元ゲーマー女サラ、異世界迷宮でハック&スラッシュをするっ!

神代零児

第零話 異世界ハクスラはキャラメイキングから・その一

 私の名前は更紗サラサ咲良サラ、二十七歳そこそこゲーマー。


 単刀直入に言うけど、新作ハクスラ系ゲームを発売日当日に買ってほくほく気分で帰宅中の時、暴走トラックに撥ねられてお陀仏さんしちゃったわ。


 ……唐突過ぎるって?


 いやそうかもだけど、でもこんな枯れた独り身女の自分語りを、そんな『ふんふん』言いながら聞いてくれたりなんてしないでしょ?


 私がアンタ達の立場だったら嫌だもん、だから端折はしょったのよ。


 でもって、ここからはもう不思議体験だしちゃんと話すわ。


 私は今真っ白い魂の状態で、綺麗なエメラルド色したもやもやが立ち籠めてる異空間の中……なんか白のブラウスシャツにタイトスカート姿の金髪ソバージュの変な女と一緒に居る。


「サラサ・サラさんですね、私は女神ファリーリーですっ」


 ……うん。皆、今からちゃんとツッコむから安心してね。


「いや、どう見てもニホンにお住まいの外国人さんですよね?」


「ニホンは大好きなのでしょっちゅう来てるし今もニホンで買った服を着てますが、私自身はれっきとした女神ですっ。それも数多あまた在る異世界の中の一つゼルトユニアを代表する、すっごい神様なんですよっ!」


 うわ、なんか食い下がってきた!?


「マジで? 確かにニホンって元々多くの神様が祀られてるし、そういう超常的な存在にも或る意味縁が有るっちゃ有るけどさ……」


 だからってこんな如何にも『駄女神』って感じの変な女まで、それも異世界からやって来てるっての? 冗談キツくない?


「ふふっ、やはり結構落ち着いてますね。ニホン人はこういう事態にも比較的順応し易いので多くの異世界神から重宝されているんですが、どうやら期待に違わずサラさんもそのようですねー」


「重宝って何よ?」


「理由は様々ですが、要するに多くのニホン人の方々にそれぞれの世界に『異世界転生』又は『異世界転移』して貰っていて、その世界に新たな風を吹き込んで貰ってる――といった感じですかね」


 異世界転生、異世界転移。行った世界に新たな風……。


 ふーん? じゃあこういうのが、あちこちでもよく起きてるって事?


 皆はそういうのが有るって知ってた?


「えっと、つまり私にもその異世界なんたらをしろと?」


「はい。貴女のニホンでの肉体は既に死んでいるので、新たな肉体を得て異世界転生をして貰う事になります」


「それって、えと、アンタの世界ゼルトユニアに?」


「いえ、残念ながらニホンからゼルトユニアへは異世界転移でしか行けないんです。だから違う世界に行って貰いますー」


「えっ? じゃあアンタ何しにここに来たのよ?」


 ヒマ人なの? いやヒマ神?


「それが本来貴女を導く筈だった女神が今日デートでー、それで私が急遽ピンチヒッターとしてここに居てあげてるんですー」


 まさかのリア充話!? しかも別に聞きたくも無い女神の横の繋がりとか!


「ダメだわ、めっちゃ壁殴りたい、グーパンしたい……!」


 リア充滅するべし、リア充滅するべし……。


 さあ皆も一緒に、さんはい、リア充滅するべしっ……!


「サラさん落ち着いてっ。そもそも貴女今は手どころか肉体も無いですし、それにそのまま怨念を溜め込んでたら邪霊じゃれいになって人には転生出来なくなっちゃいますよっ!」


「どうせ私は枯れ果てた女よっ! でもねっ、それでも私はゲームをしてる時は凄い楽しんでたし、今日だって新作のハクスラ系ゲームをやりまくるつもりだったんだから!!」


「うわ怖いっ、魂の色怖いですっ! めっちゃどす黒い色に変化してますっ!」


「ハクスラよハクスラ! ハック&スラッシュ!! 本気でやれば何百時間だって遊べるあのハクスラだからねっ!!」


「分かりましたハクスラですねっ! 良いですよねーハクスラ!」


 コイツ絶対分かってないのにノリで返事してるわ。……でも私、ノリが良いヤツは嫌いじゃ無い、会話が疲れなくて済むから。


「……そう、ゲームって本当に良いもんなのよ」


「瞬時に魂の色が戻ったっ!? もーサラさんテンションの振れ幅がおかし過ぎますよー!」


 そんな風に言われたのは久し振りだわ、なんせもう長いこと他人とそんなにマジには話してないからね。


「……こほん、実はサラさん。そんな貴女に朗報が有ります」


「何よ改まって」


「貴女がこれから向かう予定の異世界ですが、メタ的に言うとゲーム要素が有ります」


「え、そうなの?」


 メタってのは私はそんなに気にしないわ。


 さっきも言ったけど、他人との会話は疲れない方が良いから、サクサク進むならメタでもなんでも別に良い。


 いや、えっとこの場合は他神?


「その世界には魔物も潜む広大な迷宮が存在していて、貴女には冒険者としてそこを踏破して欲しいんですー」


 あら?――良いじゃない、それ良いじゃない!


「その迷宮にはさ、もしかしてお宝とか武器防具とか眠ってたりする?」


「うーん、直接存在はしてないんですが、迷宮を進めば錬成れんせいちからっていうものが獲得出来て、それで上手い事やれば変換出来ますよー。でもなんか錬成する度に同じアイテムでも性能が変化するらしくって――」


「ちょ! それハクスラじゃん、めっちゃハクスラじゃん!」


「えっ、これハクスラなんですかー?」


「やっぱり分かってなかったわねアンタ!」


「ひええ、ごめんなさいーっ」


 とはいえコイツの話を聞いた結果、単純に面白そうだと思ってる自分が今居るわ。


 ゲーマーな私の次の人生として、アリかナシかでいうなら……アリよ!!


「分かったわ。このまま魂としてふわふわしてたって始まらないし、私は異世界転生をする」


「おおっ、決断しましたねサラさん。魂の色も今真っ白から乳白色へと変化してますよっ!」


 それって良いの? 色の基準がよく分かんないわ。


「じゃあ早速その世界で生きる新たな肉体ってやつを頂戴よ。……ん? いやちょっと待って、まさか赤ちゃんから始まる訳じゃないわよね?」


 それはぶっちゃけ面倒臭いというかさ、始まってすぐ冒険したいじゃん?


「いえ、今回は『確固たる目的』在っての異世界転生ですから、十六歳という成熟した女性の肉体でスタートして貰います」


「マジで! 助かるわ、それ助かる!」


「はいっ。では、貴女の魂が入る肉体には三つの候補を用意出来ています。次の中から選んで下さいー」


========


 A・身長、百五十センチ。体格、軽量級。敏捷性、器用さに秀でる。(※軽量級は鉄製などの重い武器防具装備に大きな制限を受けるが、危険時に身を隠し易い)


 B・身長、百六十七センチ。体格、中量級。集中力が高め、他は標準的。(※集中力は魔道具マジックアイテム使用時の効果ボーナスに影響する能力)


 C・身長、百八十三センチ。体格、重量級。腕力、耐久力に秀でる。(※重量級は鉄製などの重い武器防具装備に制限を受けないが、危険時に身を隠し難い)


========


「なんか出て来たっ! でもこういう説明文、好き!」


「ちなみに軽量級とか重量級っていうのは一つの目安で、それぞれちゃんと整った体格だから安心してくださいね」


「どれもそれぞれに美形って事でしょっ?」


「はい、主人公補正でそうなってますー」


「メタいわね。良いわ、とことんメタくいきましょ」


 とにかくここは慎重に選ぶとするわ。


『A』か『B』か『C』か、さて……。

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