第2話 墨の匂いとギャグセンス

 桜が、かすかに咲いてきた頃。私たちは3年生に進級した。

 3年生のクラスは2年生の時とはメンツがだいぶ違く、新たに友達になる子が増えた。

 私は、3年生になったのを機にあの子が通っている習字教室に通うことにした。

 理由は、あの子がいたからということもあるし、まる子とななという友達もいたからだ。

 まる子は、一言で言えばお笑い芸人のようなギャグセンスのある子で、私たちは、よく彼女に笑わされていた。

 ななもまる子同様、ギャグの塊だった。

 そして、ついでに言えばあの子もギャグの塊すぎた。

 そうして、私はギャグの塊に囲まれながら、習字を習っていくことになった。


 あの日だって、学校終わりに笑いながら習字教室に行き、先生に時に厳しく指導されつつ、その日1番の作品を仕上げようと頑張った。

 いつもより集中したせいか、私たち4人は珍しく、ほぼ同じタイミングで作品を完成させた。

「うっはー。終わった。結構いい感じかも!」

 と私が言えば、あの子たちは、「うまいじゃん!」と言ってくれた。

 そこから私たちはお互いの作品を見あって、褒め合う。

「いやー、まる子やっぱ違うわ。めっちゃうまい!」

「ありがとぉ〜。テレルゥ〜」

「ななとネネもやっぱり上手だねぇ…」

「ありがと!でも、ちいも上手だよね」

「じゃあ、うちら4人とも上手でいいんじゃね?」

 とななが言えば「、「「「賛成!!」」」」と、毎回盛り上がるのがとても楽しい。

 先生にOKをもらい、私たちは教室を出て近くの公園に行って喋る。

 早く終わった日は必ずこの行動をとるのが暗黙のルールになっている。

 4人それぞれ、ブランコと雲梯に座り準備万端。

 最初にネネが言葉を発した。


「ねぇ、みんな好きな人いる?」

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