有料指定席でモヤモヤ。

最近、JRや私鉄が、こぞって通勤電車に「有料指定席」を設けている。


関西では、JR西日本の「Aシート」が、近ごろサラリーマンの間でいくらか話題になっていた。朝という超ラッシュアワーの時間帯に、少しでもいいから楽をしたいという長距離通勤ご苦労様です、と言った感じの人々が、結構利用するらしい。


一方の私。


私は一時期猛烈な京阪ユーザーだった。

サークルの活動の一環で京都に通っていた時期があり、常に京都大阪間を飛び回っている(というか走り回っている)なんてことがあった。その時、鉄道各社を乗り比べ、一番気に入ったのが京阪だった。


ご存じない方に説明するが、京都大阪間を移動するには「新快速(JR)」か、阪急もしくは京阪の「特急」を使うことになる。



料金で言えば、最良なのは阪急なのだ。

安くて、しかもちゃんと二人掛けシートになっている。通勤電車みたいな横長シートじゃないから、かなり快適だ。ところが、阪急は座席が硬い。長時間座っていると、腰や尻が痛くなってくる。安さゆえの代償と思えばなんてことはないのだが、この点で、私は阪急を少し敬遠していた。



では、JRはどうか。

JR西日本、申し訳ないが、実は一番好きじゃない。

いや、スピードがすごいのは認める。新快速めっちゃ早い。早いが、それゆえに私は時々恐怖を感じる。真夜中に急いで帰る必要があって新快速に乗るときなんか、妙に冷や汗をかいてしまう。暗闇の中を猛スピードで走られたら、恐怖だ。なんか新快速の車両が、そのまま夜空にすっ飛んでいきそうな錯覚に陥るのだ。



そこで、件の京阪。

もう最高。言う事なしである。


座席フカフカ、ちゃんと二人掛け、運転が超丁寧。加速とかめっちゃ丁寧にそーっとそーっとやってくれる。車体が全然ガクンガクンしないもん。どうやって運転したらそんな優しいリズムを奏でられるんですか?新快速さんなんか「オラオラオラオラァ」ってかっ飛ばしますよ。生きてる心地がしませんわホンマに。



で、なぜ今回のテーマが「有料指定席」なのか?


京阪の特急には「プレミアムカー」というのがある。普通運賃にプラス500円で、リクライニング付き豪華座席にグレードアップすることができる、いわゆる「有料指定席」だ。私も大好きでよく利用する。


ところが、自分が好きで乗っているのに、なぜかモヤモヤする。この席なんかに、まだまだ若造の私が威張って座っていいんだろうか・・・?威張って専属のアテンダントさんに「ブランケットお願いします」とか「島民(京阪が出すフリーマガジン)ください」とかエラソーに言っていいもんか・・・?なんて勝手にあれこれ考えて、いまいち1時間少々の移動を楽しめないのだ。


なぜだろう?私は考えた。

私の田舎は、九州だ。

九州は、長距離移動の選択肢が少ない。電車でいえば、「特急」と「普通」電車の二つしかない。普通電車は格安だが、ちんたらしてるので時間がものすごくかかる。本数も少ない。対して特急電車は、早いが高い。恐ろしく高い。田舎は特急料金がうんざりするほど高いのだ。別で「特急券料金」なんて名目でものすごいお金を取られる。


そして関西。

電車の選択肢がものすごい。普通、準急、急行、快速、特急。しかも、会社の数が違う、JRだけじゃない。近鉄、阪急、京阪、阪神、南海、大阪メトロ・・・。関西はマニアの間じゃ私鉄大国なんて呼ばれる。NHKが中川家を司会にして私鉄マニアクイズの特番をゴールデンタイムに組むぐらい、私鉄が優遇されている。


さらに、大概の特急は無料で使える。ややこしい「特急券」なんてものも買わなくていい。なんという親切っぷりだろうかと、私は関西に来た頃は驚きっぱなしだった。


高いものだと思っていた特急が、無料で使える。まして、追加料金を払えば、こんなにもいい思いが・・・? いや、そんな訳はない。こんないい座席はお前が使うべきじゃない!これはやはり、「身の丈に合ったグレードを利用しろ」という神様からのお告げなのだろうか・・・?


ああ、留まることを知らない心のモヤモヤ。


こんな豪華な座席に、大学生の分際でどっしり腰を据える矛盾。もやもやする。アテンダントさんの声掛けにもビビってしまう。


そんな心の葛藤をよそに

私は500円玉を握りしめて、京阪さんの窓口へ行く。


ああ京阪さん、大好きです。

僕も「おけいはん」です。



ーつづくー

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