第二章-03 暗殺妹 ミカ・ミラー

 深夜。暗闇に乗じて、ミカは優の部屋のドアを開けた。

 電気の消えた部屋で、優はベッドに横になっているが、まだ起きているのはすぐに分かった。枕元から光と音が漏れているからだ。どうやらいつもやっているスマホゲームに夢中らしい。


「――兄さん」

「は? え? ミ、ミカ!? 何で!?」


 ミカを見た瞬間、優は驚愕の声を出した。

 こんな時間に優の部屋を訪れることも初めてだったし、ミカがこの日のために勉強し、準備した、エロコスチュームに身を包んでいるからだ。

 優は驚いた顔でミカの姿に釘づけである。効果てき面のようだ。

 トレバーから習ったが、男子というものは、そういうものらしい。お風呂上がりで薄着の自分をチラ見していることが何度もあった。一度、トレバーにそのことを密告したことがあるが、優はミカの魅力にメロメロになっているのだと笑いながら教えてくれた。

 そうなってしまえば、男は簡単に女に気を許してしまうと。

 そう、これこそが今回選んだ暗殺術。

 いわゆるハニートラップというやつだ。

 ミカは何も言わず、そのまま優のベッドに近づき、一緒の布団の中に潜り込んだ。


「お、おい、ミカ……!?」


 布団の中でミカは優の身体に胸を押し当てた。よく分からないが、これで男は簡単に堕とせると父からの暗殺の訓練で習った。

 それにしても、何という恐ろしい暗殺術だ。どうしてこんな凄い技術を父は自分に教えるのを渋ったのだろうか。

 ミカは胸を押し当てたまま、ゆっくりと優の首元に腕を回す。

 後は締め堕とすだけ。

 

 ――任務完了。

 ――ごめんなさい、兄さん。


「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


「えっ!?」


 しかし、次の瞬間、ミカはベッドから床に投げ出されていた。

 優に思いっきり身体を突き飛ばされてしまったからだ。

 ふいな出来事に、ミカは床に倒れたまま、呆然とする。予想外過ぎて、簡単に対応出来るはずの優の反撃に対し、身をかわすことも、受け身を取ることすら出来なかった。

 何故、私の攻撃(あんさつ)に気づいたの……!?

 こうして、ミカの立てた完璧な作戦(あんさつ)は、失敗に終わるのだった。


 ※

「兄さんはさっき私をベッドから突き飛ばした……。私が暗殺者だと気づいて……」


 ミカは真剣な声色で俺に言う。

 俺に向けて物騒なナイフを構えたまま。

 そうだ。

 ついさっき俺は、どエロい格好で俺のベッドに入って来たミカを、この手で力一杯思いっきり突き飛ばしてしまった。

 ミカは派手に床に投げ出された。やり過ぎたと思ったので謝ろうと近づくと、何とミカはナイフを取り出して俺に向けて来た。

 最初、俺に拒まれてキレてしまったヤンデレ妹かと思ったが、そうではなかった。

 ナイフを向けたままミカは、自分が暗殺者であることを俺に明かして来たのだ。


「女の子がエッチな格好で現れれば、男は確実に隙を作ると学んだ。それなら確実に殺せるはずだった。完璧な計画のはずだった。なのに兄さんは私を突き飛ばして身を守ってみせた。理由は、私が暗殺者だと気づいていたからなんでしょ?」

「………………」

「いつ私が暗殺者だと気づいたの、兄さん? ……やはり、チカンを倒したあの時?」


 ミカは、電車で加純が痴漢された時のことを言っているようだ。あの時のミカは、逃げ出した痴漢野郎を信じられない速さで捕まえて、投げ飛ばしてみせた。

 俺が見たこともない謎の護身術を使って。


「……あれはロシア滞在中に習ったマーシャルアーツの一種。暗殺で敵地に潜入した際の丸腰での戦闘を想定した戦闘技術。チカンに胸倉を掴まれ、反射的に使ってしまった。パパから習った技の一つを」


 俺にロシアで習ったと説明していたが、それ自体は本当だった。

 しかし、ただの護身術などではなかった。

 あれは、暗殺者としての技術(わざ)だったのである。


「私とパパは、暗殺者の仕事をするために世界中を渡り歩いて来た。パパは滞在先で仕事の合間を縫って、私を後継者にするために様々な訓練をしてくれたの。あの身のこなしや護身術もそのうちの成果」


 今思えば、駅のホームで痴漢を追いかけた時のミカの運動能力は異常だった。『ちょっと運動が得意な女の子』とかいうレベルではない。

 速すぎて残像さえ見えていた。

 ミカは、幼い頃から暗殺者の父、トレバーさんに鍛えられて来た。そのため、普通の女の子にはない高い身体能力を持っているのだ。

 普段の学校生活でそれを抑え込み、周りに隠していた理由。

 単に恥ずかしいからなんかではなかった。

 ミカは暗殺者であることを悟られないように、自分の高い能力を隠していたのだ。

 そしてだ。

 ミカは口にはしたことはないが、俺と同じように加純に強い恩義を感じているのだ。これまでの学校生活を通し、ミカにとっても加純は大切な友達となっていたのだ。

 加純のために、隠していた力を大衆の前で解き放ってしまうほどに。


「……それとも、みんなで映画を観に行った時? 私は暗殺者としての訓練で、パパから武器の扱いを徹底的に叩き込まれて来た。あらゆる状況下で確実に対象を暗殺出来るようになるために。そして間違った武器の知識を覚えないように徹底的に頭に叩き込んだ。だから、フィクションとはいえ、つい間違いを指摘してしまった……」


 映画の感想を訊かれた時、ミカは映画に登場した銃や兵器類について異常に詳しい解説をしていた。それを俺は、ミカが海外で、それも、ロシアで生活をしていたから自然と詳しくなったのだと思っていた。

 しかし、実際の理由は、暗殺者として武器の扱いを習って来たからだったのだ。


「迂闊だったわ……。上手く誤魔化せたと思っていたけど、あの日、私の秘密を知った兄さんは、私が暗殺者だと気づいてしまっていたのね……」


 ミカは悔しそうに言った。

 その表情と語調からしても、強い後悔を感じさせる。出会ってからの今まで、家族になって数ヶ月、俺の前でずっと隠して来た大事な秘密を知られてしまったからだ。


「いつも最も近くにいる兄さんには、特に警戒を怠らないようにして来た……。ずっとずっと、頑張って隠して来たのに……。気づかれたらどうしようって、いつも不安でいたのに……。今までの苦労は何だったの……。あんなミスをしてしまい、結局、バレてしまうなんて……」


 出会ったばかりの頃のミカは、ずっと俺を警戒していた。それを俺は、年頃のミカは会ったばかりの同い年の男の子に対して、抵抗感を持っているからだと思っていた。

 だが、そうではなかったらしい。

 全ては自分が暗殺者であることを隠すためだったのだ。

 何だか俺は、自分の命を狙っているはずのミカに対して、申し訳ない気持ちになっていた。

 ミカ。

 お前、俺の知らないところで、色々と苦労していたんだな……。

 大変だったんだな……。頑張ったんだな……。

 だがな、ミカ。

 そんなことを知ったところでな。

 お前が暗殺者だなんて分かるわけがないだろ!

 確かにちょっと驚いたけど、実は妹が裏で暗殺者をやっていて、兄である俺を殺そうとしているなんて、1ミリも思うわけないじゃないか!


「……いえ、それとも、もしかして、もっと前から気づいていたの? そう言えば、初めてレストランで会った日、兄さんは何故か私にずっと視線を送っていた。理由が分からなかったけど、最初から私のことを怪しんでいたからだったの?」


 いや、可愛いからつい見ちゃってただけだし。ていうか、気づいてたのかよ。恥ずかし。


「頼んでもいないのに、いつもいつも私の側にいようとした。理由が分からなかったけど、あれは私を監視するためだったの?」


 いや、可愛い妹のことが心配だから側にいようとしただけだし。お世話をしてあげようとしただけだし。


「教えて兄さん。どの段階で私の正体に気づいたの? 私と出会った最初から? やっぱりチカンを倒したあの日? 私が依頼を請けてからのこの3日の間? 私がベッドに入った時? まさか、殺そうとした瞬間、殺気が出てしまっていたの? 完全に消していたはずなのに……。それとも、あまりエッチでなかったから油断させられなかったとか……?」


 いや、それは断じて違うぞ、ミカ。さっきのお前は十分エロかった。今だってエロいし、目の毒だからさっさと着替えて欲しいものだ。

 お前のその魅力があれば、確実に男は堕ちる。ソッチ系の人だとか、よほど特殊な性癖をしていない限りは。

 そして、そうなれば暗殺など造作もないだろう。少なくとも、俺のような女の子に免疫のない男子なら、気づかないうちにそのまま天国へと旅立っていただろう。

 お前なら俺を堕とすことなんて容易いんだ。そこは間違いなく自信を持っていい。

 だがな。

『俺だからこそ』お前は俺を色仕掛けで殺すことが出来なかったのだ。

 何故なら俺は。

 お前の兄だからだ。


「……あのな、ミカ。お前はとんでもない勘違いをしている。さっきも言ったが、俺はお前の正体になんて気づいていなかった。お前が俺を殺そうとしていると思ったから俺はさっきお前をベッドから突き飛ばしたわけじゃないんだ」

「じゃあどうして?」


 ミカは純粋無垢な瞳で俺に尋ねて来る。


「……義理とはいえ、兄妹同士でエロいことをしてはいけない。そう思ったから突き飛ばしたんだよ」


 ミカが俺のベッドに入って来た時は、本当に驚いた。あの時のミカは「一人で寝るのが怖いの……」とかいう可愛いやつではなく、完全にアダルティな雰囲気を醸し出していた。

 しかも、その時の俺は、ミカが俺を殺そうとして付きまとっているなんて思いもしなかったし、ミカが俺に惚れてしまったと勘違いしている状況だった。

 これは……。

 これは、夜這いだ!

 だから、俺は直感的にそう判断した。

 その瞬間、咄嗟に俺は妹をこの手で突き飛ばしていた。

 もしミカが妹でなければ、俺はあのままこいつを抱こうとしてしまっただろう。異性として見れば、ミカは俺にとってのドストライクだからである。

 だが、俺は自分が『男』であることよりも『兄』であることを優先した。そのことが結果的に俺の身を守ることに繋がったのだ。

 そう、つまり。

 スケベ心を優先していたら、俺は今頃この世にいなかったことになる……。

 そのことに気づいた途端、冷や汗がドッと出て来た。


「……どういうこと? どうして兄妹同士がエロいことをしてはダメなの……?」


 ミカはというと、俺の説明が全く理解出来ない様子である。相変わらず幼気な目で俺を見つめている。


「ああ、えっと、なんつーかな……。家族ってのはそういうものなんだよ」


 俺は頭を掻きながら言う。ちゃんと説明しろと言われると結構難しいなと思った。


「分からない……。兄さんは時々分からないことを言う……」


 そういうのは説明されなくても、何となく理解出来そうなものだが……。

 こいつには所々常識が欠落しているようである。ミカは物心付く頃から戦闘者として育てられて来た。そのための弊害なのだろう。

 ならば、今後も兄として、ミカには色々と教えて行かなければならないな。日本の常識だけでなく、広く一般的な常識まで。

 そのためにはまず、ミカを説得し、たった今、手に持っている物騒なナイフを納めてもらわなければならない。ここで俺が死んでしまえば、兄だとか妹だとか関係なくなる。

 偶然ではあるが、俺は知らず知らずのうちに、ミカの暗殺から身を守っていた。そしてミカは、俺が暗殺者であると見抜いたから身を守れたと思い込み、勝手に身の上話を聞かせてくれた。

 この数奇な巡り会わせに感謝しなければならない。

 今ならまだこいつを止められる。


「……まあ、ともかくだ、ミカ。もうこんなことはやめろ。こうして俺への暗殺は失敗したわけだしな」

「失敗……?」

「ああ、そうだ。どういう経緯にしろ、お前は俺に攻撃をかわされ、正体もバレたんだから、完全に失敗だろ? 安心しろ。俺はお前が暗殺者だったことも、俺を殺そうとしていたことも口外するつもりはない。ここは大人しく引き下がってくれないかな? 全部水に流してこれまで通りの関係に戻ろう。兄と妹の関係に」


 俺はミカに優しく言い聞かせるように言った。

 ミカが俺を殺そうとしていたのはもちろんショックだったが、俺は別にミカに怒っていたりはしない。ミカは俺を憎くて殺そうとしたわけではないし、ミカは暗殺者として育てられ、一般常識に欠けている。それ自体、ミカの責任ではないと思う。

 この先、兄である俺がしっかりと更生させてやればいいだけのこと。

 俺はそう思っているのだ。


「……いいえ、何を言っているの、兄さん。私は失敗なんてしていない。これから私は兄さんをこのナイフで殺す。そうすれば暗殺は成功よ」


 は?

 おい、待てよ、ミカ。

 お前、何で俺に向けてまたナイフを構えてるんだよ。


「どうして私がペラペラと自分の秘密を話したと思っているの? どうせ殺して口を塞ぐからよ。暗殺はいくつものプランを用意するもの。第一のプランが上手くいかなければ、第二のプランに移行するだけ。いい? 暗殺の失敗があるとすれば、たった一つなの。それは『途中でやめる』こと。たとえ気づかれたとしても、対象を殺し、目撃者や情報を知る者全てを消せば、暗殺は達成されるの」


 その表情はというと、冷酷に相手の命を奪おうという暗殺者の眼。

 あ、やばい。

 こいつ、本気だ。


「ま、待て、待て! やめろ! やめるんだ、ミカ!」

「ターゲットの命乞いなんて聞かない。たとえ一度は、兄と妹という関係だったとしても、それは同じ。ターゲットに容赦する暗殺者なんていない」

「聞けって! そりゃあ俺だってもちろん殺されたくはないよ!? こんなところで死にたくないし、まだ生きてやりたいことは沢山ある! けどな。それ以上に、俺は妹のお前が人殺しになんてなって欲しくないんだよ!」

「…………どういうこと?」

「お前はこれが初めての暗殺だって言ってたよな! ていうことは、まだ誰も殺していないんだろ!? 今ならまだ後戻り出来る! 人殺しなんてやめろ! これまで通り、普通の女子高生として生きればいいだろ! 俺はお前のその手を血で汚して欲しくないんだよ!」


 決して命が惜しいから口から出まかせを並べているわけではない。

 これは俺の心からの本音だ。

 自分の命が惜しい以上に、俺は大事な妹を人殺しにしたくなかったのだ。


「……私は人殺しなんかじゃない。暗殺者よ」

「一緒だろうが!」

「いいえ。暗殺者はただの人殺しじゃない。この世に必要なもの。パパが殺らなければ、より多くの人命が失われていたケースは山ほどあった。暗殺者は必要悪なの」

「そんなものは結果論だ! どんな理由があろうが、人殺しは人殺しだ! 人が人を殺してはいけないんだよ! お前はそんなことすら分からないのかよ!」


 俺は思わず熱くなってしまっていた。

 だが、そんな俺とは対照的に、ミカは冷めた目つきのままだ。


「ダメだよ、兄さん。いくら綺麗ごとを並べられようとも、私は止まらない。だって私は、パパからこの生き方しか習っていないもの。ミカ・ミラーは、父、トレバー・ミラーと同じ、誇り高い暗殺者なのよ。請けた任務は必ず最後まで――やり遂げる」

「やめ……っ!」


 結局、ミカは俺の制止を聞かず、飛びかかって来た。

 俺に向けて、ナイフを突き立てて。

 嘘だろ……?

 俺、ここで死ぬのかよ。

 大好きな妹に刺されて。

 そんな最期、悲しすぎるだろ……。

 ……と、思いきや。

 ミカの持つナイフの刃は、俺の腹に到達する前に止まっていた。


「――兄妹喧嘩にしてはおいたが過ぎるんじゃあないか、ミカ」


 ミカの手は、別の手によって止められていたからだ。

 大きな逞しい腕。

 一緒に暮らし始めてから、毎日見て来た腕。


「あ、あなたは……!」


 俺たちの間に割って入ったのは。

 トレバーさんだった。


「パパ! どうして止めるの!?」

「何を言っているんだミカ。家族が家族を殺そうとしているのを止めない家族はいないだろ」


 そう言ってトレバーさんは、ミカからナイフを取り上げてしまった。

 部屋に入って来る音も、近づいて来る気配も感じなかった。ミカからナイフを奪う手際の良さからしても、この人が『一流』であることは一目瞭然だった。

 それにしても、どういうことだ。

 何でトレバーさんは俺を助けたんだ……?


「……優。まさかお前、ミカがあんまり魅力的だからって我慢出来ずに手を出したのか? それで怒ったミカにこいつで刺されかけたってところか?」


 トレバーさんはミカのエロい格好と、俺とを見比べながら言う。


「え!? い、いやいや! 違います! 違いますってば! 俺は何にもしてませんって!」


 大慌てで弁明しようとする俺を見ながら、トレバーさんは笑い出す。


「ハハッ! 冗談だよ、優。話は途中から廊下で聞かせてもらっていた。部屋で寝ていたら、お前たちが言い争う声が聞こえて来たものでね。母さんはぐっすり寝ているが、オレの地獄耳にはしっかりと届いて来たぞ」

「だったら、兄さんが今回のターゲットだってことも知っているんでしょ!?」

 ミカはトレバーさんからナイフを取り返そうとするのだが、トレバーさんはひょいひょいと避けて赤子を扱うがごとく簡単にミカをあしらっている。

「ど、どうして邪魔するの、パパ!? 暗殺者として、ターゲットの兄さんを殺す! パパだって、それが望みなんでしょ!?」

「……やれやれ。そんなこと、オレは望んでいないのだがね。どこの世界に息子が殺されるのを望む父親がいるんだ?」


 俺をミカから庇うようにしてトレバーさんは立つ。頼りがいのある背中がいつも以上に大きく見えた。どうやら、トレバーさんは今回の俺の暗殺には噛んでおらず、ミカが一人で請けた依頼だったようだ。


「それに、言ったはずだぞ。オレは暗殺稼業を辞めたと。組織や暗殺とは金輪際関わるつもりもない」


 それどころか、暗殺者の仕事自体、もう廃業しているようである。


「まさか、組織との通信を一人で続けていたなんてな。いつも通り、完璧に通信の履歴を消していて気づけなかったぞ。さすがオレの娘だとそこは褒めておこう。だがなあ、ミカ。何故、勝手にオレの代わりに依頼を請けたりなんかしたんだ?」

 状況が呑み込めない俺の目の前で、トレバーさんはミカを問い詰め始める。


「……だって、私に継がせたんでしょ……? 暗殺者の仕事を……」

「ほうほう、なるほど。オレに暗殺者の仕事を継がされたから、今回の依頼を代わりに請けたと。ふーむ、なるほど、なるほど。……そんなことオレがいつ言ったんだ?」

「え?」

「そんなこと一度でも口にしたか? オレが暗殺者を辞めるから、ミカが代わりに暗殺者の仕事をやってくれ、だなんて」


 ミカは腕を組み、しばらく考える。


「…………口にはしていない」

「だろ? 全くしょうがない子だな、ミカは」


 トレバーさんはミカの頭をクシャクシャと撫でた。

 どういう流れがあったか俺には詳しく分からないが、ミカは暗殺者を辞めたトレバーさんにその仕事を引き継がされたと思い込んで、今回の依頼を請けてしまった、ということのようである。


「この際だからはっきり言っておく。オレは今後もお前に暗殺者の仕事を継がせるつもりなんてない。だから日本で普通の女子高生として生きてもらうと言ったんだぞ」


 トレバーさんはミカの頭を撫でながら言う。体格差もあって、今のミカは小さな子どもにさえ見えた。

 ……だが、服装は依然、子どもには見せられないアダルトなものであった。


「で、でも、それは暗殺者の訓練のためなんじゃ……?」

「そんなことオレがいつ言った?」

「………………」


 ミカは答えられず、シュンとしている。

 話を聞いている限り、ミカは何やら勘違いをして先走ってしまっていたようだ。さっきの俺への勘違いといい、ミカは思い込むとそのまま突っ走ってしまう性格のようである。

 トレバーさんは着ていた自分のガウンを脱ぎ、落ち込んで俯いているミカに紳士的に羽織らせた。そのことでようやくエロい格好からミカが解き放たれ、俺の悩みの種の一つが消えたのだった。


「……でも、どうして? パパはずっと私を暗殺者として育ててくれたんでしょ?」


 トレバーさんのガウンで身体を隠しながら、ミカは尋ねる。


「私を訓練して来たのは、暗殺者のパパの後を継がせるためだったんじゃないの?」

「ああ。そうだ。お前が小さな時からずっと、オレはお前を後継者にするために育てて来た。お前が大事な娘だから、オレと同じ道に進めようとした。……だがな、お前がオレの大事な娘だからこそ、それを辞めることにしたんだ」

「何それ……。全然、意味が分からない……」

「暗殺というのはな、結局のところ、どこまで行っても『人殺し』なんだよ。どんなに大義を掲げようとも、どんなにそれで多くの人々が救われようとも、人殺しは人殺しなんだ。そう。さっき、優が言っていたようにな」


 そう言って、トレバーさんは俺に視線を送る。

 俺は気まずくなった。さっきの俺の話をトレバーさんは廊下で聞いていたのだ。ずっと暗殺者をして来たトレバーさんを否定するような物言いをしてしまったが、特に怒ってはいないようだ。

 トレバーさんは、ミカに向けて語りを続ける。


「人を殺めるっていう行為はな、『擦り減らす』ってことなんだ。殺した相手や、殺した相手がいた世界や、自分自身さえもな。擦り減らし、擦り減らし、擦り減らし続ける。――オレが殺らなくても、誰かが殺る。だったら、オレが誰かの代わりに擦り減らせ続ければいい――。そんな安っぽい正義感で、オレは何とかずっと暗殺者を続けて来られた。だが、擦り減らすってことは、やがて、限界が来るってことなんだ」

「パパにも限界が来たってこと……?」

「…………ああ。成長して行くお前を見ているうちにな」


 トレバーさんは自分の後継者にするために、娘のミカを暗殺者として育てて来た。しかし、ミカと一緒の時間を長く過ごせば過ごすほど、愛おしくなり、共に普通の生活を送りたいと考えを変えるようになって行ったのだ。

 自分の身を削り、自分を犠牲にするということ。

 それはつまり、娘のミカも犠牲にしてしまうということ。

 もしも、暗殺中にヘマをして自分が死ぬようなことがあれば、ミカは傷つく。自分がいなくなり、ミカが自分の代わりになれば、ミカが次に身を削ることになる。

 そのことに気づいたトレバーさんは、自らも暗殺稼業から足を洗い、ミカにも暗殺を――人殺しをさせないことを決めたと言うのだ。

 娘に人殺しではなく、普通の少女としての人生を謳歌して欲しいと願うようになったのだ。


「だから、もうお前は暗殺なんてしなくてもいいし、暗殺のことなんて考えなくてもいい。普通の女の子としての幸せを掴むんだ。それだけが今のパパの望みなんだ」


 トレバーさんは優しくミカに言う。

 優しく頭を撫でながら。

 しかし。


「なにそれ……。そんなの……。そんなの勝手過ぎるよ……!」

 ミカはトレバーさんを拒絶してしまった。手を振り払い、怒号をぶつけることで。


「普通の女の子の幸せ!? そんなの分からないよ! パパは今まで私に暗殺の仕方しか教えてこなかった! だから、私は暗殺者としての生き方しか知らないし、何も分からないんだよ!」


 トレバーさんに怒りをぶつけるミカは、いつの間にか、悲しみの涙を浮かべていた。ポロポロと雫が頬を伝う。


「私は何も知らずに生きて来た……。家族とか、友達とか、学校とか、恋愛とか、普通の女の子の生き方とか、そんなこと一つも知らない……! そんなの何も習ってないよ! それなのに、今更、普通の女の子になれ!? そんなの勝手過ぎるよ!」

「……ミカ……」

「私がどんな気持ちでこの依頼を請けたと思うの!? 私がどんな気持ちでパパの後を継ごうとしたと思うの!? 私が……! 私が……!」


 ミカの泣き顔を見て、トレバーさんは言葉を失っていた。

 泣き顔。

 俺にとっては初めて見るミカの表情だった。

 そして、これほどまでに感情を露わにさせているミカを、俺は初めて見た。

 今までの生き方や、信じて来たものを、あっさりと否定されてしまったからだろう。

 暗殺者として生きること。憧れの父、トレバーさんの仕事を継ぐこと。

 それはトレバーさんが与えてくれた夢だったはずだ。

 だが、その夢を与えてくれた本人に、自分の夢を否定されてしまった。

 もちろん、俺もトレバーさんの考えには賛成している。ミカには暗殺者をやらせない。これからは普通の女の子として生きて行ってもらう。

 しかしだ。『今までのミカ』を否定することは、あまりにも残酷な仕打ちでもあった。

 ミカは暗殺者の生き方しかトレバーさんに教えられて来なかった。暗殺者として生きることが正しい生き方だと心の底から信じていた。

 それが今日この瞬間、全部、壊されてしまったのだ。

 しかも、大好きな実の父親の手によって。

 そのことには、トレバーさんも気づいているのだろう。ミカの嘆きの理由も分かっているのだろう。だからこそ、目の前で泣きじゃくる娘に掛けるべき言葉が浮かばないのだ。

 ――今、自分がミカに何を言ったところで何も届かない。

 トレバーさんはきっとそう思っているのだろう。

 俺の部屋を沈黙が支配する。

 トレバーさんも、ミカも、何も言葉を発せずにいる。


「――知らねえなら、これから習えばいいだけだろ」

 だから。


 俺がその沈黙を打ち破ってやった。


「優……?」


 トレバーさんは驚いた表情で俺のことを見ている。


「知らないなら、一から学んで行けばいいだけじゃねえか。トレバーさんが一からちゃんと教えてくれるよ。――もちろん、俺だってな」

「兄……さん……?」


 ミカも涙目で俺のことを見ている。


「家族のことも、友達のことも、学校のことも、全部、俺が一から教えてやるよ。……恋愛は、すまん。ちょっとお兄ちゃんも分からない。けど、俺の分かる範囲なら全部、俺が教えてやるからさ」

 俺の言葉に、ミカは首を横に振る。

「……無理だよ……。いくら教わったって、私は今までずっと違う世界で生きて来た……。私は兄さんとは違う世界の人間……。教わったってそんなの上手く出来ないよ……」

「おいおい、何言ってるんだよ、ミカ。つーか、お前、もうちゃんと出来てるじゃねえか。普通の女の子」

「…………え?」

「その証拠に、ちゃんと友達、作れただろ? 友達と遊びに行ったり、みんなと学校の授業受けたり、お昼のお弁当食べたり、今までも普通に女子高生出来てたじゃねえか」

「……あれは、暗殺者として身分を偽るための演技で…………」

「それじゃあ、クラスのみんなと楽しそうにしてたのも全部演技だったって言うのか? 加純を助けた時のあの気持ちも嘘だったのか?」

「…………っ」


 嘘なわけないよな、ミカ。

 だってミカは、友達の加純のために、ずっと隠して来た力を大勢の人が見ている前で使ってみせた。

 何の思い入れもないのなら、そんなことをするわけがないじゃないか。お前は本気で友達が大事だし、友達と過ごす時間を本気で楽しんでいたはずだぞ。


「…………………………」


 ミカは俺の言葉に耳を傾けながら、涙を拭っている。


「前に言ったことあるよな? 難しく考えるな。気楽にまずはやってみろよ。お前が思うように生きてみろよ。もしもお前が間違ったことをしてたら俺が叱ってやるからさ。それで、もしもお前が正しいことをしたら俺が全力で褒めてやるよ。だから、安心してお前の思う普通の女の子をやってみろ。分からないなら、ちょっとずつ覚えて行けよ。分からないことがあったら、何でも訊け。俺が教えてやるからさ」


「…………分からない。私には兄さんの言うことが分からない」


 ミカは涙声で言う。


「何がだ? 何が分からないんだ? 今、言ったばかりだぞ。分からないことがあったら、俺が教えてやるって」

「……兄さんは、どうして自分を殺そうとしていた相手にそんなことが言えるの? どうしてそんな優しい言葉を掛けられるの?」


 俺はその質問に対し、考えるまでもなく答える。


「そんなの、お前が妹で、俺がお前の兄貴だからに決まってんだろうが」

 俺は笑いながらそう言ってやった。

 ミカ、お前は知らないかもしれないけどな、俺は誓ったんだよ。

 俺がお前と初めて会った時。

 俺に初めて妹が出来た時。

 どんなことがあろうとも、兄として妹のお前を幸せにしてやるって。


「…………やっぱりだ。やっぱり兄さんは分からないことを言う」

 ミカは困った顔をして言う。

 けれど、その顔はもう泣き顔ではなかった。ちょっとは俺の想いが伝わったのだろうか。嗚咽も抑えて、ようやく落ち着いたようだ。


「……優。……ミカ」


 それを見計らったように、トレバーさんは、俺とミカの肩にそれぞれ手を置いた。


「優、ありがとう。お前はオレの自慢の息子だ。そして、いつの間にかミカの立派なお兄ちゃんになっていたようだな」

 そう言って俺の頭を撫でる。温かくて大きな手だった。思えば、こうやって俺がトレバーさんに頭を撫でられるのは初めてのことだった。

 照れ臭かったが、悪い気はしなかった。『父親』に頭を撫でられるってのは。

 トレバーさんは、今度はミカの頭を撫でる。

「……そして、ミカ。すまなかった。お前をこんなにも苦しめてしまうとは」

「ううん。私の方こそごめんなさい、パパ。勝手なことをしてしまって。本当は私も自分が変わって行くのが分かっていた。けど、すぐには受けいれられなかったの。今までの自分を否定することが。……ねえ、パパ。やっぱり私は、もう暗殺者を辞めなければならないの?」


 まだ未練があるのだろうか、ミカはトレバーさんにそう尋ねる。


「……ミカ。さっき、お前のナイフを止めた時、オレにはよく分かったんだ。お前の刃には迷いがあった。お前はあのまま優を刺すつもりなんてなかったんだ。オレが止めていなくても、途中でその手を止めていただろう。お前にはその覚悟はなかったんだ。オレが何をしなくても、お前の暗殺は失敗していたんだよ」

 ミカは否定しようとしない。トレバーさんの指摘は正しいということなのだろう。

 それじゃあミカは、俺を本気で殺そうとはしていなかったのか……。


「オレから初めての実戦の評価をしてやる。0点だ。お前は暗殺者としては失格だ。家族とはいえ、ターゲットを殺すことに躊躇したんだからな。ミカ。お前は暗殺者にはなれない。いや、ならなくていい。なるな、ミカ」

 トレバーさんの口調は厳しいものだったが、きっとトレバーさんなりの優しさなのだろう。残っているミカの未練を消し、裏の世界から完全に解き放つための。

「……じゃあ、パパ。本当に私はもう、暗殺者にならなくていいの? パパの後を継がなくてもいいの?」

「ああ。そうだ。お前は暗殺者なんかにならなくていいんだ。誰も殺さなくていいんだ」

「もう兄さんを……。殺さなくていいの…………?」

「ああ。そうだ。お前は優を殺さなくていいんだ」


 その瞬間。

 ミカはまた大声で泣き出した。

 小さな子どものように人目を気にせず、泣きじゃくった。

 でも、今度の涙の理由はさっきとは違った。悲しいから泣いているのではなかった。

 ――本当に良かった。

 ――兄さんを殺さなくて良かった。

 ミカはそう言って泣いていた。

 安堵し、ずっと抑え込んでいた感情を爆発させているようだった。

 ……ああ、そうか。

 お前、そんなに悩んでくれてたのか。

 俺を殺さなくちゃいけないことに、そんなに苦しんでくれてたのか。

 ありがとうな、ミカ。

 ずっと、心配だったけど、俺、ちゃんとお前の『兄さん』になれてたんだな――。


 ※

「おはよう、加賀美くん、ミカちゃん」


 翌朝、そこにあったのは、昨日までと変わらない『日常』の光景(シーン)だった。

 俺とミカの兄妹は、友人の加純と一緒に学校へと向かって行く。他愛のない世間話を交わしながら。

 そう、俺たちは、何事もなかったかのように普段の生活へと戻ったのだ。

『暗殺者』と『ターゲット』ではない。

『兄』と『妹』の関係へと戻ったのだ。

 俺にとって、ミカやトレバーさんの経歴なんてどうでもいいし、大事なのはこれからだと思っている。たとえ、一時的に暗殺者とそのターゲットという関係だったとしても、そんなこと俺にはどうだっていいんだ。

 俺が望んでいるのは、以前までと変わらず、ミカやトレバーさんたちと家族として一緒に暮らしていけること。

 大好きな妹との日々を過ごせること。

 ひとまずは、その望み通りとなったわけだ。

 ただ、以前とは変わってしまったこともある――。


「……あ、あのさあ」

「なに、カスミ?」

「二人、ますます距離が近くなってないかな……?」


 加純は、俺とミカの二人がべったりとくっ付いているのを見て、戸惑っている。

 ここ3日もこの調子だったが、より一層、ベタベタしているのだ。まるで人目を気にせずいちゃつくバカップルのように。

 俺は加純から軽蔑の視線を送られていることに気づいた。

 違うんだよ、加純。これは昨日までと同じで、俺が強要しているわけじゃなく、ミカが勝手にやっていることなんだ。

 ただし、昨日までは俺を殺すためにやっていたことだが、それとは真逆の理由でだが。

 昨晩、ミカは言っていた。


『これからは、私の力は兄さんを殺すための力じゃない。兄さんを守るための力になるから』


 ミカが依頼(あんさつ)を降りたところで、めでたしめでだし、というわけにはいかない。

 俺が組織に命を狙われていることに変わりはないのだ。

 俺は組織の重大な機密を知る穴熊(バジャー)という男と接触してしまった。その事実は覆せない。この先も組織から命を受けた別の暗殺者に狙われることになるだろう。身元を隠しているミカやトレバーさんが組織から粛清される心配はないが、俺は顔も名前も住所もモロバレしてしまっている。

『その時は、私が守る』

 ミカは俺に力強く言って来た。

 一流の暗殺者であったトレバーさんやミカは、暗殺についてを知り尽くしている。つまり、あらゆる暗殺に対しての対抗策も知っている。

 それはすなわち、暗殺に対しての最強のボディーガードになれるということだ。

 とはいえ、トレバーさんが学校にまで付いて来ることは出来ない。だからミカが、組織の手の者による襲撃に備え、こうして俺を警護してくれているのだ。

 幸い俺たちは学校が同じでクラスも同じ。いつでも一緒にいられる。ミカが俺の側にいても周りから不自然に思われることもない。

 しかし、それにしたって、ミカはやることが極端である……。


「兄さん、私から離れないで。もっと近くに寄ってよ」


 家を出てからのずっと、ミカはこの調子なのだ。俺にギュッと肩を寄せて、決して離れようとしない。

 歩くのに窮屈だし、何より恥ずかしかった。可愛いミカに寄り添われてドキドキするし、周りから目立ってしょうがないのだ。


「あ、あのさ……。な、仲が良いのはいいけど……。さすがに今日は二人とも引っ付き過ぎじゃないかな……?」


 加純は顔を赤くしながら、まるで恋人同士のように並んで歩く俺たちに苦言を呈している。


「大丈夫、カスミ。気にしないで」

「いや、気になるってば!」


 ミカが俺を思ってやっていることだし、その気持ちを無下に出来ない俺は、今の状況を受け入れるしかなかった。事情を説明するわけにもいかないし、俺は加純に苦笑いで応えることしか出来ない。

 それにしてもだ。

 妹が出来た時、俺は兄として、妹をどんなことからでも守ってやると誓っていた。

 それなのにまさか、こうして妹に守られる立場になるとはな。

 隣にくっ付くミカと、顔を真っ赤にしている加純を見ながら、俺は何とも複雑な思いを抱くのだった。


 ※

 月光が映える美しい夜空。

 ビルの屋上。黒いコートをなびかせる細いシルエットがあった。

 その人物は、一人、大都会の夜景を見下ろしながら耳にスマホを当てている。誰かと通話しているようだ。


「――そう。伝説の暗殺者、ファントムは結局動かなかったのね」


 スマホの向こうの話し相手に残念そうに言う。


「ファントムの手腕、是非、見てみたかったけど、しょうがないわね。……ええ、大丈夫よ。裏切り者の穴熊(バジャー)の尻ぬぐいは、私たちですればいいだけだから」


 口元は笑っている。まるでこれから始まる楽しいゲームに期待するかのように。


「貂熊(ウルヴァリン)と浣熊(ラクーン)の私たちでね。ターゲットは必ず始末するわ」


 もう片方の手には一枚の写真。

 そこに写る少年の名前は。


 加賀美 優。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る