ラノベ新人賞長編初挑戦作。2008年10月1日、第14回スニーカー大賞〆切当日に応募『新・異国文化体験記』投稿以来修正一切無し。こんな酷い作品からでも一次通過を30回以上経験する所までは成長出来ます

明石竜 

前編

皆さんは海外旅行をしたことはありますか?


そう聞かれると数カ国程度なら『ある』と答える人は多いと思います。

しかし、世界中のありとあらゆる全ての地域を余すところなく旅したことがあるという人は、ほとんどいないと思います。


世界中を旅するって莫大な時間とお金がかかるし、なかなか手が出ません。

もし日本国内で手軽に世界中を旅している気分が味わえる場所があるとしたら……

その場所が実在するんです。日本にいながらにして世界中の暮らしや文化を体験できる夢のような場所が……


異文化交流を目的とした超巨大テーマパーク、その名は

『翡翠塚市ワールド・エスニック・ランド』


行った人の感想によると、とにかく今まで誰も味わったことの無いすごいインパクトのあるテーマパークだそうです。私、朝霧雲雀14歳は受験勉強の息抜きに夏休みを利用してその場所へ4泊5日の一人旅することになりました。


「まもなく発車します。ご乗車の方はお急ぎ下さい」


7月29日 午後9時、私はそのテーマパークへ向かう寝台列車に乗って出発します。

私の住んでいる街から所要時間は約10時間です。

「あれっ、窓から外の景色が見れないようになってるよ」

不思議に思った私は車掌さんに質問してみました。

「それは到着してからのお楽しみにしているからですよ」

「そうなんだぁ、それほどすごいテーマパークなんですね?」

「それはもう、今まで誰も体験したことが無いような気分になれる不思議なテーマパークですよ。駅のホームに降りた瞬間、まず驚くでしょう。さらに外へ出ると、さらなる驚きが待っています」

「とても楽しみですーっ、では車掌さん、おやすみなさい」


 7月30日 朝6時半


私は目が覚めました。おトイレと顔洗いと歯磨きを済ませ、旅の準備を整えました。

カメラに思い出をいっぱい収めたいです。


「まもなく到着いたします。車内お忘れ物なさらないようにお気をつけ願います。今までに無い体験をお楽しみ下さい」


7時、寝台列車はこのテーマパークの陸の玄関口にある『翡翠塚中央駅』に到着しました。


扉が開き、駅に降り立ちます。大冒険の始まりです。



「すごい、すごい、すごーい、見たことも無い形の列車がたくさんあるーっ。それに外国人もいっぱい。さっそく写真撮らなきゃ」


ホームにカラフルな電車がたくさん停まっていました。


耳を傾けるといろんな国々の言葉が聞こえてきます。

本当に異国の地に降り立ったみたいです。

とても日本国内とは思えません。


この駅は超巨大な駅ビルになっています。京都駅ですら比べ物にならないほど広いです。


まず私は観光案内所でテーマパーク内の案内図をもらいました。

案内所の人も外国人が多いです。


私は無理して英語で話してみました。

「エクスキューズ ミー……、えっと……」

「日本人の方ですね。こちらが日本語版の案内図となっています」

イギリス人っぽい人でしたが日本語が通じて良かったです。

「なんか他にも見たことも無いような文字で書かれているのもあるのですが、全部でどれくらいの種類があるんですか?」

「全部で数千種類あります」

ここのテーマパークでは世界中の誰でも利用できるように使用人口が少ない原語でも大切に取り扱っているそうです。記念に珍しい外国語版もいくつか貰っておきました。

「ヤップ語にドンガン語にウォロフ語……聞いたことも無い言語ばかりだな」


次に朝ごはんを食べるため、駅の地下にある食堂街に来てみました。

「いろんな国のお店あるーっ、フランス料理店や中華料理店やメキシコ料理店や……」


いろいろ迷った挙句、無難に値段が安そうなファーストフード店にしました。

「あそこにハンバーガーショップがある。あそこにしよう」


カウンターで注文します。


「Good morning!」

「Good morning. What would you like?」

「Three fish burger and fried potato and chicken and cola please」

「What size?」

「Large size, please」

「For here or to go?」

「To go」

「All right」

「That’s 2 dollars and 10 cents please」

「Here you are」

「Thank you, See you」

「See you」


前にいた大柄のアメリカ人っぽいお客さんが英語で注文していました。「

「どうしよう、私、英語苦手なのに……それにドルとかセントとか言ってるよ。お金これで大丈夫なのかな?」


「お待たせしました。日本人のかたですね。ご注文はいかがなさいますか?」

私の番になると店員さんは日本語で話してくれました。とりあえず一安心です。


「チーズバーガーとポテトとメロンソーダ、それぞれMサイズを下さい」

「チーズバーガーM、フライドポテトM、メロンソーダMですね。お持ち帰りですか? それともここで召し上がりますか?」

「ここで召し上がります」

「では59番の番号札でお待ち下さい」


 しばし席に座って待ちます。


「29番の番号札をお持ちの方、お待たせしました」

注文したものが出てきて私は驚きました。


「私、Mを注文したんですけど」

「これがMサイズよ」

「なんかとても大きいですよ」

「驚いたでしょう。本場アメリカと同じ形式で売っているのよ。値段も安いでしょう。日本の通貨で50円よ」

「このお店では日本の通貨でもアメリカの通貨でも使えるんですか?」

「ここだけではなくてこのテーマパークではどのお店でも世界中どこの通貨でも使えるわよ。物価も低くて最高でしょう」

「はい、ここは夢の国です」


注文を受け取って席に戻ります。


「どうしよう、困ったよ。大きすぎて全部食べ切れないよ」


私には量が多すぎました。でもっ、捨てるのはもったいないです。


「どうしよう、どうしよう……そうだ、誰かに手伝ってもらおう。でもどうやって話しかけよう。回りは外国人ばかりだし」


 辺りをきょろきょろ見渡しました。

「あっ、日本人の男の子がいた。良かったぁ、あの子に頼もう」

 私は男の子のもとへ駆け寄りました。


「こんにちは」

「こんにちは。あのっ、お姉さん何かごようですか?」

「じつは、Mサイズが大きすぎて食べきれないの。手伝ってくれない?」

「このテーマパークへ来たのは初めてなんだね。よくある失敗だよ」

「そうなんですよ。本当に外国に来たみたいで戸惑っています」

「僕はこの街に10年以上暮らしてるんだ」

「へぇー、あれっ? でもここってテーマパークの中だよね? ディ○ニ―ラン

ドとかU○Jとかもそうだけど普通、人は住んでないよね?」

「ここは一つの街のようになっているんだよ。このテーマパークは昔、温泉街で古き良き日本の町並みが広がる小さな村だったんだけど海外の人にこの村の魅力をどんどん伝えたいとアピールして、外国から日本文化を学びたいという人々を数多く受け入れるようになったんだ。そしていろんな国の文化が入ってきて、こんなに異国情緒あふれる賑やかな街になったんだよ、もちろん昔の町並みはそのままにね。外国人にとっては日本文化が体験できる場所、日本人にとっては異国の文化が体験できるようになっているんだよ。ここに住んでいる外国人は日本が大好きな人ばかりで日本語も話せる人がほとんどだよ。日本語が通じる外国みたいな場所かな。これだけの異文化が一つの街に集まったっていうのは世界中でこの場所くらいなもので珍しいですから、この街ごとテーマパーク化されることになったんだよ。つまり翡翠塚市の面積=ここのテーマパークなんだ」

「日本語が通じる外国なんて不思議だね。でもなんかほっとしたような、積極的に話しかけてみよう」

「逆に言えばこの駅前の雰囲気はイタリアをイメージしているんですが、イタリア人観光客がここに来た場合、住民のかたは日本語を使いますからイタリア語が通じないイタリアに来たような感覚になるんです」

「新しいタイプの海外旅行みたいだね」

「ここには他の日本の街では見られない野生動植物もたくさん見れますよ。地球環境保護もこの街のスローガンになってるんだ」

「本当に素晴らしい街だね」

「日本にいながらにして世界中を旅した気分にもなれるし、外国の文化がいっぱい学べるし、物価も低くてこんな夢のような街、最高だよ」

「私もいつか住んでみたいな。ところで、キミのお名前は?」

「妙法寺翼だよ」

「キミ小学生?」

「ボクはよく小学生に間違えられるけど中学3年生、14歳だよ。」

「私は朝霧雲雀だよ。私と同い年なんだ。年下かと思ったよ。私、翼君みたいな小さくてかわいい男の子大好きだよ。お顔も女の子みたいな顔立ちだし、お肌もすべすべで触り心地が良いなぁ」

「はっ恥ずかしいです」

「照れちゃってかわいいなぁ。ポテト食べさせてあげる。ハイ、あーんして」

「……」

「やだぁ、ますます顔が赤くなってるよ」

「……とっとにかくこのテーマパーク、というより街は魅力的なスポットが山のようにありますから楽しんでくださいね」

「ありがとう」


かわいい男の子とお別れして、駅の外へ向かいます。

以下、ここのテーマパークのことは街と呼びます。


「わぁ~、なんかとても日本国内とは思えないよ」

駅の外観もとても立派です。他の日本の街では見られないようなヨーロッパのお城のようです。

駅前の風景を見ると本当にイタリアへ来たような錯覚に陥ります。


巨大な有翼のライオンの銅像がありました。

「ライオンさん、おはようーっ、あっ、あっちはダビデ像さんだ。あの格好は恥ずかしくないのかなぁ? お洋服着せてあげたいなぁー」


私、興味を持ったものに何でも構わず話しかけてしまう癖があるんです。


噴水広場で見慣れないお菓子を食べているかわいい外国人の女の子を見かけました。どどこの国の子なんだろう? 見た目ではイタリア人っぽいなぁ? 

日本語が話せる人が多いって聞いたけど大丈夫かな? 観光客だったら話せないかもしれないし、イタリア語分からないから一応英語で話しかけてみよう。

そう思った私は、ほとんど話せないのですが勇気を出して英語でその子に話しかけてみました。


「Hello!」

「コンニチハ、お姉ちゃん日本の人だよね? アタシ日本語話せるのーっ」

「日本語話せるんだぁー、すごーい。あなたのお名前と年齢と出身地はどこかな?」

「アタシの名前はクラーラ、イタリアから来た11歳なのーっ、この街に住んで6年になるのーっ」

「クラーラちゃんかぁ~、私は朝霧雲雀14歳だよ」

「ひばりお姉ちゃん、この噴水にコインを入れると願い事が何でも叶うんだよ」

「へぇ~、トレヴィの泉みたいだね」


もちろんやってみました。大成功です。

「クラーラちゃん、このお菓子は何かな?」

「これは、『カンノーリ』って言うイタリアのお菓子なのーっ」

クラーラちゃんは、私にそのお菓子を分けてくれました。


「んーっ、イタリアのお菓子も美味しいね」

「そうでしょう? アタシは日本のお菓子、和菓子も大好きなのーっ、形もきれいで素敵なのーっ」

「外国の人に和菓子を気に入ってもらえて嬉しいな。クラーラちゃん、また会おうね」

「Ci vediamo, ひばりお姉ちゃん、この街を楽しんでね」


11歳とは思えないほど幼くてかわいい女の子でした。


路面電車の乗場の近くで面白いものを見つけました


「ああっ、あれ真実の口のおじさんだぁ。おはよう」

ついつい彫刻に話しかけてしまいました。

「おじさん、私の手を噛まないでね」


よかったぁ、噛まれませんでした。私に偽りの心は無いみたいです。

ここの街は至る所に彫刻や銅像などが建っています。


路面電車に乗るため、切符を購入します。

「あれっ、サイフがないよ……」

私はサイフをどこかに落としてしまったようです。トラブル発生です。

「もしかして、スリ?」

しばらく探し回っていると私の目の前に身長2メートは軽く超えている大きな男の人が私に日本語で話しかけてきました。恐怖心が先回りし、私は思わず逃げ出してしまいました。


「きゃぁ、誰か助けてくださいーっ、大きな男の人が追いかけてくるんです」

「お嬢さん、財布を落としたよーっ」


私は我に帰りました。


「ハァ、ハァ、サッサイフ拾ってくれたんですか? あっ、ありがとうございます。ごめんさい、私、怖くてつい逃げてしまって」

「ボク、とても大きいからね。気持ちは分かるよ。ハッハッハ」

「あのぅ、お兄さんはどこの国のかたですか?」

「オランダだよ」

「風車とチューリップの国ですね」

「その通り、チーズも有名だよ。オランダ風の街もあるから楽しんで行ってねー」


とても親切な人でよかったです。失礼ながらお金を盗られていないかサイフの中身を確かめてしまいました。


地図を見ると道が放射状に広がって迷路みたいな構造になっています。油断すると迷子になってしまいそうです。そのため、街の至る所にガイドさんがいます。様々な施設の案内もやっています」



 電車に乗り込み、出発進行です。


「次の停車駅は、聖パウロ大聖堂です」

「Next stop is……」

 

日本語に続き観光客用に英語をはじめとする様々な国の言葉でアナウンスされます。日本ではあまり見られない大聖堂がありました。

窓から景色を眺めるとその他にも神殿、修道院、宮殿などが建ち並んでいます。


 この街の路面電車は1日乗車券50円で乗り放題です。


「まもなくゴールデンタワー、ゴールデンタワーです」

 

この街一番の高さを誇り、名前の通り金色に輝いています。

タワーの高さは300メートル、展望台は250メートルにあります。ここから街全体を一望できます。

北に山、南に海があり、地形も最高です。


「いい眺めーっ、あっ、なんかすごく古びたヨーロッパ風のお城がある。なんか怖い。お化けが出てきそう。遠方の砂漠みたいな場所にはピラミッドも見えるよ。海の方は島もたくさんあるし……」


 全方角から写真に収めました。タワーから降ります。


「日本のお客様、お帰りはこちらのご利用はいかかですか?」


このタワーには絶叫マシーンでお馴染みのフリーフォールもついています。展望台から一気に下まで降りることが出来ます。私は怖いので乗りませんでしたが……


再び路面電車に乗り次の目的地まで移動します。


「次はシスティーナ礼拝堂、次はシスティーナ礼拝堂」


 本物はヴァチカン市国にあるのでずが、見事に再現されています。

「すごーい、天井にいっぱい絵が描いてある」


 


「次は斜塔前、斜塔前です」

ここでは有名なピサの斜塔が再現されています。


「本物そっくり。斜めに傾いてる。さっそく写真に撮ろう……私も写りたいから誰かに撮ってもらおう」


 周りは外国人観光客ばかりです。

私は片言の英語しか話せないので困りました。

 

「あそこのアメリカ人っぽい人に頼もう」


勇気を出して英語を使います。

「エクスキューズミー、あれっ写真を撮って下さいってどう言うんだろ?……フォト、えーと、プリーズ……」


分からなかったので、カメラを差し出して身振り手振りで表現しました。

「OK,OK, HAHAHA」

「サンキュー」

何とか通じたようです。



ここからは路線バスに乗ります。


「次は地中海庭園、地中海庭園です」


大きなお庭の中にたくさんの木々や花が植えられていました。

庭園の中にある喫茶店でランチタイムです。

「涼しくて気持ちいい」

蒸し暑い屋外から入ると一安心です。

「Hola,こんにちは、日本のお客様。ご注文は何になさいますか?」

「メニューが多すぎて迷います。どれにしようかなぁ」

「それでは、おすすめのお料理を作ってきますね」


どんなお料理が出てくるのか楽しみです。


「お待たせ、『ガスパチョ』とデザートは『フラッペ』と『アロス・コン・レチェ』よ。暑い今の季節にぴったりよ」

「良い香りーっ、いただきます……んーっ、とても美味しいです」

「喜んでもらえて嬉しいわ。これはラベンダーで作った髪飾りとシャンプー、あなたにプレゼントよ」

「わ~い、ありがとうございます。髪飾り、かわいいな」


 私は早速飾ってみました。

「まぁ、よくお似合いですよ、お姫様みたい」

「お姫様だなんて、恥ずかしいですよ。おばさんも美しいですよ」

「まぁ、嬉しいわ。お礼にフラメンコ踊ってあげる」


さすがはスペインです。踊りが始まりました。

他のお客さんも『オレ!』などと掛け声を出しながら楽しんでいます。


「Hasta luego! また来てね」

「はい」


庭園を出て、スペイン通りを歩いてみるとお土産屋さんとかは今の時間帯は閉まっているお店が多いです。お昼寝(シエスタ)の習慣が見られます。日本の夏も暑いですからね。

この間に東中北欧の街並みを拝見します。


ブルガリアのお土産屋さんに入ってみました。


「ドーバル・デン、こんにちは日本のお嬢さん」

「こんにちは、バラの香りがいっぱい。ブルガリアってヨーグルトのイメージしかなかったんですけど、バラも有名なんですね」

「そうだよ、土産屋に来るとその国の文化がよく分かるだろう?」

「はい、わぁ~、このローズオイル人形かわいい。それとこの『カバル』っていう楽器を下さい」

「ブラゴダリャ、ありがとうお嬢さん。ブルガリアは長寿の国でもあるんだよ。元気なお年寄りが多いんだよ」


「おーっ、若いお嬢さんじゃないか」

とても若々しいお爺さんが出てきました。


「こちらはボクの曽祖父で105歳だよ。今でも現役でバラの栽培を続けてるよ」

「とても元気そうなお爺さんですね」

「わしゃ、まだあと100年は生きるつもりじゃ」

「これからも元気に長生きしてくださいね」



続いてウクライナのお土産屋さんです。


「ドブリー デニ、こんにちは、日本人のお嬢さん」

「こんにちは、わぁ~、すごい、卵に絵が描かれてる。細かいところまで装飾がとてもきれいです。これ、全部お爺さんの手作りですか?」

「そうじゃよ。これは、イースターエッグと呼ばれて数千年の歴史があるウクライナなどの伝統工芸なんじゃ」

「とっても器用ですね」

「フォッフォッ、かわいいお嬢さんに褒められて嬉しいわい、これもプレゼントじゃ。これは小麦などの栽培に適したチェルノーゼムの黒土じゃよ」

「ありがとうございます。お爺さん」

「わし、日本の工芸品も大好きじゃよ」

 お爺さんは奥の部屋からいろんななどを持ってきました。


「招き猫さんの置物だ。こっちは有田焼のお茶碗、信楽焼きのタヌキさんの置物……」

「これらも全てわしの手作りなんじゃ」

「素晴らしいです。お爺さんは日本料理も好きですか?」

「もちろんじゃ、特にみたらし団子とか大福とか甘い和菓子が大好きじゃよ。他にもお正月に孫が遊びに来た時はお年玉をあげたり、福笑いや凧揚げ、百人一首などをしたり……」

「とても日本風な過ごし方ですね」

「百人一首は全て暗記してるんじゃ」

「日本人でも難しいのに、とてもすごいです」

「そうそう、わしは日本の歌も歌えるんじゃよ」

「すごいです。何か歌ってください」

「それでは富士の歌を歌ってあげよう。頭を雲の上に出し、四方の山を見下ろして、雷様を下に聞く、富士は日本一の山……」

「すごいです。2番目まで完璧です」

「お嬢さんのお名前は何かの?」

「朝霧雲雀です」

「その名前を漢字で書いてあげよう」

「漢字も書けるんですか?」


 お爺さんは見事に正解しました。


「お爺さん、日本文化にも日本人以上に精通してて立派です」

「これからもどんどん日本文化を学んでいくよ」


続いてハンガリー街にやって来ました。

 この国もヨーロッパなのですがアジア系マジャル人が多い所です。


それにしても昼間に外を歩くと暑いです。そんな時にプールを見つけました。


「わぁ~、屋外プールだぁーっ。外歩いて汗いっぱいかいたから入ろう」


「ヨー ナポット、こんにちは、日本人のお客様、ハンガリーの温泉へようこそ」

「ここ温泉だったんですか? 外国にも温泉があって驚きました」

「ハンガリーは温泉大国よ。ただ、日本の温泉とは違ってここでは水着などを着用して入ります。わたしも日本の温泉も利用したことがあるのですけど人前で素っ裸になって入るのはちょっと恥ずかしかったよ」


水着に着替えて泳いで楽しみます。


泳いで遊んでいると眼鏡をかけ、とても賢そうに見える女の子を見かけました。水に浸かりながらルービックキューブを回していました。興味を持ったので話しかけてみます。


「日本語で大丈夫かな? こんにちは」

「こんにちはめです」

日本語ですが語尾が特徴的な女の子でした。

「私、朝霧雲雀です」

「日本人のお方めですね。ワタクシはイタリアのシチリア島、シラクーサから来たリアーナめです。この街には3年ほど暮らしているめですよ」

「あなたもこの街の住民なんですね。あのぅ、失礼かもしれませんが、どうして水につかりながらルービックキューブをしているんですか?」

「その方が脳が活性化されるからでめですよ、ひばり様。もうすぐ開催される大会に向けて日々精進しているでめです」

「リアーナさん、技を見せていただけませんか?」

「もちろん、喜んで」


 リアーナさんは僅か数秒で6面全てを完成させました。

「すごいです。リアーナさん。私もやったことがあるけど全然出来ませんでした。優勝は間違いなしですね」

「ワタクシも去年そう思って出場したらやはり世界は広かったでめです。私の技をはるかに上回る強敵がいっぱい存在したでめです」

「えーっ、もっとすごい人がいたの?」

「彼らの出身地のほとんどがハンガリーでめでした。その国は科学者の国とも言われ、優秀な頭脳の持ち主がたくさんいるめでした。ルービックキューブの発明者の出身地でもあるでめです。いつも5位くらいで終わっているので、今年こそは絶対に優勝を目指すでめです。いつもハンガリーの人が優勝してしまって悔しいでめですよ」

「頑張ってくださいね」


 隣接してお土産屋さんがあります。


「ヨー ナポット、こんにちは」

「こんにちは、おばさん、わぁ~、きれいな刺繍がいっぱいある。民族衣装も素敵」

「あなたも着てみてね」

 試着させてもらいました。


「まぁーっ、とても美しいわ」

「おばさんの衣装もよく似合ってますよ」

「嬉しいわ。お礼にプスタの土をプレゼントするわ。ヒマワリ栽培に最適よ」 

「ありがとう」

「食べ物も美味しいものがいっぱいあるわよ」

「パプリカとフォアグラだ。安い」

「ハンガリーの名産品だからね」


他にも寄りたいお店が一杯ありました。


中欧の街にはフランスのモネの庭をモチーフにした庭園やストーンヘンジのような場所もありました。

 

公園で宝探しをしているような光景を目撃しました。


「あのう、これは何をしているのですか?」

ガイドの方に尋ねてみました。

「これはトリュフ探しよ。あなたもやってみる?」

「もちろんやってみます」


トリュフ犬をお借りして、宝(トリュフ)探しです。

「ワンちゃん、いっしょに頑張ろうね」

「ワ、ワン」


 トリュフ犬も楽しそうに捜し歩いています。


「なんか、『はなさかじじい』を思い出したよ。裏の畑でポチが鳴く、正直爺さん掘ったれば、大判、小判がザクザクザクザク……あっ、この場合ポチがこのワンちゃんで、お爺さんが私で、大判小判がトリュフだね」

「ワン、ワン、ワン、ワン」


突然、ワンちゃんが吠えました。ついにトリュフ発見でしょうか? 早速地面を掘ってみます。

「ここだね、ワンちゃん?」

「ワン」


 数十センチ掘ると見事に見つかりました。ワンちゃんのお手柄です。

「ワンちゃん、ありがとう」

「ワワン」

 「わぁ~、大鐘楼だぁーっ」


ここはイギリスのウェストミンスター教会にある時計塔『ビックベン』をモデルにして作られています。


午後3時になりました。

大鐘楼の鐘が鳴り響きます。






パリのエトワール凱旋門をモデルにした門を抜け、北に進んでいくとネス湖をモデルにした大きな湖に出ます。

 冬は白鳥たちの宝庫になるそうです。


 湖畔で楽器の演奏もしたり歌を歌ったりしている人を見ると心が和みます。


写真を撮ったり、小鳥さんたちに話しかけたりしていると、突然、湖の中からあの恐竜のような物体が現れました。


「ああーっ、ネッシーさんがいるーっ」


私は追いかけていきました。

「きゃあ、こっちへ来て、ネッシーさん」


私の呼びかけに答えるようにお顔を近づけてきました。

すると突然口の中から人が出てきました。


「ハッハッハ、驚いたかい? これは潜水艦だよ。でも本物みたいだろう?」

「はい、よく出来ています。びっくりしました」

「これは、交通手段にもなってるんだ。北欧街へ繋がってるよ」

「もちろん乗ります。楽しい乗り物です。お口の中から入るんですね」


潜水艦に乗って移動します。

船内はとても広く豪華客船みたいです。

 潜水艦の窓から水中を観察します。


「湖の中にいろんな生き物が泳いでいますね」

「多いのはブラックバスやブルーギルとかだな。だがそれだけではなく、この湖の中にはこれはレプリカだけど本物の未確認動物もいるらしいんだ。観光客や近くの住民の人からいろんな情報が寄せられているよ。周辺の森にもいろいろ棲息しているらしい」

「ロマンがありますね」

「あっちの部屋にある資料館には皆から寄せられた写真がいっぱい展示されてるよ。見に行ってごらん」


興味津々の私は早速見に行って見ました。


「Hello,こんにちは、UMA資料館へようこそ」


解説者の人に案内してもらいます。

「あっ、首長竜の写真だ。長い首しか写ってないけど」

「この恐竜はプレシオサウルスです。三畳紀後期からジュラ紀前期にかけて棲息していた首長竜の一種です。他にも絶命したはずの恐竜の目撃情報が写真と共に寄せられています。その他この湖にはリーン・モンスター、モーゴウル、森の中にはモラーグ、バードマンと呼ばれるUMAの目撃情報が多数ございます。この周辺を観察しているとあなたもUMAを目撃できるかもしませんよ」

「確かにこの湖の周り、不思議な雰囲気が漂っていましたからね」


潜水艦が上昇しました。私はカメラを手に取りシャッターチャンスを窺います。


 しばらく辺りを見回してみましたが、全く見つかりません。

「雨の日や霧が出た時に見れる可能性が高いですよ」

「あーん、残念です」


 またいつか来てみたいです。


「まもなく青の洞窟、青の洞窟です」

潜水艦はゆっくりと洞窟内に入っていきました。有名なイタリアのカプリ島にあるものを再現しています。

午前中に見に行くともっと美しく見えるそうです。


日本では出来ないフィヨルドも精密に再現されていました。


1時間ほどで到着しました。ここの湖畔には人魚姫の像もありました。



街にはカラフルなおウチがたくさん建ち並んでいます。


デンマーク街のアンデルセン博物館に入ってみました。


「アンデルセンの童話、ちっちゃい頃によく読んでたよ。懐かしい」


アニメ映画も上映していました。外国語だったので言葉は分かりませんでしたが。


売店には言語版の絵本も売っていたので記念に買いました。


次にノルウェー出身の画家、ムンクの美術館に入ってみました。


「これ、有名な『叫び』の絵だ」

私は絵の真似をしてみました。

「睨めっこしましょ、アップップ~……あんっ、やっぱ勝てないよ」


 後ろを振り返ると大勢の人が私を見て微笑んでいました。

「はっ恥ずかしい……」


 私は顔を真っ赤にしながらすぐにその場を立ち去りました。


「この絵は『マドンナ』かぁ。ムンクさんの絵って『叫び』しか知らなかったよ。『幻影』とか怖い絵もいっぱい」


美術館を出た後は市場にやって来ました。ここには新鮮な魚介類などがたくさん売られています。


「お嬢さん、面白い缶詰があるよ」

「あっ、この缶詰、世界一臭い缶詰と噂の……」

「その通り、シュールストレミングだよ。ニシンを塩漬けにして、缶の中で発酵させたものだよ。開けてみようか?」

「いっ、いえいえ結構です」

「ハッハッハ、冗談だよ。ここで開けたら大変なことになるからな。サーミの民族衣装もあるよ。今着ると暑いけどな」

「これ欲しいですーっ」

「まいどう、お嬢さん、また遊びに来てくれよー」


次に北欧野生動物パークに入ってみました。



「こんにちは、日本のお嬢ちゃん、館内を案内するね」


薄暗い森の中へ入っていきました。


「この森の中にはたくさんの動物たちが棲息しています」

「この雰囲気、森の妖精さんたちも現れそうだね。それに涼しい」


「あそこの木をご覧下さい」

「フクロウさんだぁーっ、こんにちは、ホー、ホー……」


ついつい鳴き声を真似してしまいました。

「このフクロウは『オナガフクロウ』です。他にもたくさんの種類がいますよ」

「名前の通り尻尾が長いですね」

「フクロウは『森の賢者』と呼ばれていて、『知恵の神』とか、『英知の象徴』とも呼ばれています。漢字では『梟』以外にも苦労をしない『不苦労』とか服が来る『福来郎』と書かれることもあって縁起がいい鳥とされています」

「そうなんですか、フクロウさんに会えて幸せです。私にも福が巡って来ますね」

「ところが、死を運んでくる不吉な動物だと考えられている地域もあります」

「お顔は人間みたいでユーモアがあるのに、不吉とされるのってなんだかフクロウさん可哀想です」

「グリム童話では『かわいそうなフクロウ』というお話があります。このお話はフクロウを初めて目にした町の人々が悪魔だと思い込み、焼き払われるというものです」


 ガイドさんはその物語の内容を詳しく説明してくれました。私も悲しくて涙が出そうになりました。


「ここにいるのは一見するとフクロウのようですが、ミミズクよ」

「耳が生えてるからミミズクさんなんだね」

「もちろん例外もいるけれど、多くはそれで見分けられるよ。この子はコノハズクという種類で日本のこの街以外でも見られます」


どんどん奥へ進んでいきます。


「ここの木陰をご覧下さい」

「あーっ、フェレットちゃんだぁーっ、かわいいーっ、こんにちはーっ」

仕草がとてもかわいいです。

「この子たちは日本の夏の暑さにはとても弱いですから今の時期は昼間は木陰にいることが多いですよ」

「こっちのはオコジョさんだ。こっちもかわいいな」

「ただ、見た目にはよらず気性の荒くてノウサギや雷鳥を食べることこともあります。空にもいろんな動物達がいますよ」


森を抜けると屋外プールが出てきました。

「シロクマちゃんだ、なんか暑そうだねーっ」

「夏になるとあんな感じだよ。氷をプレゼントすると大喜び」


 次はアザラシさんの所です。


「きゃぁーん、かわいいですぅー。こんにちは、アザラシさん、睨めっこしましょう、アップップ」

 アザラシさんと勝負です。

「……」

「キュィ」

「……」

「キューン」

「アハハハ……ダメでした。私の負けです」

「アザラシさんと睨めっこする人は多いですよ。ほとんどがアザラシさんの仕草に微笑んでしまって負けます」

次はアシカさんです。

「ここではアシカのショーも見れるよ」

「楽しみです」


 もちろん最前列で見ました。


 次はオットセイです。

「こんにちは、オットセイさん、オゥオゥ」

「オゥォ」

 私が鳴き声を真似するとオットセイさんも答えてくれました。

トドとセイウチはとても迫力がありました。


もう一つの交通手段、地下鉄で再びスペイン街に戻ります。夕方になるとお店も再開します。

スペイン街の美術館に入ります。


「ゴヤの『裸のマハ』さん、見てる私の方が恥ずかしいよ。着衣の方が好きだな。ベラスケスさんの『鏡の前のヴィーナス』も結構恥ずかしい絵だな」


ピカソの作品の部屋に入りました。

「ピカノの絵画っていつ見ても不思議。この『アヴィニョンの娘たち』の絵も体のバランスが独特だけど結構恥ずかしいな」

ゆっくり見ると一日あっても足りないのでかなり急ぎ足です。

 ここでのお土産は絵画のパズルやポスターなどを買いました。


スペイン街にはおなじみの闘牛場もあります。

通りにジャンポ野菜果物博物館という変わった建物があったので、入ってみました。


館内に入るといきなり巨大なカブが目の前に現れました。


「うわー、すごい」

「いらっしゃいませ、お嬢さま、これはロシアの民話をモチーフにしているんだよ」

「『おおきなかぶ』ですね。絵本で読んだことがあります。わーっ、こっちは巨大なサツマイモだーっ」

「こちらは日本の絵本がモデルになっています」

「何百人分も食べれそうですね」

「ここまで大きくなると食べても美味しくないですよ。これは毎年10月にジャンボ野菜果物コンテストが開催されて、大きさや重さを競うコンテスト用に作っているんだよ。こいつが今年優勝したジャンボ・カボチャだよ」

「私の背丈よりも大きいです。中に入れそう」

「コンテストの後は中身をくりぬいて馬車や船として利用されるんだよ」

「そういえば、何台か見かけました。メルヘンチックで素敵です」

「この街のタクシーみたいなものだよ。お嬢さまも乗せてあげますよ」

「きゃぁ、嬉しいよーっ」


乗り場にはスイカやカボチャなどで作られた馬車がたくさん停まっています。

「どれにしようかなぁ、やっぱりシンデレラに出てくるカボチャかな」

「それでは、出発いたします」

「乗り心地最高です」

「お嬢さま、ガラスの靴もサービスしますよ」

「私、本当にシンデレラさんになった気分だよ」


カボチャの馬車に乗せてもらい、今夜のホテルに到着です。


「うわぁ~、すごい豪華、ベルサイユ宮殿みたい」

あまりの立派な建物に驚愕しました。

「308号室ですね。階数の数え方に気をつけて下さいね。日本でいう1階はここではグランド・フロア、その上の階が1階となります」

階数の数え方がイギリス式になっていました。

お部屋の中に洋室はもちろんのこと外の概観からは想像できなかったのですが和室もあって、ふすまや障子がありました。和洋折衷です。大変豪華なお部屋なのですが一泊がわずか千円と大変お得でした」


 レストランで晩ごはんを食べます

「ここのレストランでは、様々な宗教の方々にもお楽しみいただけるようににバイキング形式となっております。日本通貨500円で食べ放題となっております」

「えーっ、あの高そうなフランス料理とかいくらでも食べてそのお値段なんですか? 夢みたいです」


私は、フランス料理の『ヴィシソワーズ』とギリシャ料理の『ムサカ』とスペイン料理の『パエリヤ』デザートはポルトガルの『フィオス・デ・オヴォシュ』、日本でいうと鶏卵ソーメンみたいなものです。お飲み物は『ミルクティー』です。太りそうです。


 お食事をしていると前方にある舞台の幕が上がり演奏会が始まりました。 

 シューベルト、ヴェートーベン、バッハ、スメタナなどの有名音楽家の曲を演奏してくれました。


続いて入浴です。このホテルにはお部屋の中だけでなく日本の旅館のように大浴場があります。和風の露天風呂です。外国人のお客様もたくさんいますが、皆さん湯船につかっていました。


大浴場に隣接してお土産屋さんがあります。

「わぁ~、かわいい。ケットシーのぬいぐみだ。これ下さい」

「日本の通貨で300円です」


大きなネコさんのぬいぐるみです。持ち運びが少し大変です。


お部屋に戻ってテレビを見ます。この街では映るチャンネル数がとても多いです。日本のテレビ番組に加え、世界各地のテレビ番組を視聴することが出来ます。特殊な衛星通信を使って海外の電波を取り入れているそうです。


「あっ、これ日本のアニメだ。吹き替えされて面白い。言葉が全然分からないけど、世界中のテレビ番組がリアルタイムで見れるなんて世界中でこのテーマパークだけだよ。本当に夢の国だよ」

 眠くなってきました。

1人だとちょっと寂しいのでぬいぐるみを抱いて眠ります。

いつも畳にお布団を敷いていたので、ベッドで寝るのは今回が初めてです。

旅の1日目が終了です。


7月31日


私の朝食はイギリス風にトーストとベーコン、スクランブルエッグ、それと紅茶です。もちろん和食もあります。外国人のお客様はそちらを食べているかたが多いようです。


「お客様、今朝はオランダ街でチーズ市が開催されているのでよろしければぜひご覧になって下さいね」

「楽しそうです。行ってみます」

チェックアウトを済まし、歩いてオランダ街のチーズ市まで移動します。昨日お土産をたくさん買ったので荷物が重いです。


しばらく歩くと荷物預かり所がありました。便利なことに今夜宿泊するホテルや自宅まで届けてくれます。ここのテーマパーク内では物価がとても安いのでついつい買いすぎてしまう人が多いようです。


チーズ市に到着しました。

見慣れない美味しそうなチーズがたくさん売られています。

私は、まず世界三大ブルーチーズを集めます。


まずはフランスからです。

「ボン・ジュール、おはよう、お嬢さん」

「ボンジュール、美味しいなチーズばっかり、ロックフォールとそれからカマンベールチーズ、この振りーチーズも欲しいなぁ」

「メルシー、ありがとう」


予定外の物まで買ってしまいました。次は気をつけないと。


次はイタリアです。

「チャオ、おはよう、美味しいチーズがいっぱいあるよ~」

「チャオ、おじさん、ゴルゴンゾーラを下さい」

「いいものを選んだね。お嬢さん。モッツァレッラも美味しいよ」

「それも欲しいです」


また予定外の物を買ってしまいました。


次はイギリスです。

「グッモーニン、おはようございます。お嬢さま」

「スティルトンを下さい」

「サンキュー」

「それからチェダーチーズも下さい」

「サンキュー、ベリーマッチ、スィーユー」

「スィーユー」


これで世界三大ブルーチーズをコンプリートしました。

それ以外にもたくさん買いましたけどね。


他の国々のチーズも見てみます。

スイス

「グーデン モルゲン、スイスのチーズ屋さんへようこそ」

「これ、絵本で見たことがある。このエメンタールチーズ下さい」

「ダンケ・シェーン、ありがとう」


 穴がたくさん開いたチーズです。

ギリシャ

「カリメーラ、嬢ちゃん」

「フェタチーズ下さい」

「エフハリスト、ありがとう」


最後に本場オランダのチーズ売り場に来てみると、昨日出会ったとても大きな男の人がいました。


「ああっ、私に財布を届けてくれた大きな人だ」

「やぁ、フーテ モルヘン、日本語では、おはよう、だねーっ」

「おはようございます。あっ、昨日私に財布を届けてくれた大きな人だ。チーズ屋さんだったんですね」

「そうだよ、ちなみにボクの名前はディックだよ」

「私の名前は朝霧雲雀です」

「ひばりちゃんかぁ、いい名前だね」

「ディックさん、身長は何センチですか?」

「2メートル25センチだよ。この街一番の巨人さ。ここまで大きくなれたのはチーズのおかげだよ、ハッハッハッハ。これがボクの故郷を代表するゴーダチーズとエダムチーズ、とっても美味しいよ。試食してみてね」

「わぁーい、いだだきます。んーっ、美味しいです」

「ダンク ウ ヴェル、ありがとう」

「ディックさんは日本語も話せるのでここの住民なんですね?」

「その通りだよ、この街に住んで7年くらいかな。ボク日本が大好きなんだ。でも夏がとても蒸し暑いのが嫌だな。まるで東南アジアだよ」

「日本の夏は赤道直下と変わらないですからね」

「赤道直下といえば、ここから水上バスに乗ってどんどん南へ下っていくと、アマゾン川みたいになってくるよ。そこで体験クルージングが出来るんだ。とても楽しいよ。避暑地もあるよ。ルーマニア街にあるお城……いや、あそこはシャレにならない。絶対やめた方がいいな。中央駅の南側に世界気象科学体験館っていうのがあるんだ。そこで南極とか世界の自然現象を疑似体験することが出来るよーっ」

「今夜泊まるホテルも近いですし、そこへ行ってみますね」


「日本の暑い夏を乗り切るにはこいつで扇ぐのが一番さ」

「うちわだ。日本の夏の風物詩ですね」

「うん、ボクの家は畳敷きにもなってるよ。日本文化大好きさ」

「それではまたね、ディックさん」

「また会おうね、ひばりちゃん。ここから少し北側にあるオランダの庭も見て行ってね」


ディックさんに言われたとおり、オランダの庭を見ることにしました。

ここは一面のお花畑と風車が見られます。


お庭の横を流れる川から水上バスに乗り、南に向かっていきます。


「次は、リアルト橋、リアルト橋です」


水の都、ヴェネチアのような街並みが見えてきました。

船から降りて、もっとゆっくり見たいのですが、時間の関係上残念ながら今回は高速移動する水上バスから眺めるだけにします。



どんどん南に下っていくと突如、たくさんの木々に覆われた場所が現れました。

「まもなくアマゾンの森、アマゾンの森です」


ここから7つの支流に分かれています。

 アマゾン川体験クルージングをする人は船を乗り換えます。


受付の人にとても蒸し暑いのですが安全のため、軍手、長袖、長ズボンを着用するようにすすめられました。


探検用の筏で出来たボートに乗り換えるとポパイのような風貌の大柄の男の人が乗っていました。

「やぁ、ボクは案内人のアントニオだ。今から楽しい大冒険の始まりだぜ」

流暢な日本語を使う愉快なおじさんでした。

「それでは出発だ。レッツゴー」


本物のアマゾン川を思わせる壮大な景色がどんどん広がっていました。


「川の中をのぞいてごらん、この中には、デンキウナギやピラニアなどが潜んでいるんだぜ。うっかり落っこちたら餌食にされちゃうよ。うおおおっととと……」


 身を乗り出していたアントニオさん本当に落ちてしまいました。


沈んでから数分経ちました。なかなか浮いてきません。お客さんたちが心配そうにしています。


次の瞬間、アントニオさんが浮いてきました。

なんと素手で鷲掴みにしてピラニアさんをたくさん捕まえてしまったのです。


「ブラボー、ブラボー」 

お客さんから大きな拍手が送られます。

パフォーマンスの一つだそうです。

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