「秋山が立たされた理由」欄のある学級日誌 24冊目💔

如月 仁成

予告編 ハイビスカスのせい


 ~ 八月二十五日(日) night-time ~


  ハイビスカスの花言葉 新しい恋



「あれ? 道久君、さっきぶり!」


「はい。裏山から直接バイトに来るって言ってましたもんね」


「うん。……ああ、それじゃ、私に会いに来たの?」


「そうです。俺、前々から思っていたのですが、この旅行で確信しまして」


「おやおや、穂咲ちゃんにまつわることかな? そういう事ならお姉さん、何でも力になってあげるよ?」


「力に? ほんとですか? 内容も聞かずに?」


「そりゃそうよ~。道久君と私の仲じゃない! あ、でも、穂咲ちゃんは繊細だからね? あんまり過激なこと言うと、私ばかりじゃなくてカンナさんも店長も気絶しちゃうといけないから気を付けて!」


「はあ。言われて気付きましたけど、お二人ともこっちに耳を向けて停止してますね。……いえ、慌てて動き出さなくても。店長、パティ―焼くのに火力全開じゃダメです。あとカンナさん、そのフライパンに一斗缶から直で注いだら溢れます」


「あはは……。で? 道久君は、何をお願いしに来たのかな?」


「…………ほんとに、何でも力になって下さいます?」


「うんうん! この人生の終着駅から転職させられる以外の事ならなんでも!」


「ええと、晴花さん、以前ここが停電した時素敵な写真撮られたじゃないですか」


「うん、あれはよく撮れたねえ」


「そして今日の、モネの池の写真」


「気に入ってくれた? それじゃ、後でデータあげるね!」


「人の心を汲むことができる、そんな晴花さんを見て、俺は確信したんです!」


「え? え? え? 顔が怖いよ? 急になに?」


「晴花さん!」


「はい!」


「俺と……、付き合ってください!」



 そのまま世界の時間は停止して。

 でも、五感だけは正常に機能して。


 嗅覚が捉えた、パティ―の焦げる臭い。

 聴覚が捉えた、油がどぼどぼ零れる音。


 そして、視覚が捉えたものは。


 上気した頬に。

 瞳を潤ませた綺麗なお姉さんが。


 俺の願いに対して。

 真剣に返事をするべく。

 柔らかな唇を開く姿だったのでした。





「ひえええええええええええ!」





 その直後、ワンコ・バーガーは。

 小さなボヤを出しました。


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