怖いとは、どうやって発生するか

全くの偶然だった
なんの意図も作為もなく、たまたまTLに流れてきたこの小説に興味を引かれ、読み始めた
……読み終えたのが、8月13日だった

たまさかである
運命などではない
けれど、その事実が恐ろしいと感じた


恐怖を司る対象には、どうしても格がある
格が下がれば――例えばトイレの花子さんを戯画化して異世界にでも転移させてしまえば、恐怖というのはたちまち薄れる
かといって、具体性に欠ければ、それは単なる現象として雲散霧消し、畏れを育むことはできない

それを踏まえた上で、この物語に関して、そう言った危惧は一切無用と告げておこう
怖い
はじめは漠然とした何かが
やがては認知した何者かが
ふいに自分が知る日常にとけ込んだ概念と結びついていく様が、たまらなく恐ろしい

尻すぼみの恐怖というのはよくあるし、スロースタートな作品というのも多く見る
けれど〝これ〟は、はじめから最後までずっと怖いのである
盛り上がりのピークにて物語を締めくくる手腕へ、私は万雷の喝采を送りたい
傑作である
ぜひ、あなたも恐怖を目にされるとよいと思う

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