第5話 編む  編む 編む

夢だと思った一連の出来事、翌朝のライン通知を見て夢ではないことを悟った。

蜂谷さんと僕は付き合ってる。というか、結婚しようみたいなことまで話は進んでしまった。まあ僕はそういう年齢でもあるし、婚活するかと重い腰を上げてたとこでもある。だけど早すぎる。僕は恋さえしたことがないのに。これはなんなんだ。一抹の不安をライン通知がかき消す。蜂谷さんからだ。

「わたし、ずっと家族が作りたかったんです。夢が叶うの嬉しい」



戸惑いと裏腹に彼女への想いはどんどん増していて、人生も楽しい。仕事であんまりにやけてたのか、同僚から何か良いことでもあったかと聞かれる始末。ぼかして答えながらも家ではせっせと編み物を続けた。編み物は彼女にあってから格段にやる気がではじめた。寝る間も惜しんで編んでいる。全ては順調に進んでいる。


ひと月ほどして細蟹さん、なんか最近痩せてきてません?と同僚に聞かれた。「いえ、普段通り食事はとっていますし、むしろ気力がみなぎっているくらいですよ」普段より食事も美味しい。倍くらい食べられちゃうのに何を言っているんだか。恋って素晴らしい。世界はバラ色だ。体は軽い。そして編み物がしたい。猛烈に編み物がしたい。生まれてくるまだ見ぬ子供のために。子供のためにいろいろ編んであげないと。


彼女とはもう将来の子供についての話まではじめてしまった。今度は親に会わせなくては。気が早いって笑われるかな。

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