14歳と364日

明日、またあいつが来る。

お母さんの恋人と言う男が来る。

嫌だ。あいつの目付きが嫌だ、あいつの匂いが嫌だ、あいつを見るのが嫌だ。

お母さんがいない時に触れてくるあいつの手が気持ち悪い、私の部屋に勝手に入っているのが気持ち悪い、通学路で待っていることも気持ち悪い。

お母さんは幸せそうだ、お父さんが居なくなってからあんなに嬉しそうなお母さんを見るのは初めてだ。でも、私はあいつが嫌いだ。

クラスメイトもカッコいいっていう、何も知らないからカッコいいって言う。じゃあ代わってあげるよ私の代わりにあいつに触られてよ、夜中にあいつがベッドに入ってくるけど代わってあげるよ。代わってほしい。

みんなはこいつがどんな奴か知らないんだ、お母さんはこいつがお母さんのいないところで何をしているのか知らないんだ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

同じ場所にいるのが嫌だ、家にいるのが嫌だ、そんな家に帰らないといけないのが嫌だ、お母さんと一緒にいるのを見るのも嫌だ、そのお母さんが幸せそうなのも嫌だ、そんな二人の会話に巻き込まれるのも嫌だ何もかも嫌だ。

泊まっていくなんて最悪だ。

何度も何度もお母さんには言った、知らない人を家に泊めないでってその人が私に触ってくるってお母さんがいない時に何をしてるのか全部言った。

お母さんは信じてくれなかった、知らない人じゃないでしょうお母さんの大事な人だと、だからお母さんの子供にそんなことする訳ないって緊張してるんだってあの人もまだ裕子との触れ合いに慣れてないからだって。

されているのにされてるのは私なのに私はされているのにお母さんは信じてくれない。こんな時にお父さんがいればって、いてくれたらって思う。

去年の日記を読むとお父さんの勝手さに腹が立ってくるしお父さんなんていなくてもいいって思うけど、それでもお父さんがいればこんなことにはならなかった。本当に今の自分が勝手でわがままを言っていると思うのに、それでもお父さんがいてくれればって思ってしまう。

誕生日の前の日にこんなに憂鬱な事はないと思う。

明日はずっと学校にいよう、出来るだけゆっくり家に帰ろう、誰か泊めてくれないかな。でもお母さんを一人には出来ない、お母さんを支えてあげなくちゃいけない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る