の部屋で。久しぶりに窓を開けた時、雷に打たれての即死だった。

 しかし、一瞬暗転した視界がひらけたので驚いて目を開けると、そこは見慣れぬ洞窟のような空間だった。そこで女の声がする――

 

「え? なに? 逆ギレ? そういった感情のモヤモヤをすんなりと落ち着かせるために儀式セレモニーがあるんじゃないか。大事だよ? そーいうの。アンタはさ、そういったことを大切にしないから、対人関係とれなくてイジメられたり、孤立して友達いなかったりしたんじゃないの?」


 薄暗いその洞窟の中、ヒカルの目の前には輝く光の塊があり、女の声がするたび、その光が振動していた。


「な、なんでそんなこと知って……てか、俺、孤立なんかしてないし~友達いないんじゃなくて作らなかっただけだし~」

「ハイハイ分かりましたよ。誕生日会に一度も呼ばれたことのない睦月ヒカルくん」

「な、なんでそんなことを! オ、オマエ、誰だよ! 姿を見せろよ!」

「ふふふ……呼んだ? 私を呼んだね」

「い、いや呼んでない。なんとなく……俺の全細胞が、遺伝子がコイツはやばいと警報を鳴らしている!……ってことで、呼んでないよ」

「フザケんな! いーい? 呼んだの! 今、アンタは私を呼んだの! 烈火の女神、美しすぎる女神ディアーナ様をね!」


 声が名乗りを上げると、光の塊は弾けるように消え、中からピンク色の髪の少女――女神ディアーナが現れた。


「お、おお~……」

「ふふふふふ、衝撃を受けたのかしら? このディアーナ様の美しさに!」


 ディアーナはクルんっと回転すると胸を張ってみせた。

 

「び、微乳~」

「っておい! 見るところが違うでしょ! 顔よ顔! 人は顔が9割なのよ! んでもって女神は顔が10割なの! 胸は関係ない! ないっちゃないんだからね!」

「顔?」

「そーよ! 汝、我が美顔をよく見ることを許可します」


 女性を間近で見た記憶は皆無だったが、ヒカルは女神の顔をガン見した。鮮やかなピンク色の髪に大きい瞳、白い肌、ディアーナの人間離れしたその容姿は、なにか、キャラクターのフィギュアでも品定めしている気分になったのだった。

 

「んん~~~まあまあの造形かな。うん、美少女とは言えるね。けど、なんていうかさ、おしとやかさっていうか、恥じらい? そういうのがヒロインキャラには必要なんだよね。キミさ……なんていうか……性格のガサツさが顔に現れてる感じなんだよね」

「んぎぎぎぎぎぃ~な、なんですって~」

「いやまあ、そういうのが好きな人もいるから大丈夫、落ち込まないでよ。うん、美形美形、美形キャラなのは間違いないし。微乳のファンもいるしさ」

「ってオイ! だ、誰がクソニートの批評に落ち込むんだよ! だ、だいたいがね! DよD! こう見えてもDカップなんだからね!」

「……え? ああ……まあそういうことにしておくよ。寄せてあげるやつあるらしいしね」

「そうそう、人間界にはいいのがあるから便利なの~って違うわ! も――う! あったまにきた!」

「てかチェンジでお願いしまーす。巨乳女神にチェンジで!」

「んなことできるかい! 死になさい! その命を今、天に帰すのです!」


 ディアーナが両手を左右に開くと、中心に赤い光が集まり出した。

 

「最後になにか言うことは?」

「これで巨乳女神にチェンジできるのかな?」


 ――プッシュゥウウウウ

 

「ハッ いけないいけない」


 ディアーナが手を下ろすと、光は霧のように散ってしまった。 

 

「ダンマス殺してどーすんのよって話じゃない。久しぶりの下界なんだから、羽を伸ばすチャンスなんだからチェンジされてたまるもんですか!」

「は、羽をのばすって……おい」

「し、仕方がないわね。気を取り直して……」


 ――おめでとう睦月ヒカル。そなたはダンジョンマスターに選ばれた。


「は? なにそれ? 選ばれたくないんだけど」


 ――睦月ヒカル。そなたにはココ、30階層のダンジョンマスターとして……


「いや結構です。間に合ってますんで」

「うっさい! やんの! ニートすぎて死んだアンタに選択権はないの!」

「そんなの横暴だぁ~ 反対! 反対! 横暴反対! はっんったい♪ はっんったい♪」


 ヒカルは手拍子足拍子でシュプレヒコールし始めた。するとディアーナは顔を耳元に近づけてささやいた。


「いーい? 目標達成したらご褒美にムフフなことやウフフなことが待ってる……かもよ?」

「せ、先生! きょ、巨乳もありますか?」

「ぐっ そ、そーよ巨乳だって、美乳だって思いのままよ! もはや、おっぱいハーレム状態だよ!」

「了解しました! 睦月ヒカルがんばります!」

「フンッ、チョロいわね。じゃあココとココにサインしてね」

「あ、はい」


 ヒカルはディアーナが出した契約書にサインした。よく読みもせずに。


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