第18話 反射でピンチが訪れない変身ヒーローって需要はあるのだろうか?
ドライガーの性能は驚くほど高性能だ。
言い伝えにある勇者の1人が持っていた、変身能力ほど荒唐無稽ではないが。
身体能力を3〜5倍程度まで引き上げている。
頭部の角は固定タイプの武器であり、複合センサーにもなっている。
肩、肘、手の甲、膝、足裏からは。
収納に保管していたはずのウサギの角刃が、高密度に圧縮されて出し入れ自由な刃となっている。
何より便利なのはドライガーが自身の能力だということ。
全身鎧が一瞬で着脱出来る様になったのだ。
上位のハンターでも中々に持ち得ない、誰もが羨む能力で性能だ。
そう、使用者がフーライでさえなければ。
フーライ最高の能力は反射。
強化や回復は通しても、攻撃や状態異常は通さずに跳ね返す。
無敵を超えた最高の能力だ。
相手が攻撃してこなければ勝てないが、その代わりに戦闘では絶対に負けない。
戦略級の話しになってくると、都市防衛規模になるので話しは別になるのだが。
そんなフーライが超高性能な生体鎧的な能力を得たとして、十全に使いこなせるだろうか?
スピードが上昇し、攻撃手段も各所の刃と体術があるだろう。
だが肝心の見せ場がない。
上昇した身体能力は圧縮的ではないし、決め技や大技といった高威力の攻撃方法もない。
ドライガーだけで戦うと考えるならば、スタミナを増やして延々と攻撃を続けるのが精々だろう。
フーライでなければ、ドライガー単体だとしても活躍の場は多かったであろう。
むしろ中級ハンターまではチームのエースを。
上級ハンターでも、頼れる一員として確かな信頼を置かれたはずだ。
フーライのドライガーの使用方法は、上がったスピードでキリカに追従し。
彼女の背中を守りつつ、刃と魔法で敵の数を減らしていくのが主になってくる。
そこまで考えて、全力戦闘は追い詰められる直前だと思い直し。
(ドライガーが性能を余す事なく引き出して、キリカの背の盾として地味な活躍をしよう。それが俺の熟すべき役割)
自分1人ではなく、チーム全体での自分の役割に気付いたフーライ。
彼はドライガーを解除すると、再び木刀を持って素振りを再開した。
食後の片付けが終わったキリカも、フーライの正面に立ち合わせる様に素振りを始めた。
(鎧で揺れないし形も見れないから切ない)
1度だけ年頃のせい少年の心が、顔を覗かせたが。
それ以外は何もなく、夕方前まで素振りを続けていた。
2人の全身を洗浄してから、木刀2本を収納へ仕舞う。
キリカに離れてもらい、数の減っていなかったウサギを反射で倒して収納。
合流してウサギを4体出してからギルドへ売りに行く。
いつもの様に6万貰ってから、受付けの職員に呼び止められた。
「キリカさんにお願いしたい仕事がありまして。話しだけでも聞いて貰えませんか?」
フーライを見ると頷いているので、キリカは職員に話しを聞くと言う。
職員に案内されて2人が入ったのは、10人座れるかといった小部屋だった。
職員に促されテーブルの向かいに腰掛ける2人。
自分に注目が集まったのを確認すると、職員は本題に入った。
「話しを聞いて頂きありがとうございます。キリカさんにお願いしたい仕事というのは、かなり極秘性の高い内容になります。なので一切の他言無用を義務付けられますが、よろしいですか?」
頷いた2人を見て職員は続ける。
「内容は東の隣国バルバガグズに赴き。あの国がフォルディナンドに対して、戦争準備をしているかどうかの確認です」
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