第7話 貴方が私の光になる

 青い空。澄んだ空気。

 地球の環境は本当にすごいと思う。


 こんなに美しい場所に馴染んでしまうと、ガニメデなんかでは生活できない。ここは地球でもすごい田舎って感じの所なんだ。

 周囲は緑に囲まれて自然にあふれている。スズメやセキレイ等の小鳥もいるし、サギやカラスなんかの少し大きい鳥も飛んでいる。虫が多かったり、蛇やトカゲなんかも出てくるからビックリしちゃうんだけどそれはしょうがない。


 今、三歳になった娘とマナと三人で、手をつないで買い物から帰るところ。徒歩でいける範囲にスーパーがあるのは助かる。


「ねえねえ。お父さんは帰ってくる?」

「ええ。今日帰って来るわ」

「お父さんと遊んでいい?」

「いいけど、たぶん疲れてるからちょっとだけね」

「ちょっとだけ遊んでいいの?」

「いいよ」


 そう聞いてくるのは長女の美奈子みなこ

 美奈子の反対側には食料品が詰まっているリュックを背負ったマナがいる。


「ごめんなさいね。マナちゃん。いつも荷物持たせちゃって」

「大丈夫ですよ。雛子様」

「マナちゃん。みなこも大きくなったらおてつだいするよ」

「ありがとうございます。美奈子様。そのお気持ちだけで十分です」


 相変わらず謙虚なマナだった。

 そういえば、マナの姉であるララはかなりの毒舌らしい。姉妹モデルでこうも違う設定ができるのには驚くばかりだ。


 自宅の前には主人が立っていた。


「お帰りなさい、豊介さん」

「ああ、今帰ったよ」

「おとうさんだっこ」


 いきなり美奈子が主人に抱きつく。

 主人はそのまま美奈子を抱きかかえた。だっこされたお姫様はご満悦だ。


 豊介は自分の夢を叶え眼科医になった。お母さんもおばあちゃんもかなり無理をして学費を作ったみたいだけど、彼はそれに応えて努力をした。

 そして見事お医者さんになった。

 彼はいつも口癖のように言っている。必ず君の目を治すって。

 サイボーグ化やクローン再生などの技術で見えるようにすることはできるらしいんだけど、彼のやりたいことはそれではないらしい。難しい理屈はわからないけど、無理せずに頑張ってと伝えてある。今は田舎の診療所で毎日の診察にてんてこまいらしい。私の治療の研究どころではないみたいなんだけど、それはそれで構わない。


 私はマナがいれば見えるから。

 そして、貴方がいてくれることが私の支えになっているから。


「ボクはヒナの光になる」


 小学校の文集に書かれたあの言葉。

 もうそれは果たされています。


 ありがとう豊介。

 貴方は私の光です。


  [了]

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