世の中、反射さえあれば大体なんとかなる

天神 運徳

第1話 飯野国光はイーノック・ニミッツになる

 飯野国光は単純な少年である。

 高校の入学式で見た2年の、美月鏡花先輩に一目惚れした。


 9月に入って。

 夏休みの間にサッカー部の次期キャプテンと言われていた、2年の鬼瓦琢磨先輩と鏡花先輩が付き合い出したと噂に聞いた。

 信じられなかった、信じたくなかった。

 本人に確認したら、真実だった。

 笑顔で友人は泣きますけど、先輩は気にしないでやって下さいと言えて助かった。

 それから国光はひねくれて、徐々に荒れていった。


 大きな罪は犯さなかったが、小さな違反は日常茶飯事。

 警察で一晩、やっかいになった回数は数えきれない。


 金に染めた髪を逆毛にして、青いカラコンを好んで着けた。

 耳と唇には多数のピアス。

 左目から頬にかけてはトライバルタトゥーが。

 どう見ても不良だが、性根までは腐ってなかった。


 不良とは何をしたよりもまず、目立ったら凄いという風潮がこの頃はあった。

 国光は元が中々の美少年なので、確執のあったグループからは常に狙われていた。

 その日は運悪く、1人で行動している時に。別グループのメンバー達に見つかり、袋小路に追いつめられていた。


 相手が全員バタフライナイフを取り出し、国光は死を覚悟した。

 相手に覚悟はなくても、この人数でナイフを刺されたら確実に死ぬ。

 せめて何人か道連れに。

 そう考えていたら足元に光が溢れ、眩しさに何も見えなくなった。

 光が収まり目を開くと、そこは異世界の王城だった。


 国光は話しかけてきた王女に一目惚れした。


 王女の話しでは昨今の世界情勢が不安定で、軍以外で突出した個人の戦力が必要になってきた。

 そこで古より伝わりし秘儀で、異世界人の召喚を行った。

 死の運命が直前まで迫った存在を召喚し、元の世界での存在を消す。

 これにより、界渡りの時に得られる能力が増して強くなる。


 国光が界渡りで得た能力は3つ。

 鑑定。

 収納。

 そして、強奪だった。

 なお言語能力と読み書きは、召喚者の物が転写される。


 名前を聞かれたので飯野国光と答える。

 発音の違いかイーノック・ニミッツになった。

 訂正しようかと思ったが、王女にイーノック様と呼ばれていいかと思った。

 以降国光は、イーノックとなった。




 魂が強化され強くなりやすい異世界人でも、当然最初は弱い。

 イーノックは兵士と一緒に体力作りに励み、将軍から武術の手ほどきを受けた。

 次第に手ほどきが訓練になり、猛特訓へと変わっていった。


 同時に宮廷魔道士からは魔法を習った。

 これはゲームやアニメがあった影響か、比較的簡単に上達した。




 こうして1年間訓練を続けたイーノックは、ついに外出許可を手に入れた。



 勉強はしていても経験不足と、護衛4人がついてきたが。

 それでもイーノックは初めての街並みに興奮を隠せなかった。

 城では直ぐに犯人がバレると強奪は使わなかった。

 そして今は自国の人間に強奪を使うとまずい、とまで考えるようになっている。

 これは勉強の時に王女から誘導された結果だ。


 強奪は使えないが鑑定ならと使いまくった。

 そしてイーノックは後々後悔する能力を見つけてしまった。



 反射。



 イーノックはそれが、どうしても欲しくなった。

 今見逃せば二度と見つからないかもしれないと、自分に言い訳して。

 我慢も躊躇もせずに、強奪を使っていた。


 完全反射じゃないだろうけど、相手が攻撃しにくくなるのは間違いないからな。

 何パーセントの反射だろうな?これも鍛えまくって倍率上げねーとな。


 そんな事を考えながら自分に鑑定を使い、反射を強奪したか確認した。

 確認しようとした。




 鑑定が使えなくなっていた。





 慌てて他の能力も発動しようとしたが、無限収納は反応がなく。

 強奪も発動する感覚がなくなっている。

 剣を抜いて振ってみるも素人同然。

 覚えた魔法もどうやって使っていたのか思い出せない。


 あいつだ、あの男が俺の能力を奪っていったんだ。

 イーノックは錯乱し剣を振り回して暴れ始めた。

 仕方なしに護衛に気絶させられ、城へと運ばれた。




 落ち着いた頃、話しを聞かれたので答える。

 城にある能力確認の水晶で調べても、イーノックからは何の能力も表示されなかった。


 イーノックは城の下働きに落とされた。

 思慮の足りない戦士など必要ないからだ。

 外に捨てなかったのは、国からの最後の慈悲だった。


 年老いて働けなくなるまで、イーノックは城で働き続けた。

 二度と戻れない、王女との1年を思い出しながら。




 あとがき

 イーノック・ニミッツの登場はこれでお終いになります。

 試験的な書き方もする作品になる予定なので、読者の方が混乱するかもしれません。

 主人公は今回出てきた、名もない反射持ちの男です。

 次話で一度モノローグで進行。その後は三人称視点で進行します。

 あまり先を考えない、行き当たりばったりで書いている作品ですので。

 自分でもどうなるか不明です。

 戦闘ではなるべく反射押しで書いていきますが、どうなることやら状態です。

 こんな半端な作品ですが、どうかよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る