画商

とても満足した女の子は、いそいそと家に帰りました。

こんなにいい絵がたった100円で買えたなんて、未だに信じられません。

家に帰った女の子は、早速、絵を飾ろうとしました。

そこへ――

「今日は大切な画商が来るんだ!これによっては、家が安定するかもしれない!

美佐、早く部屋を片付けて!」

そう。この女の子の家は絵描き屋です。

女の子は、お父さんの絵は結構いいと思うんですが、世間からは「認められない」らしいのです。

(世間って、ややこしいなぁ。)

お父さんの絵のタッチは柔らかく、まるで水彩絵の具で描いたよう。

でも、絵の具じゃありません。「パステル」という画材で描いた絵です。

トントン。

「はーい!」

画商が来ました。

女の子はドキドキしながら丁寧にお辞儀をします。

「ほう・・」

お父さんが描いた絵を見回しながら、画商はこう言いました。

「とてもいい絵だ。何故、こんなにいい絵が世間に出ないのかね?

気に入った。全て買う。合計、100万でどうかな?」

「ええっ、そんなに高く・・」

女の子もくらくらしました。100万といったら、大金です。

「・・喜んで!」

そして、画商は女の子のコレクションルームも見ていきました。

「ん?」

画商はある絵に目をとめました。

今日女の子が100円で買ってきた絵です。

「・・・ほう・・・この絵は素晴らしい。タッチこそ雑だが、まるで自然の力が溢れ出てくるようだ。

この絵を、――そうだな――10万くらいで売ってくれないかね?」

女の子は迷いました。コレクションというのは、お金では売れないのです。

(でも・・・他にもコレクションがあるし、ご機嫌とっとかないとだし、まあいいか。)

「はい、有難う御座います。」

沢山の絵を買って、画商は帰っていきました。

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