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Episode.2-3」への応援コメント


  • 編集済

     こんにちは。
     ティアナ姫とよく似た女性が新登場、「眼」を返せと謎の言葉を口にしながら主人公に襲い掛かってくるというまさかの展開で、楽しく読ませていただいております。
     ただ、このエピソードを読んでどうにも気になることがあったので、改善点と修正案を列挙する前に、そこについてだけ先に言及させていただきたいと思います。

     それは、「女を守るのは、男の役目だ」という台詞が、主人公の人間性を反映させたものとしてどうなのか、ということです。
     これより前の「守ってみせます。あなたのことも。この場にいるあの人(女)のことも。そしてこの国に生きる全ての人々のことも。俺たちが……守る!」という台詞も、「人」と書いて「女」と読ませているように見えて引っかかるのですが、これは慣習的な表現かつ読者への配慮として「女」と書いて「ひと」とルビを振れば済む話だから、まあ良いのです。
     ただ、「女を守るのは、男の役目だ」という台詞は、このエピソードまでを読んだ限りでは、おそらく本作で描写したい主人公像と違うのではないかと思います。

     王国がどうのこうのと言っている(=身分制度がある)世界ですし、現代日本でもこの手の台詞を言われて喜ぶ女性はいるでしょうから、「男がどうとか女がどうとかのジェンダー観は古い」みたいなことは言いません。
     ただ、どうしてこの場面で、主人公が男で、ティアナ姫のそっくりさんは女だ、ということを強調する言い方を選ぶのかが分かりません。

     もちろん、似たような台詞でおそらく何の違和感も抱かせないものも、たくさんあると思います。「子を守るのは親の役目だ」、「生徒を守るのは教師の役目だ」、「部下を守るのは上司の役目だ」、「市民を守るのは警察の役目だ」などです。ただ、ここで注意しておきたいことが2点あります。
     1つは、ここで列挙した親、教師、上司、警察はどれも、言葉の定義の時点で、子、生徒、部下、市民より「守る」能力が上だとされている(上であるのが当然だと期待されている)という点です。子は傷つきやすいが親は心が強い、生徒は無知だが教師は世間をよく分かっている、部下には仕事のノウハウがないが上司にはそれがある、市民は無力だが警察は犯罪者に対抗できる、といった具合です。
     注意すべきもう1つのポイントは、ここで挙げた例はどれも、生まれながらの属性で関係が固定されている類の台詞ではない、つまり、本人の意志と努力があればこれらの台詞を言われる側から言う側に代わることもあり得る、ということです。「子を守るのは親の役目だ」の場合、言われた当人(子)が親になってから、自分の子(いわば孫)に対して同じ台詞を言うことも考えられて、元々の発言者である親はそれを見越してこの台詞を言っている可能性があります。つまり、「あなたは私の子なんだから、親である私が守るのは当然だ」と言いつつ、「あなたも親になったら自分の子を精一杯守りなさい」というメッセージを送っているとも解釈できるわけです。「生徒を守るのは教師の役目だ」という台詞では、生徒が必ずしも教師という職業に就くことは想定されていませんが、子供と大人の関係として、「困ったときは大人を頼れ」と言いつつ、「あなたも将来は子供を守れる大人になりなさい」というメッセージを送ってもいるわけです。「部下を守るのは上司の役目だ」も同じ構図ですね。「市民を守るのは警察の役目だ」はこれらの例とは少し違うのですが、「市民」が警察官の1人になる可能性は排除されていませんし、警察は一時的な役職なので、転職や退職などで警察官でなくなれば市民を守る役目から降りることになりますし、勤務中でなければ市民を守るという役割から解放されるということも考えられます。

     で、この2つのポイントから問題の「女を守るのは、男の役目だ」を考えますと、「女はか弱いが、男は強い(だから男は女より「守る」という能力の点で上だ)」という話になる一方、上記の例と違って、その関係は生まれながらの属性によって固定されています。「お前は女なんだから男である俺を頼れ」という意味にはなっても、「お前も将来男になったときは女を守れよ」というメッセージを読み取ることはできません。このとき何が起こるかと言うと、ティアナ姫のそっくりさんが(見た目が)女性であるという理由だけで、「ずっと(男性より)弱いままの存在」と定義されてしまうことになります。
     これだけだとイメージしづらいかもしれませんが、想像してみてください。慧さんが町を歩いていてアクシデントに遭遇したとして、それを助けてくれたアメリカ人が「俺は母国では警察官でね、人を助けるのが仕事なのさ」と言ってきたら素直に「ありがとう」と言えるかもしれませんが、そうではなく「黄色人種を助けるくらい、白人なんだから当たり前さ」と言ってきたら、カチンとくると思います。「守る」能力の点で誰かが自分より上だとしても、それを生まれながらの属性(性別や人種など)に絡められると、固定的な上下関係だけが残って、言われた側に不快感を与えかねないニュアンスになってしまいます。「なんで急に人種の話をした?」となるわけです。

     現実社会で男性と女性の能力の差がどうだという話は置いておきますが、少なくとも本作のこの場面では、ティアナ姫のそっくりさんは主人公以上の戦闘力を見せていますし、控えめに言っても彼女に本来の力があれば主人公といい勝負をして魔獣も軽くあしらえるはずでした。男が女を守る(女だけでは立ち行かないことでも男がいれば何とかなる)という図式は、本作の世界、そして主人公とそっくりさんの関係では成り立っていません。少なくとも本作の世界では、男だから女より強いはずだとは言えませんし、主人公が魔獣に立ち向かえてそっくりさんが魔獣に対抗できなかったのは、主人公が男でそっくりさんが女だったからではありません。となると、主人公がここぞという場面で「女を守るのは、男の役目だ」と発言したところで、「何で急に性別の話をした?」という印象にしかならず、不必要に相手(そっくりさん)の神経を逆なでする結果しか生まないはずなのです。主人公がその辺の配慮をできないはずはないと思うんですね。
     もっと言うと、この台詞があるせいで、「主人公がそっくりさんを守ったのは彼女が女だからだ」という話になりそうで、その点も危惧しています。逆に言うと、彼女が女でなければ魔獣に襲われるのを傍観していたかも、ということです。実際、本文の流れとしては主人公が彼女を助けたのはティアナ姫にそっくりだからと言うところが大きい気もするのですが、主人公は「俺の願いは……、俺の―――は、この世界に生きる全ての命を守ること!」と心の中で叫んでいるくらいの人物ですから、男だとか女だとか、ティアナ姫に似てるとか似てないとかは結局のところ関係ないのだろうとも思います。そういう人物の台詞として、「君は女で、俺は男で、女を守るのは男の役目だから、君を助けたんだよ」という意味のことを言うのはすごく違和感があります。

     この場面でどういう台詞が適切なのかと聞かれたらそれはそれで迷うのですが、作品やエピソードの全容を知らない僕が思うところでは、「守ると決めた人々を守るのが騎士の役目だ」とか、「これが、俺が決めた生き方なんだ」とかの方が、主人公の人物像と合致していてしっくりくるように思います。「この世界に生きる全ての命を守る」と決意している主人公が、わざわざその決意を隠したり、守る対象を「人々」に限定した発言をしたりするのは不自然ではあるのですが、ほとんど見ず知らずの相手にいきなり「この世界に生きる全ての命を守るのが俺の役目だ」と宣言しても「何言ってんだ、こいつ」と思われるだけでしょうから、主人公がその辺りを考慮したとするなら「守ると決めた人々を守るのが……」くらいの限定的な台詞でも良いと思います。少なくとも、「女を守るのは、男の役目だ」よりは主人公らしいはずです。

     まさに釈迦に説法といった内容ではあるのですが、検討していただけますと幸いです。
     長文失礼しました。

    作者からの返信

    あじさい様

    コメントありがとうございます。
    ご説明すごく納得のいくものでした。

    仰る通り、(事情を知っているならまだしも)初対面の相手に急に言われたら疑問に思うのは最もだと思います。
    ただ、この台詞は、Episode1-9の姉との会話と掛かっているところがあります。

    ---Episode1-9からの引用---
    姉「女の子を守るのは男の役目だって言ったよね? でもね。弟を守るのはお姉ちゃんの役目なんだよ?」
    (に対して)
    主人公「お姉ちゃんはああ言ったけど、やっぱり俺の信念は変わらない。女の子を守るのは男の役目だ。だから……」
    ---

    表現を崩さず、この決意を上手く文章にできるように考えようと思います。
    いつもご指摘ありがとうございます。

    編集済