死亡フラグが立ったお兄ちゃんを、絶対に引きこもらせる!

秋雨千尋

第1話 占い師の言うとおり 前編

 いつも通りの朝。制服のリボンを結んで、お母さんが作った朝食を食べる。

 こんがりバタートーストにハムエッグ。湯気の立つポタージュスープに牛乳と野菜ジュース付き。


「二階、持っていくね」


 冷めない内に食べて欲しい。トントンと階段を登っていく。一番奥の部屋の前にトレイを置いた。

 私には大好きなお兄ちゃんがいる。捨て犬に傘をあげたり、足を怪我したらおんぶして帰ってくれるような優しいお兄ちゃんだ。

 高校に馴染めず引きこもり生活をしているけど、いつかまた一緒にお出かけしたい。

 私に出来る事は何だろう?


八千代やちよホントお兄ちゃん大好きだよね」

「それならアレは?ほら駅ビルの占い師」

「百発百中なんだよね!」


 順番待ちをしている間、お兄ちゃんがどうしているのか気になった。まさか人生を悲観して自殺なんてしていないよね。

 悪い予感を首を振って払う。

 イヤホンを耳に付けてスマホの音源に耳を澄ます。はあ、癒される。


 当たると評判の占い師の部屋は、紫色のカーテンで覆われて薄暗かった。机の上に、大きな水晶とカードが置かれている。どうやら二重に占うようだ。

 噂の占い師は長い髪を揺らして「むむむ」と苦しそうな声を出した。


「大切な人に死が迫っています」

「うそっ!」

「助けたければ絶対に家から出してはいけません」


 そんな、引きこもりから脱却したら死んでしまうなんて。運命はどうしてこう残酷なの?こうなったら絶対に出さないわ!

 お兄ちゃんは私が守るんだから!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る